第三十八話 開催!クリスマスフェスタ!

 ツバキが“Crescent Moon”のミューズとなったファッションショーから数日が経った十二月の中旬過ぎ。

 綺羅星学園は、恒例の行事を控え、学園中がドタバタと大忙しになっていた。


「ふんふふんふーん」

「かのん、楽しそうね」

「そりゃあそうだよー! だって、クリスマスだよ!? しかも学園中で、色んな人達を呼んでの大パーティーだよ! すっごい楽しみだよね!」

「ええ、そうね。あゆみやひなは料理担当で、つばめは会場の設営担当。私達はこうして飾り付けの担当って、みんなで作ってるのも楽しいわね」


 そう、ツバキの言う通り、綺羅星学園のクリスマス行事……つまり“クリスマスフェスタ”は、全校生徒や職員全員が参加する、綺羅星学園の一大イベント!

 ブランドのデザイナーさんや、音楽関係やテレビ局の関係者などなど、たくさんの来賓も来るような、すごいイベントだった。

 そしてもちろん、綺羅星学園がアイドル学園であることを忘れてはいけない。

 アイドルが一番輝くのは……やはり、ステージの上なのだから!


「クリスマスフェスタも楽しみだし、キセキ先輩のステージも楽しみ……!」

「ふふっ。かのんったら、さっきから顔がずっと緩みっぱなしじゃない。アイドルがしていい顔じゃなくなってきてるわよ?」

「ふぇっ!? 気を引き締めないと」


 ペチペチと頬を叩くかのんを、ツバキはまた小さく笑いながら見守る。

 しかし、そんな二人の和やかな時間は、長く続かなかった……。

 なぜなら、ピンポンパンポーンという軽快な音の後に、スピーカーから「スタンディングフラワー! いつもの四人を連れて、学園長室に来なァ!」というマイク先生の呼び出しが飛び込んできたからだった。


「……私、今呼ばれた?」

「そうね。それに多分私やあゆみ達も呼ばれたわね。でも、“いつもの四人”ってまとめられちゃうと、なんだかこう」 

「愉快な仲間達! みたいだよね!」

「……そうね」


 つまりは、“立花かのんと、愉快な仲間達”である。

 周りから見れば、あながち間違いではないのかもしれないが、ツバキ的には、少し腑に落ちない気分だ。


「でも、愉快なのは、私よりもかのんの方が愉快じゃない」

「えっ!?」

「行動も言動も愉快すぎて、時折頭が痛くなるくらいね」

「つ、ツバキ~……」


 遠慮のないツバキの言葉に、かのんは情けない声を上げる。

 そんなかのんがおかしくて、笑いながらツバキは「冗談よ、冗談」と、かのんの頭を撫でるのだった。


「カノン」

「ツバキさん~」


 学園長室の前にかのんとツバキがたどり着こうとしたところで、その目的地の辺りから、聞き慣れた声が聞こえてきた。 


「あら、みんな先に来てたのね」

「うん。わたしとひなちゃんは一緒の場所にいたから、一緒に来たんだけど、着いたときには、もうつばめさんがいてびっくりしちゃった」


 そう話すあゆみにはなにも言わず、つばめはカノンとハイタッチしたり、腕を組んだりして遊んでいた。

 その姿に、ツバキは“そういえばかのんから、元々は人見知りだったみたいって聞いたことがあったわね”と、なんとなく一番に来た理由を察したのだった。


「まあ、あまり先生方を待たせる訳にはいかないし、そろそろ入りましょう。ほら、かのんとつばめも。遊んでないで」

「はーい! つばめちゃん、行こう!」

「うん」


 ツバキの言葉に元気よく反応を返したかのんが、学園長室のドアを勢いよくバァンと開く。

 一応、唯一かのんが名指しだったこともあって、一番最初にかのんに進んでもらおうとしたのだが……相変わらずの不作法に、ツバキは大きくため息を吐いて、頭を抱えるのだった。


