第24話 胸が苦しい 検索
学校をサボタージュしてデートに行った日の、夜。
「ふぅ……」
俺は、風呂に浸っていた。
決して狭い訳では無いが、複数人で入るには流石に小さい程度の大きさ。けれども、ゆっくりするには十分なスペースがある。
俺は全身を伸ばして、完全に脱力をしてリラックスタイムに入っていた。ほんと、風呂最高。風呂という存在を考えついた人には雅宣賞を与えようではないか。
……とまあ、テンションが上がっている俺氏。
何気なく、鼻歌でも歌おうかなと思ったのだが……うっ、トラウマが……。
前に一度、鼻歌を浴槽の中で歌っているのが外に聞こえていたらしく、ニヤニヤしながら理乃に「聞こえてたぞー」と言われたんだよな。あの時はくっそ恥ずかしかった――
……まただ。
また、帰り道での時みたいに、胸が苦しくなってきた。つか、心拍数も増加してるよな、これ……。
もしかして……病気か?
……どうしよう。本当に病気だったら……怖っ!
で、でも、こういうのは早期ならまだ助かる可能性も高いんだよな。
俺は内心焦りながら洗面所に行き、自らのスマホを取る。
検索アプリを開き、入力欄に「胸が苦しい」と入れて検索をかけた。
ストレス、心不全、心筋梗塞……え、怖。最悪死ぬ可能性あるじゃん。
慌てて、「心臓 病気」と入力。
様々なページを開いては読み、開いては読み……
……よかった。一応体力は平均程度あるつもりだし、息切れとかは特にしてない。吐き気も無いから、多分違うんだろう。これで一安心か……。
……なら、結局なんなんだよ……。
俺は再び「胸が苦しい」で検索をかけ直し、原因を探す。
そして、しばらく探していると、一文字のある感じが俺の目に入った。
「もしかして……恋」
あー、恋ね。うん、恋……
……
………………
………………………………は?
え、恋?
なんで? どうして? というか……え、恋? ……チョットリカイデキマセンネ。
俺の頭は混乱中。
地球は太陽公転中。
……俺の頭がぶっ壊れたわ。
一旦冷静になろ。
俺は洗面所に放られていた防水のスマホケースをスマホを入れて、浴槽に持ち込む。
一旦、お湯に浸かろう。冷静なのにあっためちゃってるが。もう何が何だかわからねぇ……。
頭まで浴槽に突っ込み、取り敢えず思考を落ち着かせる。
「……ふぅ」
……よし、落ち着いてきたぞ。これでやっと頭が使い物になる。
……つか、冷静になってからふと気づいたが、まだ恋と判断するのは早くないか? もしかしたら違うかもしれんし……。でも、理乃のこと考えた時に胸が苦しくなったわけだし……。
というわけで、「恋 判断基準」で検索、と。
適当にサイトを見繕い、開く。
そのサイトにはいくつかの「恋をした時の症状」というのが載ってある。恋は病気かっての……いや、今の感情がもし「恋」ならば、病気と言っても過言では無いのでは……? 実際苦しいし。
まあ、そんなことは今はいいとして。
まず一つ目。
『その相手と居るとドキドキする』
……ま、間違ってはないな。ドキドキしたタイミング、理乃と一緒にいた時だし?
二つ目。
『その相手のことを常に考えてしまう』
…………いや、これはしょうがないだろ? だって、幼馴染のクセしてトップアイドルだし? 考えて当然というかなんというか……不可抗力だっ! ちょっと使い方違う気がするけどっ!
そして最後の三つ目。
『その相手のことを、命をかけてでも守りたいと思う』
……なんか、一気に重くなった感じがするんだが。
でも、それくらいの強い思いを引き出すのが恋なのかもしれないな。知らんけど。
んで、命をかけてでも守りたいか……ね。
果たして、どうなんだ?
正直な話、これについては本当に命をかけるかしなければいけない時にならないとわかんない気がする。
とはいえ、そんな場面に遭遇する人なんてほとんどいないだろうから、「命と比べて見ても大切か」ってことで考えればいいか。
……それなら、俺はどっちかって言うと自分の命と同程度には大切に思ってる気がする。
唯一の幼馴染であり、最早家族と言っても過言ではない存在。
そんな彼女が傷つく姿を、俺は見たくない。
前に、全力で理乃のことを守ると決意だってした。何があっても、だ。
……と、そこまで考えて、ふと我に返る。
「……なんだか熱くなっちまったな」
ボソッとつぶやきながら、俺は風呂から上がる。
「――そっか。俺、恋してるのか……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます