第35話

 3姉妹もようやく僕たちの元に辿り着き、はぁはぁと息切れさせながら、こちらを睨んできた。リンスが口を尖らせた。


「ちょっと、私もボインになりたいのよ! 横から邪魔しないで。ボインになるのっ!」


 すると、グロウジュエリーは一旦、赤色の光を静めた後、今度は緑色に光った。


「おおおお。今度はグロウジュエリーが緑色に光ったぞー。どーなってんだ?」


「私の胸を、ボインにして。ボインになりたいのっ! ボインボインボインボインっ!」


 グロウジュエリーが、段々と緑色の光を強めていった。


「やめるですー! そんなくっだらねえ願いを止めるですーっ! 話し合うですー」


「そうですワ。話し合うのですワ」


「いやよーーー。私は話し合わない。今すぐにボインになるのっ!」


「うぬぬぬ。こうなれば、緊急キャンセルでアリマス」


 ばにーは、僕たちの知らない言語を発した。すると、輝き放っていた緑色の光が突然、消えた。


「え? え? 光が消えちゃった。ボインになりたーーーーーい」


 すると再び宝石に緑色の光が灯るも、ばにーが先程と同じように僕たちの知らない言語を発するや、光は消えた。


「小娘のアホな願いなど叶えさせてたまるか。キャンセルですー。グロウジュエリー発動の緊急キャンセルをできる事こそが、我らの所有物である証ですー」


「人間に知らない機能も色々とあるのでアリマスよ。この宝石には」


「それを、返してほしいのですワ」


「嫌よっ!」


 リンスと3姉妹は、互いに睨み合った。


「モモくん、予定通りにあいつら、こてんぱんにしちゃってよ。球体ロボットに乗ってないから今なら楽勝よーん」


「うぅっ………………」


 怪盗ウサギ団の3人は、涙目で、怯えたように僕を見つめてきた。


「………………やだ」


「なんでよー」


「僕は弱い者いじめはしないから」


「こいつらは、弱くなんかないわ。強いのよっ」


「弱いのでアリマース」


「弱い者いじめは、しちゃいけないんですー」


「いじめないでほしいのですワ。いじめはダメ! ぜったいダメ!」


「ほーら、そういってるじゃんか」


「くっ。……でも、この宝石は私たちが6つ集めたのよ」


「なんだ、おまえたち、その宝石を本当に自分たちの実力で集めたと思っているのかですー」


「思い上がりもいいところですワ。これまで、予期せぬ幸運が積み重なって、集めてこられたのではないでしょうか?」


「もし本当に自分たちの実力で集められたと思っているのなら、はっきりと教えてやるのでアリマス。とんだ勘違いしていると」


「オメーら、それは一体、どういうことだー?」


「きゃろっと、うさぴょんお姉さま、ここは情に訴えるのでアリマスよ」


「話せば、きっと宝石を譲ってくださるかもしれないですワ」


「小僧と小娘。我らの話を聞いてくれないかですー? 我らがその宝石を求めている理由を」


「どーせ、そんな事を言って、何か策を考えているんでしょう。あんたらの目の前にいる二人は、これまで『お喋り≒時間稼ぎ』の図式に何度も引っかかってきた私たちだということを、忘れたのかしら?」


「もう、どうこうするつもりはないのですワ」


「我々には、もう後がないのですー」


「なー。リンス、話くらい聞いてやってもいいんじゃないのか?」


「……わ、分かったわよ。ただし、聞くだけよっ」


「良かったですー。では、話すですー」


 怪盗ウサギ団は、自身らのその過去を語り始めた。

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