「失礼します!」

「かのん……そういうのは、開ける前に聞くのよ」

「かのんさん。とても元気で、楽しいです~」


 ズカズカと入り込んでいくかのんの後ろに、ツバキやひな達も続き、学園長室の中は一気に騒がしくなった。

 だが、もう何度も同じような状況を体験していただけに、学園長席に座っていた学園長も大きく反応することはなく、「やあ、来てくれてありがとう」と、優しく微笑んでいた。

 しかし、それはあくまでも学園長だけであり……部屋の中にいたマイク先生は、額に青筋を立てながら「入る前にノックしやがれェ!」とキレるのだった。


「まあまあ、マイク先生。元気があるのは良いことですから」

「いや、そう言う問題じゃねェだろ……」

「それに、今日はそんな話をするために呼んだわけでもないですし、話を進めましょう」


 そう言って机の上のリモコンを操作する学園長に、マイク先生は「ったく、しょうがねェなァ……」と、しぶしぶ話を終わらせるのだった。

 そんなこんなやり取りがあったと、学園長は「クリスマスフェスタの準備はどうかな?」と、話を振ってくる。

 急に話を振られたかのんは、「え? えっと、順調……です?」と、曖昧な顔で首を傾げた。


「順調なら良いことだね。毎年この時期は学園が賑やかで、私もとても楽しく感じているんだよ」

「わかります! みんなが楽しそうに笑ってたり、話してたりして、私もすごく楽しいです!」

「うんうん。良いことだね。それで、そんなクリスマスフェスタだけど、来てくださった方々への感謝も込めて、ステージパフォーマンスを行っていることは知っているかな?」

「ええ、もちろんですわ。毎年、その年のスタァライトプリンセスがステージを行っていたかと」


 かのんの後ろから、横へと移動したツバキが、学園長の問いにしっかりと答える。

 そんなツバキの言葉に、学園長は「そうだね」と頷き、「しかし、今年は予定を変更するつもりなんだよ」と笑うのだった。


「予定の変更? でも、キセキ先輩のステージはするって聞きましたけど……」

「うん。星空君のステージは、神城君の言うとおり行う予定だよ。しかし、今年はそれだけでは終わらない。二年生や一年生の代表者にも、ステージに立ってもらおうと思っているのだよ」

