第2話 武器と防具と日記

 地下倉庫には無数の剣が置いてある。しかも一本一本種類が違う、

 タグみたいなものがついておりそこには名前が表示されている。


「クリムゾンリッパ―? エンジェルライフ? オメガスレイヤー?」


 なんだか厨二みたいな名前が綴られており、おもちゃかと思える程のリアルな武器だった。


 試しに持ってみようとすると、尋常じゃない重さで持てなかった。


 どうやら本物のようだ。


 地下倉庫はとても広くて、

 防具が飾られている。


「デビルアーマーにエンジェルアーマーにファイブアーマー」


 こちらのタグにも厨二病かと思われる名前が張り付いている。


 後は棚の下には沢山の袋があり中身は何かの瓶で、

 沢山緑色の液体が入っている。

 あれか青汁か、青汁を作ってたのか、ここは青汁工場か。


 僕は心の中で突っ込んでいたが、

 飽きたので、瓶を袋にしまう、


 あんま収穫がなかったので、書斎に戻る事とした。


 辺りを見渡す。

 窓は2つある。1つが前面、1つが後ろ。

 ベッドは後ろの窓の近くにある。


 棚は意味不明な本ばかりがある。


 テーブルには一冊のノートが置かれてある。

 僕はそのノートが気になったので、

 ゆっくりと1ページを開いた。


 そこから先は魔法を信じざるおえない現象が巻き起こった。


 ノートから具現化したのは亡くなった祖父であった。


 祖父はこちらを見ている。


 にかりと笑って見せると、どうやら本物で、

 そしてそこにいるのだ! ちゃんと。


 祖父はこちらを見ている。


 僕は涙を浮かべていた。


 あれだけ大好きだった祖父が生きている。


 だがその夢は唐突に終わる。


「久しぶりじゃのう山明、チビでデブのところはわしと同じじゃ、じゃがわしはこの世界に来て全てを変えた。そうわし自身の未来をな」

「爺ちゃんはここで何をしていたの?」

「ここは異世界だったと言えるじゃろう、そしてこの異世界は異世界の主の心で変化する。わしの時はあまり人がおらず、山の上じゃった。そこから橋をかけたりして、異世界の住民と繋がっていった。じゃが、どうやら、お主の心はそう簡単には解けないじゃろう、全てを見てきた。お主が高校でひどい事をさせられている事を、馬鹿息子と馬鹿嫁が早く気づけばいいものを、祖母が生きていればと何度も嘆いた」


「爺ちゃんはどこにいるんだい?」


「わしは、死んでおるあの世じゃ、じゃから、色々な事をお主に伝えたい、この世界が海だけなのはお主の心が寂しがっているからそして心を閉ざしているからだ。お主ならではの異世界人が現れるにはお主を鍛えて、現実世界を変える必要がある。お主はいつまでも虐められたくないじゃろう? 山明よ」


「もちろんだ」


「なら、特訓じゃて、こちらの世界とあちらの世界の時間はまったく同じ、毎日ここに通え、毎日鍛えてやる。そしてちゃんと現実にも戻れ」


「でも戻ったって」


「戻らなかったら、わしがぶち切れるぞい」

「ごめんなさい」


「わしはここを引きこもる場所にお主に託したのではない、山明が変わる為に託すのじゃ」


「はい」


「なら今日はレッスンをしよう、深夜の2時まで特訓じゃ、その後寝て高校にゆけい、そこで憎しみ自体をばねにするのじゃ」


 その日から祖父の訓練が始まった。

 それは想像以上に厳しい物となった。


―――レッスン開始―――


「まず最初は腕立て伏せじゃ、わしが本を読み上げるからそれを聞きながらレッスンじゃぞ」


 そういって爺さんはふわふわと日記から出てくると、

 きっとあれは魂か何かなのだろう、

 それで僕の指導が始まる。


 僕は必至で腕立て伏せをしている。

 お腹が出ており、チビな為、とてつもなくバランスが悪い。

 何度も何度も腕立て伏せをしながら。


「攻撃魔法レベル1の本を読むぞ、攻撃魔法とは敵に対して行う魔法の事である。通称炎、水、雷、土、等々種類は複数あり、あるものは空気を使ったり、光や闇を使う……」


 汗をだらだら流し、

 人生でとてつもなく辛い事をしている。

 だがいじめられるよりよっぽどましだ。


 クラス全員からあざ笑われている。

 みんなが僕の事をSNSで馬鹿にしている。

 彼らは僕が虐められている所を動画サイトに投稿したりしている。

 顔にはモザイクなど一切かけられていない。


 同級生達は訴えられたらきっとおしまいだろうけど、

 そんな事をしたら、有名な家系なので、僕は一族のさらし者になるだろう。


 それに比べて、このような腕立て伏せなど。


「魔法の種類は無限大であり、まだ発見されていない魔法があるとされる。ふむ最後まで聞いたようじゃな、この緑の瓶を飲め、それが何か当ててみろ」


「青汁、ぜいぜい」


 息をあらげながら、腕立て伏せを繰り返す。


「一度座ってエリクサポーションを飲め」


「うん、分かった。それにエリクサポーションてゲームとかだとすげー高い奴じゃ」


「ゲームの事は知らんが、確かに集めるのには難しいものじゃが、わしは育てる事に成功しておる。種も地下倉庫にしまってあるからのう」


「それまじ」


「まぁこのエリクサポーションも地下倉庫から持ってきたものじゃ、わしは触れる事が出来ないので、魔法でな、一応そこまでなら神様に許可をもらっておる」


「神様っているんだね」


「そりゃーいるさ、ふぉふぉふぉ」


 僕はそのエリクサポーションを飲み干した。


 すると信じられない事が起きる。


 体の細胞がまるで活性化するかのように、


 筋肉疲労などが全て回復する。


 ダメージを負った両腕や筋肉達が最強な回復だああと叫んでいるかのように、

 次から次へとばきぼきと音をならす。

 お腹の脂肪が減っていく。


「す、すげえええええええ」


「そうじゃ、そのエリクサは疲労または傷や病気を治す。その時に負った筋肉などを2倍にして見せるのじゃ」


「ち、チートだ」


「そのチートの意味はわからなんが、わしが一生懸命やりくりして作った最高なる訓練にいちゃもんつけるのか?」


「ごめんなさい」


「よろしい、では次のレッスンじゃ」


 僕は冷や汗を掻いていた。


 僕のお腹は確かに痩せてきていた。


 希望が見えてきた。のはその時だった。


 でもレッスンが全て終わったら祖父と会えなくなるのだろうか?


 色々な事を考えながら、今を精一杯生きる事にした。


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