第32話
「戦闘形態に特化した我らウサギ族は無敵。最初に会った頃と同じと、思うなでアリマース」
「ひえええええええ。待ちなさーーーい。まだ話は終わってないわっ! 提案があるのっ」
「待たないですー。究極必殺技で、陸の藻屑となれですー」
「こないだの、超必殺技ってのよりつえーのが来るのか。見てえ気もするけど、ってか、オメーら、嘘つきだな」
「はっ? どういう事ですー? ウサギ族は嘘はつかないですー」
「南極でオメーら、確かに石を僕たちに、あげるって言ったよな? それを、力づくで取り戻そうってのは、嘘つき以外の、なんでもねーじゃねえか」
「はあ? 何をほざいてるですー?」
「ぐぐぐぐっぐ。うさぴょんお姉さま……悔しいですが……小僧のいう通りでアリマス。我らはウソをついた事になるでアリマス」
途端に球体を覆っていた赤色の光が消えた。
「あれは嘘ではなく、間違っただけですー! う、嘘と間違いは違うですよー」
「く、苦しい言い訳ですワ。うさぴょんお姉さま。間違ったからと発言が無効になるだなんて、苦しい言い訳ですワ」
「一度あげたものを、確かに力づくで強盗してしまえば、最初に嘘をついた事と同じになるでアリマス。これは怪盗ウサギ団の、そしてウサギ族の名折れでアリマス」
「ぐぐぐぐっぐ……なんてことですー」
球体の一つ目が、こちらを睨みつけてきた。リンスは球体に言った。
「返してあげてもいいわよ」
「な、なんだと?」
「ただし、勝負に勝てたらね。それも前回にもらったグロウジュエリーだけじゃないわ。私たちがこれまで集めた、5つのグロウジュエリーぜーんぶをあげるわっ」
「おいおい、いいのかよリンス!」
「………………どのような勝負でアリマスか?」
「勝負内容は簡単。『この塔の屋上にいち早く到達する事』。ちなみにこの塔は直径十キロで高さ158キロあるわ。中は幾つもの層が連なっている。どうせ最後の一個を先にあんたらが獲得した場合、それを争っての勝負となるでしょうから。この勝負で白黒つけてしまおうってこと」
「ほう……なるほどですワ。どっちが早くてっぺんに到着するか、という勝負ですワ」
「つまり、勝者が6つのグロウジュエリーと、願いを叶える権利を獲得できる、という事でいいですかー?」
「ざっつらいと! その通りよ!」
「どうするでアリマスか? うさぴょんお姉さま」
「受けてたつですー。壁登りの勝負ですねー?」
「なにいってるの。あんた達は塔の内部から登ってらっしゃい」
「ばにーお姉さま、うさぴょんお姉さま。内部から巨大な生物反応がいくつも検知されました」
「そうよ、確かに中には、古代生物がいるわ。あんたたちが、見下しているオニ族とかいう古代人が作った、生物兵器がね。もしかして、怖いの?」
「ちょ、挑発でアリマス! これは明らかな挑発でアリマス」
「こ、怖くなんてないですー。わかったですー。私たちは内部から屋上まで登っていくですー」
「よし、交渉成立ね」
「しかし約束するのですワ。我々が勝った場合はいさぎよく、宝石を全て渡すと。駄々を捏ねたりしないことを!」
「もっちろーん。約束するわ」
「だったら、これを持っていけ、ですー」
球体の表面から、ウィーン、何かがと出てきた。そして、それをこちらに投げてきた。リンスはキャッチする。何らかの機械のようである。
「これは互いの位置情報を知らせ合う発信器ですー。使い方はレーダー探知機とほとんど同じですー」
「分かったわ。じゃあ勝負、スタートよっ!」
リンスがそう言った直後、球体はガシャンガシャンと、塔の内部に入っていった。
「千回負けようとも、最後の一回に勝てばいいんですー」
「さすがですワ」
まさにこれから、白熱した最後の勝負が行われる、と思った矢先。勝敗は意外な形でついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます