第5話 圧倒的な差

 朝起きるといつもの天井で、

 深夜の2時まであの世に逝ってしまった祖父と一緒に修行をしていたとは嘘のようだった。

 朝起きると母親が造ったサンドイッチを食べる。

 母親と父親は何気なくこちらを見ているが。

 衣服は執事服から私服に着替える。なんとか大きさは合わないが着れない事はない。

 次の瞬間、


「だ、だれええええ」


 僕の事を指さして誰か分からないらしい。


「僕だよ山明だよ」

「いつダイエットしたの?」


「昨日だけど」

「嘘でしょおお、そうだ山明には眉毛に傷が髪の毛をずらして」


「うん」


「嘘でしょおお、傷があるわああああ、お父さんこっちきてええええ」


「なんだい、どちら様だい?」


「あんたの息子だ」


「嘘おおおおおおお」


 その場が凍り付いている。

 僕は途方にくれつつも。


「僕さ、人生変えようと思うんだ」


 冷え切った家庭、

 名家の為、家系の為と色々な事を我慢して、

 母親と父親の中も悪くなっていっていた。


 だけど僕が変わる事で、両親が変わってくれるなら。


「山明、がんばったなぁああ」

「偉いぞ山明」


 母親と父親が褒めてくれている。


「それにしても顔そのものが爺ちゃんにそっくりだなぁ」

「そうよ山明は爺ちゃん似だもんんぇ」


「僕、高校行ってくるよ」

「みんなを驚かせていらっしゃい」

「それにしても今のダイエットはすごいなぁ」

「あなたはやせてるでしょ」

「それもそうか」


 あははは、うふふふと父親と母親が爆笑していくなか、僕は高校に向かった。


 いつものバス通勤や地下鉄通勤、

 高校の制服は今の僕には着れなかった。


 ので母親が祖父の制服を貸してくれた。

 祖父の臭いがして不思議だった。

 祖父も僕と同じ高校に通っていたようだ。


 制服の種類が変わっていなくてほっとしつつも、


 母親が制服を購入してくれるそうで、


 祖父と同じと言えば分かるようで、

 

 僕は周りの視線など気にせず、自信に包まれた中登校したのだ。


―――高校の教室―――


 教室の中に入ると、

 僕は自信に包まれた声で


「おはようございます」


 と声を張り上げた。

 周りの人々は条件反射で挨拶してくれる。

 だけどよーく周りの生徒達が僕を見ると、誰なのか理解出来ないようだ。


 僕は机に座る。


 するとそれぞれが噂しだす。


 いつもの5人組がやってきて、


「そこドチビの楽島の席なんて、間違ってません?」

「僕が楽島ですが」


 その場が凍り付いた。


「嘘だろ、お前、痩せ過ぎだ身長伸びすぎ、ありえないんですけどーみんなこいつ楽島だってさああ」


「嘘だああ、どうせ別人の人に楽島が頼んだんでしょ、こんなイケメンな訳ねーじゃん」


「そそ、この席の奴は相当な馬鹿でクズなんだよ、楽島病がうつるよ、それで君転校生?」


「だから、僕が楽島だよ」


 僕は生徒手帳を取り出す。

 まるで刑事のように差し出す僕に、

 そいつは唖然とがくがくぶるぶると震えている。

 生徒手帳には紛れもなく楽島山明と書かれてあるのだから。


「うそおおおおお」


 その場が悲鳴に包まれた。


 生徒がどんどんと膨れ上がり、現在男子も女性も関係なく僕をフルボッコするかのよう取り囲んでいる。


「まじで整形でもしたの? 友達だろうう、安くしてくれよおお」


「お前たてよ」


 僕を引っ張ろうとした。生徒を思わず、ぶん投げる。


 そいつは黒板に突き刺さって動かなくなる。


「きゃああああ」


 女子が悲鳴を上げている。

 僕は面白くなってきたので、


 沢山の生徒達が、僕を集団暴行でもするかのように囲むのだが。

 僕は右手に炎を現した。小声でファイアーと呟いていたのだから。


「これマジックだよ、当たってみる?」


「こいつマジックで手から炎を」


 それに半数の生徒達がびびる、

 だが半数の奴らはこちらが気に食わないのか、

 胸倉をつかもうとして、吹き飛ばし、黒板に突き立つ。


「君たち学ぶ事を知らないのかい?」


「るせえええ、全員かかれ」


 とりあえず片端から投げまくる。

 

 生徒達の悲鳴が響きまくる中、

 半数の生徒達はぶるぶると震えている。

 

「ふう、疲れた。僕は授業を受けに来たんだ。君たちと遊ぶつもりじゃないんだよ、わかる?」


 その場の全員がなぜか土下座をしている。

 黒板に突き刺さったのが生徒の半数なので、

 彼らを引っこ抜くのに僕は重労働を働かなくてはいけない、


 とはいえ右手だけで引っこ抜いていたが。


 黒板に突き立った彼らは頭に擦り傷が出来る程度で、

 黒板の粉で白くなっている。

 

 このクラス全員が、

 僕に対して土下座している。


 僕は土下座を求めていない。

 だが彼らは納得がいかないと無理矢理土下座してくる。

 これでは僕が最悪な奴ではないかと突っ込みたい。


 それでも彼らは命がけで土下座する。


 リーダー核の人が声を張り上げる。

 まるで応援団のような声の張り上げに、びっくりしつつも。


「今までの事本当に申し訳ありませんでした。これからは仲良くしていただけないでしょうか、俺は伊達島と言うものです。どうかこの伊達島の顔で許してください」


「許すも何も君達から仕掛けてきた事だし、君たち僕に対する虐めを止めるなら、何もしないよ?」

「ほ、本当ですか」


「もちろん、僕は勉強がしたいだけだ。ごく普通の青春がしたいだけだ。虐めとかそう言うのじゃなくてね」

「は、はい」


「伊達島さんだっけ、ちゃんと人生を真っすぐに生きようよ、いつまでも人を虐めてばかりじゃ自分自身が成長しないよ? 世の中には虐めで自殺している人がいるんだ。君達は僕が自殺したらあざ笑うだけだろう?」

「滅相もございません」


「いやあんたらは笑うね、だけど僕は君達を許す、だから誰も虐めるな、虐めなら半殺しにするからなぁ、わかったなぁ」


「いえ、もう半殺しなんですが」


 生徒の半数が頭に擦り傷がある程度といったが、顔が真っ赤になるくらい血が流れています。

 今すぐにでも保健室に連れていかねば。


「では血だるまの人は保健室いってね」


「は、はい」


「それと告げ口したら半殺しだから」


「すでに半殺しを」


「さらなる半殺し」


「ひいいいい、分かりましたああああ」


 血だるまの生徒たちは涙を流しながら必死で走って保健室に消えた。

 先生が入ってきた時。


「うおおお、黒板が穴だらけだ」


 というパニックがあったのはお約束。

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