僕は昔から塩キャラメルが苦手だった。

手首にできていた見知らぬ切り傷。

暗がりのワンルーム、黒くくすんだ視界の中で、赤色だけがくっきりと塗られていた。

それをじっと眺めていると、治りかけだったからか無性に痒くなってきて、ついかさぶたを剥がしてしまった。


身体の内側から滲み出た血液が傷口通って顔を出し、表面張力を発揮しながらぷっくりと浮かび上がる。

僕はその赤い水滴が溢れないように、舌でそっとそれを掬い上げた。


舌馴染みのある味を口の中で転がしながら、僕はその時初めて血が甘いことに気付いた。

ほんのり乗った塩気と、その奥にあるねっとりとした甘味。

そういえば、僕は昔から塩キャラメルが苦手だった。


滴る血を眺めていても感じることのできなかった生の証明を実感していた。

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