第7話 救世主の正体

※想像以上に毎日二本投稿がきつそうなので、毎日一本投稿に戻します。



「……涼太、貴方何やってるの?」

「ち、千春か!」

「逆に、私以外に誰かいるのかしら?」


 救世主の名は、小杉千春。


 学年一の頭脳を持ち、定期テストでは不動のナンバーワン。

 その頭脳に、男子を魅了する美貌が合わさり、この学年での有名人ランキングがあれば堂々一位となるだろう。

 

「……それで、本当に貴方は何をやっているの?」

「これはだな……あー……」

「俺のスマホを奪って黒歴史を公開しようとしていました」


 思わず敬語になってしまったが、涼太が言い渋っているのを見てバレたらヤバいということを察したので、遠慮なくバラしてやった。ざまぁみろだ。


「貴方は確か……話題の西本君かしら?」

「あ、はい……って、話題って何ですか?」


 いつの間に俺みたいなモブが話題に……? しかも学年一の有名人までもが知っているだと……!


「『急にイケメンになった西本』って、学年中で話題なのよ。……涼太が、私が取られるんじゃないかって焦ってたから私も覚えてしまったわ」


 ……ん? 「涼太が、私が取られるんじゃないかって焦ってた」?

 うーんと、理解できない。急激に思考力が低下した模様です。


「……その、あれだ。千春は俺の彼女」

「……………………はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 え、マジで?

 涼太に彼女?

 ありえんわ。



信じられなさ過ぎて思わず五七五になったじゃねぇかっ!

 ……確かに、顔は良い方だと思ってたが、いかんせんあの性格だから彼女なんてできるわけがないと思ってたからな……。しかも、お相手が学年一の有名人。ありえんわ。いやトップアイドルを偽恋人にしている俺が言うのもどうかと思うが。


「……まさか知らなかったの?」

「……恥ずかしながら噂には疎かったもので……」

「流石陰キャ」

「陰キャバカにすんなよ全国の陰キャに謝りやがれ」


 陰キャだったなりたくて陰キャになってるわけじゃねぇんだよ。……他の人は知らんが、少なくとも俺は陰キャになりたいとは思ってない。


「……それで涼太。さっきは西本君の黒歴史を暴こうとしてたんだったわよね?」

「…………ハイそうです」

「……あれは私達が小学校一年生の時のことだったかしら」

「おいおいおい。その話は止めてくれ!」

「クラスで将来の夢を発表する時があったのだけれど、その時の彼の夢が――」

「お願いします千春様私に慈悲を……」

「――『千春ちゃんの旦那さんになること』だったのよ」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 ……小学校一年生の涼太君は可愛かったのに、今ではこんなんになっちゃって……時間って容赦がないな。

 ……それより、マジで将来の夢がお嫁さん……じゃなくて旦那さんだった奴がいるのかよ。ラノベの中でそれを見ても微笑ましいけど、リアルの友達がそれだったら恐怖以外の何物でもないわ。


 っていうか、そんな昔のことを知ってるってことはもしかして――


「――そうよ。私達は幼馴染」

「やっぱりですか……」


 俺の心の中で湧いていた疑問に答えるように、彼女は言った。

 まさか俺達と一緒だなんて……。変な偶然もあるもんだな。女子の方が有名人ってのも同じだし。


「そういえば貴方も幼馴染の彼女がいるのよね」

「ああ、まあ、一応……」


 昨日の段階で涼太には「幼馴染の彼女がいる」とだけ伝えていたので、それが彼女にも伝わったのだろう。……こいつ口軽いな。恋愛相談とか絶対にされないタイプ。うっかりしてしまわないように気をつけねば。


「それなら今度、私達と貴方達の四人でどこか行かないかしら?」


 ……ん? まさかのお誘いですか……。

 うーむ、ボロが出そうで怖いけど、断る理由とか無いし……理乃の予定次第だな。


「ごめんなさい。行くことに問題はないと思いますが、彼女の方の予定が分からないので、日程は後程……」

「そう。わかったわ。……それと、同い年なのだから敬語は止めないかしら?」

「そうですね……じゃなくて、そうだな。気を付ける」


 そうして、いつの間にかダブルデート(?)の予定が立ってしまったのである。……まずは理乃がオッケーするかだな。帰ってきたら聞いておこう。

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