第4話 変わり果てた主人公

 もう何度目なのか理解が及ばないくらい、

 サンドバックを蹴りまくっている。

 祖父は乱雑に本を朗読している。

 1冊が終われば今までは休憩だった。

 しかしそんな事など許されないかのように、高速早口で朗読している。

 ちなみになぜか早口なのに僕はその本の中身を理解する事が出来る。


 次から次へと変わっていく本達は次から次へとやってくる朗読攻撃を、僕は全て吸収している。


 

 サンドバックを蹴り上げる。

 何度も何度も、右足を10回蹴ったら、左足を10回蹴る。

 それを何度何度も。


 終わりがあるのだろうか? 希望がそこにはあるのだろうか? 

 無限地獄にさいなまれ、それでも深夜の2時までは残り30分まである。


 こんな虫の息で眠れるかと突っ込みたいが。


 爺ちゃんは一生懸命朗読している。


 その早口はありえないくらい透き通っていて、想像力を掻き立ててくれるものだった。


 夢中で蹴っていた。

 足が何度つろうと、足ががくがくに震えようが、

 もう蹴りまくる、

 僕は変わるのだ。

 この無人島で変わって、現実世界で皆をぶちのめすのだ。


 もはや憎悪と復讐に包まれた僕は、


 ついにサンドバックを蹴りやぶった。

 

 サンドバックが吹き飛び、幾多の壁にバウンドすると、しばらくしたら動かなくなった。


 僕はそこにぶっ倒れると、即座にエリクサポーションを飲み干した。


 1個では足らずとばかりに2個も飲んだ。


 祖父はちょうど朗読が終わったようだ。


―――鑑定を習得しました―――

―――剣術レベル1を習得しました―――

―――弓術レベル1を習得しました―――

―――防御力レベル1を習得しました―――

―――攻撃力レベル1を習得しました―――

―――素早さレベル1を習得しました―――

―――知力レベル1を習得しました―――

―――超人を習得しました―――

 

 次から次へとスキルを習得していく、

 1つずつ爺ちゃんに尋ねる事とする。


「先程の畑作業レベル1もそうだけど、意味あるのか?」


「ふむ、普通は初めてやる時はとても簡単ではない、難しかったりする。だがレベル1があるだけで飲み込みが早く、すぐに上達する。レベルは3まである。レベルを上げるにはその内容に関係した事をすればよいのじゃ」


「なるほど、そう言う事なんだ。鑑定については?」

「鑑定は見たものの本質を見極める。全ての物や者には情報が宿る。その情報を鑑定する事により見る事が出来るという事じゃ」


「なるほど、では剣術とか弓術も扱いがなれると考えていいのだな?」


「そのとおり」


「攻撃力、防御力、素早さ、知力はレベルに応じて肉体が強化されると?」


「それもその通り」


「ならこの超人というスキルは」


「ちょっと待って、今なんていった?」


「だから超人というスキルについては」


「それは隠しスキルじゃ、よく見つけたなぁ、わしにも理解出来ないスキルじゃ」

「見つけたんじゃなくて普通に覚えていた」


「もしかしたら、山明が急激に痩せたり、急激に変化したのが条件なのかもしれないなぁ」

「爺ちゃん、それなら、このスキルというのは」


「そうじゃスキルとは条件を満たせば覚える事が出来る。この世界のことわりを受け継ぐと、先程も言ったが、現実世界でスキルのようなものを覚えていくことが出来る。こちらの世界でしか覚えられないスキルもあるがのう」


「すごい事になっているんだな」


「その通り、じゃが、お主は現実の高校生活を変えねばならない、そしたらこの無人島は変わるのじゃ、後島自体を大きくしたいなら、外にある巨大な木に餌をやってくれ」


「なにさらっととんでもねー事言ってんだよ爺ちゃん」


「すまんなぁ、そろそろ2時になるだろうし、わしが許可されてるのは、深夜の2時までじゃ」


「分かったよ爺ちゃん、僕の両足もばきぼきいって細くなったし、


 ちょっと鏡見てくるよ。


「おう」


 僕は鏡を見て絶叫を上げた。

 そこにはイケメンがいた。

 さらに髪の毛がぼさぼさになる事でイケメン率を上げている。

 全身がスリムになっているし、背丈だって伸びている。


 恐るべしエリクサポーション。


 これ極めたらボディービルダーとか夢じゃねーんじゃ、

 いややめておこう。


 書斎に戻ると、祖父の姿はなくなっていた。

 あの祖父のホログラム姿は最先端すぎて笑えない。


 現実に戻るには巻物をもう一度見る必要がある。

 僕は巻物を発見すると、

 それを開く事に、


 光がぱっと輝くと、

 そこは元いた祖父の書斎の中だった。


 本棚があるが、そこにも変わった本が結構ある。


 つまり祖父はこちらの世界でもスキルを覚えるようにがんばっていたのだろうし、



 恐らく専門書のようなものならスキル習得が可能かもしれない。


 人生がワクワクするなか、


 僕は部屋に戻って爆睡する事に、

 その日はとてつもなくぐっすりと眠れる事となった。

 夢の中で無人島を巨大になぜか育成させ、

 沢山の仲間を無人島に住まわせ、


 モンスターをばったばったと倒していく、

 ダンジョン島とか、傭兵島とか面白い島が次から次へと現れていく夢を見ていた。

 目をゆっくり開けると。

 そこはいつもの天井だった。

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