第3話 祖父とのレッスン


 異世界の無人島にある屋敷で僕とホログラムのような爺ちゃんとレッスンをしている。

 いわゆる修行という奴だ。


 腕立て伏せが何回で終了かも聞いていない、

 ただ祖父が朗読する【攻撃魔法レベル1の基本】の書を読み終わるまで待つ事にする。

 意外とその魔法の書はとても薄い感じで、

 だから早く終る事を期待していた。


 そしてついに祖父の朗読が終了した。


 先程の休憩の時にエリクサポーションを飲んでいるが、

 それが原因かは知らない、

 ただ。爺さんの朗読を聞き終わると、

 僕の脳味噌の異変に気付く。


「世界には世界の理が存在している。現実世界では魔法は使えないという理が存在するように、この異世界には魔法が使えるという理が存在している。そして山明よ、いや最高なる孫よ、この世界の理を手に入れた。という事は現実世界でも魔法を使う事が出来る。これがカギとなり、現実世界での行動しだいで色々なスキルを獲得出来るし、この世界でも獲得できるのじゃ」


 その長い祖父の説明を聞きながら、 

 僕なりに理解し始める。ちなみに青汁みたいなエリクサポーション2本目を飲んでおり、 

またばきばきと筋肉が発達している。

 なぜか骨まで影響がありそうで怖い。


「爺ちゃん、気になってたんだけど、あの巻物で他の人をこちらに連れてくる事は出来るの?」


「それは無理じゃ、あれはわしがお主に許可を出したからできた事」

「なるほど、爺ちゃんは死ぬ前に許可を出していたんだね」


「そうじゃ、そしてわしは【未来の瞳】というものでそなたがこうなる事を見極めていたのじゃ、今はその【未来の瞳】は使う事はできんがのう」


 僕はさらっととんでもない事を言う爺ちゃんに感動しながら、


 爺ちゃんこと祖父はごくりと生唾を飲み下し。


―――攻撃魔法レベル1 を習得した―――


「今変なアナウンスが聞こえたんだけど」


「それはお主にしか聞こえないもの、攻撃魔法レベル1を習得したと出たのか?」


「うんそうだけど」


「よし、窓からファイアーを出してみろ」


「でも、詠唱とかよく分からないし」


「確かにわしは朗読しながらそのような事を言った。しかし詠唱とはこの世界の者でのたとえ、現実世界ではファイアーと言えばいいのじゃ」


「なるほど」


 僕はファイアーと叫ぶと、炎の塊がまっすぐに飛んでいった。


 大きさ的にはネズミくらいだけど、


 人生で初めて魔法を使った。

 夢にまで見た魔法だ。


 ゲームとかでしか使う事がないとされる。人間には不可能とされてきたその魔法を、僕は今使用しているのだ。


 感動のあまり泣き叫びたい。


「上出来だ。まず今日でお前を別人にする。明日学校で暴れる為になぁ、ふぉふぉふぉ」


 爺ちゃんが不気味な笑い方をする。 

 いくら変わったって体重が減るだけのチビじゃないか。


「エリクサには成長促進も含まれている。期待しておれ、次は腹筋じゃ、本格的にお腹のぜい肉を落とすぞ」


「了解しました」


 もちろん次の朗読は【畑作業レベル1の基本】の本を爺さんのはきはきとした言葉で読み聞かせてくれる。そんな状態で、腹筋をする。しかも頭が枕みたいな石に当たると電撃魔法が飛んできます。


 電撃魔法を食らっても死にはしないが、

 体がありえないくらい痺れてあばばばばとなる。


 爺ちゃんから見たら僕は透けて骨になっているに違いない。


 ありがちなホームコメディー映画のシーンを想像しながらも、


 僕は必至でぜいぜいと息を荒げながら腹筋を繰り返す。

 ついに30分以上が経過する。

 全身がびちょびちょで私服を脱いで、全裸になっています。


 全裸のチビ豚が腹筋でがんばっている。


 やっと祖父の朗読が終わる。

 本当に薄い本なのに、

 腹筋をさせられている時に読まれると、とてつもなく長く感じる。


 その時腹がつった。


 とんでもない激痛に悶えながら、

 祖父の魔法でエリクサポーションを渡され、

 悶絶しながらエリクサポーションを飲み干した。

 腹筋がぐねぐねと暴走する。

 それは激痛ではなくて、

 気持ちよさなのだが、つった感じはなくなる。


 体が爆発しそうな程、細胞レベルで何かが変化していく、


 悲鳴を上げる暇もなく、

 そこに誕生したのは、

 スリムな体を手に入れた平均的な身長の青年が立っていたのだから、


 もちろん全裸で、


 僕はゆっくりとお腹を見ると、

 なんと腹筋が割れていたではないか、

 右腕と左腕を見ると驚くべきことにムキムキになっている。


 だが右足と左足だけはぶよぶよのデブだ。

 つまり両腕とお腹を鍛えたから、後カロリーを消費して、顔や首がスリムになったのだろう。


「嘘みたいだ」


「次のレッスンじゃ」


 爺ちゃんはどこから取り出したのかサンドバックを持ってきた。

 しかも魔法のせいか軽々しく持ち運んでいる。


 僕の目の前に置くと。


「それを蹴りまくれ、蹴って蹴って蹴りまくれ」


「意味あるの?」


「意味があるから持ってきた」


 祖父はにやりと親指を上げて笑って見せる。


 僕はさすがに全裸はまずいと思って、衣服を着るも、どれもぶかぶかと背丈まで伸びたので、衣服を着用出来ない事に気付く。


「わしの執事服を貸してやろう」


「なぜ執事!」


「趣味じゃ」


 爺ちゃんの趣味が明らかになりました。


―――畑作業レベル1を習得しました―――


 畑作業レベル1を覚えたようだけど、一体何に使うのか、

 疑問だらけだ。攻撃魔法だって敵すらいない状況なのに、

 あ、現実世界では敵は沢山いました。


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