第6話 彼女の紹介
偽恋人となった日の翌日。
「涼太。許可出たから写真見せてやる」
「おー!あざす……って、連絡先交換してんだから写真送ってくれても良かったんじゃ?」
「保存されたら嫌だから」
「これまた独占欲がお強いこと」
いや独占欲云々じゃなくて、一応理乃はトップアイドルだから。すっぴんとはいえ流出させる訳にはいかないんだ。
そんなことが言えるはずもなく、否定できないでいると、涼太がニヤニヤと見つめてきた。生憎男に見つめられて喜ぶ趣味は持ってねぇからこっち見んな。
「……んなこと言ってると見せねぇぞ」
「すみません雅宣様見せて下さいませ」
「うむ、くるしゅうない」
ふっ……昨日の仕返しじゃい!
「ほら、これだ」
涼太の方にスマホの画面を向ける。
画面にはすっぴん状態の理乃が映っているが、念のために眼鏡をかけている写真を選んで見せた。
この眼鏡は伊達眼鏡だが、理乃が変装をする時に気に入ってしまい、何もなくても偶に着けていたりする。
本人曰く、「地味な女の子が眼鏡を取ったら美少女とか、萌えるでしょ?」だそうだ。否定はしないが、微妙な理由だよな。
「へぇ……これが雅宣の彼女か……地味な雰囲気って感じするけど、これは眼鏡取ったら化けるな」
はい、正解です。
この人のメガネ取ってちょっとメイクすれば、一瞬にしてトップアイドルの出来上がりだからね。化け度合いも、想像の遥か上を行くんじゃないか?
……なんてことはもちろん言えるはずもなく、内心ちょっとした優越感に浸っていた。偽とはいえトップアイドルと恋人で、彼女の正体を知っているのも自分しかいないという事実が何故か嬉しい。
「……正直に言って、雅宣にはもったいなくないか?」
「ひどくね?」
「あはは、冗談。お前がイケメンだから嫉妬しちまった」
「……お世辞はやめろ。その場で持ち上げられたところで、後から現実を知って絶望するだけだから」
「お世辞じゃないからな?……事実、昨日告白されてるだろ」
昨日……ああ、そんなこともあったな……。理乃と偽恋人になるきっかけも、そのことが原因だったっけ。……ほんと、あの時見栄なんて張らなければ簡単に解決したのに、なんで見栄なんて張ったんだろうな。
俺の名誉を守るために理乃が偽恋人になってくれたけど、やっぱり申し訳ないな。別に好きでもない奴と恋人のフリだなんて、普通はやらない。理乃が優しいからやってくれたんだ。気も使わせたと思うし……もう二度と後先考えない行動は止めよう。
「……だとしても、だ。告白されたのがイケメンだからって理由とは限らんだろ?」
「まーあなっ!」
俺が下を向いて頭を掻いていると、いきなり涼太が俺のスマホを分捕った。
「ちょ、涼太! 返せオラァ!!」
「やーだね」
もともと身長差が結構あったため、ジャンプして取り返そうにも全然取り返せない。クソがっ!
「さーてと、雅宣君の写真フォルダの中には何が入ってるでしょーうか?」
「なんも入ってねぇけど返せ!!」
本当に変な画像―――それこそ、周りの男子が騒ぎそうなエロい画像なんてものはない。
だが……見られて恥ずかしいものがないわけではない。
「……ん? これなんだ?」
そう言って涼太が俺のスマホの画面を見せてくる。
「俺が半強制的に女装させられた時に写真だよ畜生!!」
「おっ、解説サンキュ。……ぷぷっ」
「チクショォォォォォォ!!」
なに自分から黒歴史説明しちまってんだよ!馬鹿か俺は!?
あの時はひどかったんだぞ。
小遣いが尽きそうになって理乃に奢ってもらおうと思ったら、代償に俺の女装を要求してきやがって……。最初はそこまでひどくならないと思ってたから即オーケーしちまったけど、その女装が似合わな過ぎて家族全員に笑われたのを覚えている。その後一日中部屋に籠ってたら理乃が二冊奢ってくれたから許したけど。
「……つーかよ、お前のフォルダん中理音ちゃんの写真多いな。なんでこんなにあるんだよ」
「知るか!」
「いや知ってるだろ。……もしかして、いわゆるドルオタってやつか?」
「ちげぇよ。それはあれだ……その……知り合いから預かったものでだな……」
「嘘つけ」
……やっぱ幼馴染がテレビに出てるんだから、写真撮りたくもなっちゃうだろ?
そこに他意はない。好きだからとかそう言った理由じゃないからな。
このまま俺の黒歴史が晒され続けるのか……と嘆いていたその時、救世主が現れた。
「……涼太、貴方何やってるの?」
☆あとがき
今日から毎日二本投稿で行こうと思います。
ですが思ったよりも大変そうなので、途中からまた一本に戻るかもしれませんが、その時はご了承ください。
☆やコメントを頂ければ作者のモチベーションアップにつながり、二本投稿が長く続くと思います。
是非、よろしくお願いします。
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