第18話
しかし………………。
まだ生きているようだ。流砂に巻き込まれるも、砂に埋もれたわけではなかった。現在いる場所は、本で見たことのある火星の様な外観をした場所だった。地下空間。周囲に不思議な色彩の砂丘が点々とある。砂に埋もれた数秒後には、宙から落下していたのだ。60m程は落ちただろうが落下地点が柔らかい砂で、ちょうど砂丘の傾斜部でもあり、落下の衝撃が軽減した。
ここは地下だが、天井には赤く輝く宝石が散らばっていて、地上での『夕暮れ時』程の明るさだ。僕とリンスは周囲を探検した。そして……。
「ちょっとモモくん、これって、古代文字よ」
「そうなんか? じゃあ、僕たち、今は古代遺跡の内にいるってこと? 死後の世界じゃなくって?」
「きっとそうよ。だってまだ生きてるもの。ほっぺたつねっても痛いしね! ……ハイテク眼鏡を使って、翻訳してみるわ。……えっと。うっわー。なーるほどね。なーるへそー!」
「なんだよ。なんだよっ! 一体何が分かったんだよ。僕にも教えてくれよー。なにが書かれてあったんだ!」
「うん? ただの住所が書かれてあっただけ。ただね、ほら……前回の無人島の時、怪盗ウサギ団のやつら、レーダー探知機がはっきり機能しないって言ってたじゃない。そして、今回、この砂漠地帯で、私たちのレーダー探知機も十分に機能しなかったわ。それはきっとね、古代遺跡から、レーダー探知機の精度を攪乱する何らかの波動が出ていた、と推測できるわけ」
「………………ふーん。っで?」
「でっ? て言われても、すごい発見じゃない? レーダー探知機が機能しなかった謎が解けてスッキリしちゃったわ。もしかしたら故障しちゃったんじゃって心配してたのよ」
「………………良かったな。……それで僕たち、これからどうすんのさ。それとさ、あそこにあるのってさ……もしかしたら白骨遺体じゃ、ねーのか?」
「え、え、え? うひゃあああああああ。本当だ。何これ、人の白骨じゃないの……って、なになにこれ、人?」
僕たちの前に、白骨遺体が転がっていた。ただし、外観は人と似ているが、微妙に違う点があった。頭に『角』のような骨があった。
「これ、頭蓋骨に角のような骨があるわね。うーん。これは興味深いわ。モモくん、これはおそらく、古代人の白骨遺体よ。古代人の頭に、角が生えていたのね。これも、すごい発見よっ」
「そうなんか?」
「これまで古代人の化石はね、一度でも見つかった事がなかったのよ。古代人って突然、文明だけ残して消滅した、謎の民族だったの。この発見だけでも私たち、有名になれるわっ!」
「おお、それはすげーじゃねえか! 有名になったら、美味しいものとか、たくさん食えるのか?」
「もっちろん! もうね、あちこちの学会に呼ばれて、ご当地の食べ物、食べ放題よ!」
「いっやったーーー!」
「わーーーいわーーーい! 世紀の大発見って見出しで、テレビに映るわよ。お化粧しなくちゃ。ダイエットも始めておかなくっちゃ。エステにも行かなくっちゃー」
「だな。とりあえず、戻ろうぜ。僕喉乾いちゃった。オアシスに行って、喉を潤してーぞ」
「うん。じゃあ、戻りましょうか!」
「よーし」
「………………そうそう」
「どーした?」
「どうやって戻るのだろう?」
「………………」
僕とリンスは、呆然とお互いの顔を見合った。ふと、リンスは思い出したように、レーダー探知機を取り出した。
「とりあえず、道に迷った時には、現在地を把握しなくちゃね……って、えっ! えっ!」
「どうしたんだ?」
「めっちゃ反応してるわ。どういう事かしら。グロウジュエリーが、これまでとは違って、周囲に複数個ある事を検知してるわ。近場に……6個もあるっ」
「あれ? グロウジュエリーが6個ってこれで揃うんじゃないの? 僕たち、もう3つ揃えてるから、ここにある6個と合わせたら合計9個も揃う事になるよな。6+3でさ」
「そうよ。私たち、運がいいわ! グロウジュエリーは6個以上存在したって不思議じゃないの。すごーい。この場所だけで願いが叶っちゃうかも」
「おぉぉー! 僕たちの冒険も遂に終わるんだな!」
「そして私、ようやくボインになれるのね。なんだか、感動的! 一番近いグロウジュエリーは……位置的には、ここから3キロ程の場所にあるわ。近いわっ」
「ボインよりもさー、願いは『この得体の知れない地下空間から脱出させてくれ』ってのにしたらどーだよ」
「嫌よっ! 最初から、願い事はボインって決まっているのよ。それ以外は認めないっ! 脱出方法については、その後で考えればいいわっ」
「命あってのものだねだぞ。いや、命あってのボインだ」
「うまいこというじゃないの」
「僕、あの白骨遺体……なーにかが気になるんだよなー。つまり、ここから出れなくなったからこそ白骨化して、こんな場所で倒れているんじゃないのかってさ」
もう一度、白骨遺体をじっと見つめた。すると、あるものを近くで発見した。なんと銃のようなものが転がっていたのだ。
「リンス。これってさー『銃』ってやつだよな? 僕の父ちゃんの持ってた『任侠映画』ってので出てきてたやつだ。バキューンバキューンってするやつっ」
「そうね。私たちの知っている銃とは若干形状が違うけど、これは確かに銃ね……。なんで、こんなところに銃があるのかしら。まさか、この白骨遺体は自殺とか……いやいやいや」
とにもかくにも、僕とリンスはレーダー探知機で検出された、この砂に埋もれていた古代遺跡内にある6個のグロウジュエリーの探索を開始した。
「ところで古代語って、もう解読されてるんだよな。古代人ってどんな奴等だったんだ?」
「こないだテレビに出演していた学者さんの話だけど、『オニ』って呼ばれる種族だったらしいわ。まあ、実物の化宝石は発見されてないから、身体的な特徴は不明だったけど、人間に近い存在だと言われていたのね。……っで、彼らの主食の一つがその『人間』だったとかも……」
「はい?」
「怖い話よねー。古代文字を解読できるようになって分かったんだけど、牛や豚の飼育と同じように、人間のような特徴を持つ動物も飼育して食べていたっていう、そういう記述もあちこちで発掘された遺跡から見つかってるのよ」
「なんで? なんで人間を食べてたんだ?」
「さあね。知的動物を食べると、自分らの知能が更にアップするとか、単純に美味しいと思われていたんじゃないのかな。あくまでも、遺跡の記録の一部に、人間によく似た特徴の動物を飼育していた、と記述されていただけで、はっきりとはしていないからね」
「こえええな。人間を家畜のようにしていただなんて。僕、結構、衝撃受けたぞ」
「………………そう?」
リンスはじっと僕を見つめてきた。
「なんだ?」
「ううん。何でもない。もしかしたら、そいつらをやっつけたのが、モモくんのご先祖さまじゃないのかなー、なんちゃって」
「はあ? なにアホな事を言ってるんだよ。あんな巨大な生物を兵器として使うやつらを、僕のご先祖なんかが倒せるわけねーだろ。というか、僕にご先祖なんていないから! いるのは、父ちゃんと母ちゃんだけだからさ。何を根拠にそんな事を言ってんだよ」
「ま、まあ……あくまでも私の勘よ」
僕たちはグロウジュエリーの探索を再開した。
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