「……ま、まさか、わたし達が呼ばれたのって」

「ふっふっふ。そう、君たちが一年生の代表だよ」


 楽しそうに笑いながら、学園長はかのん達全員へと視線を動かす。

 沢山の来賓の方が来られるクリスマスフェスタのステージ。

 テレビも入るため、ものすごくチャンスの場ではあるものの、同時にそれだけの技術や完成度を求められてしまう。

 そこまで考えが及んでしまうツバキやあゆみは、少し難しい顔をして、全員で相談しようと思ったものの……かのんやつばめは「やります!」と即決。

 その姿を見て、ツバキとあゆみは、顔を見合わせ、諦めたように笑うのだった。


「……うん、みんな受けてくれるみたいだね。ありがとう。準備と並行してステージの練習をお願いするよ」

「わかりました! でも、先生。なんで今年から変更になったんですかー?」

「ああ、それはね。星空君の提案があったからだよ。なんでも“せっかくのクリスマスに、私だけのステージじゃもったいない”って言ってたかな?」

「そ、そうなんですか? キセキ先輩のステージだけでも、私は嬉しいって思うんだけど……」


 かのんの驚きに学園長は楽しそうに微笑み、「今年はそれだけ、色んなアイドルが輝いていた、ということなんだろうね」と、呟いた。

 スタァライトプリンセスという、学園のトップだけが強く輝くのではなく、三年生であるキセキの他にも、たくさんの輝きが増し、そして生まれた一年だったのだろう。

 “だからこそ、星空君はそんな輝きを大切にしたいんだろう”と、学園長はかのん達を楽しげに見つめた。

 もっとも、そんな学園長やキセキの想いなど気付くこともなく、かのんは「がんばろー!」と、気合いを入れていたのだが。


☆☆☆


  飾り付けを作ったり、会場の設営や、料理の仕込みなどなど……たくさんの人が来るからこそ、たくさんの準備が必要になってくる。

 そんな毎日にステージの練習も増え、かのん達はとても忙しく、そして楽しくクリスマスフェスタの準備を行っていた。

 楽しい日々はすぐに過ぎ去っていき……気付けばクリスマスフェスタの当日になってしまっていた。


「お祭りだー!」

「クリスマスフェスタ、ね。かのん、はしゃぐのは良いけど、はしゃぎすぎて体力を使いきらないようにね?」

「大丈夫! 私達の出番はお昼過ぎだもん、お昼ご飯食べたら回復するよ!」

「あはは……かのんちゃんらしいね。でも、わたしはかのんちゃんの体力よりも……天気が気になるかなぁ」


 そう言ってあゆみが食堂の窓から外を見れば、昨日の夜中から降り始めた雪が、次第に強くなっていた。 

 地面は真っ白に染まっており、今はまだ軽く積もっている程度ではあったが、このまま降り続ければ歩くことも難しくなるかも知れない。

 しかし、そんな空を見ても、かのんは「ホワイトクリスマス、だね!」と元気に笑うのだった。


「かのんの脳天気さが時折羨ましくもなるわね……。まあ、考えたところで天気を操作する方法もないし、ひとまずはやれることをやりましょう」

「それが良い。フェスタの準備を終えたら、最終確認」

「はい~。ひなも準備がんばります~」

「ええ。それじゃあ、みんな。準備が終わり次第、レッスン室に」


 ツバキの言葉に四人は頷いて、それぞれの準備にと席を立つ。

 かのんとツバキは飾り付けのために教室へ、ひなとあゆみは料理のために厨房に。

 そして、つばめはステージ設営のために講堂へと別れるのだった。


「ホワーイトクリースマース、ふんふんふーん」

「なによ、その歌」

「ホワイトクリスマスが嬉しいなーって歌!」

「だから、なんなのよそれ」


 準備した飾り付けを教室や廊下へと付けながらかのんが歌う鼻歌に、ツバキは苦笑しつつそう訊いてみれば、やっぱりよく分からない言葉が返ってくる。

 そんなやりとりも、楽しく感じられるのは、やはりお祭り前だから?

 ……なんてことを思いつつ、ツバキはまた笑うのだった。


「あれ、雪弱くなってきてる?」

「かのんの変な歌を聞いて、雪も呆れちゃったんじゃないかしら?」

「ええー!? 変な歌じゃないよー!」

「まあ、なんにしても。あのまま降り続けていたら、お客さんも学園に来れなくなっていたかも知れないし、いいじゃない」


 そう言ってツバキは飾り付けを進めていくが、かのんは「むぅ……そうだけどー」と、ちょっと不満そうに口を尖らせるのだった。


 そして、雪が止んだことに気付いたのはかのん達だけでなく、会場の設営準備が終わり、講堂の外へと出たつばめもまた空を見上げ「やんだ」と呟いていた。

 正直、つばめにとって雪はあまり良いものではない。

 なぜなら、雪が降ると……外で踊れなくなるからだ。

 しかし、今日の雪はあまり嫌な気持ちにはなっていなかったりするが。


「カノン、少し残念がりそう」


 つばめにとって、引っ越してきて初めて出来た友達で、そして、ユニットのパートナーであり、さらにライバルの少女……かのん。

 そんなかのんが、とても楽しそうにしているのが、つばめにもすごく嬉しかったから。

 だからこそ、つばめは空を見上げつつ……“なにか出来る事はない?”と、足をレッスン室ではなく、別の場所へと向けるのだった。


☆☆☆


「はい、皆さん。ありがとうございます」


 厨房で生徒達に指示を飛ばしていた阿国が、軽く手を叩いて作業終了を口にした。

 その言葉をきっかけに、生徒達は疲れを顔に滲ませながらも、楽しそうに厨房から出て行く。

 そんな流れに逆らうように、一人の少女が厨房へと姿を現し、残っていたあゆみとひなの元へと向かっていった。


「あれ? つばめさん? 作業は終わったんですか?」

「うん。終わった」

「では~、どうしてこちらに~?」

「雪がやんだから」


 ひなが訊いたことに対して、全く関係の無さそうなことを返すつばめ。

 そんな脈絡のない返答に、ひなは「雪、やんじゃったのですか~」と、残念そうな顔を見せる。

 しかし、あゆみはひなとは違い、つばめの言葉からひとつの可能性を見つけ、少し苦笑していた。


「あの、つばめさん。もしかして、かのんちゃんのことですか?」

「そう。雪がやんだから」

「そうですね。かのんちゃん、雪が降るの楽しみにしてましたから」

「はい~。朝からずっとソワソワしてました~」


 年中頭がお祭り騒ぎなかのんからすれば、クリスマスという特別な日に、雪が降れば、もっと特別な日に。

 そんな特別な日に、憧れの先輩と同じステージでパフォーマンスが出来る。

 “かのんちゃんの気持ち的にはそんな感じなんだろうな……”と、あゆみは少し笑いつつ、“でも、天気は操作できないから……”と頭を悩ませた。


「そう、ですね。雪を使ってなにか出来れば」

「雪を使ってですか~?」

「分かった。かのんのところに行ってくる」

「えっ!? あの、つばめさん!?」


 まだ解決案も伝えていない段階で厨房から走り去っていったつばめに、あゆみは慌ててその後ろを追いかける。

 そんな二人の後ろを、ひなも楽しそうに追いかけるのだった。


☆☆☆


「さ、かのん。レッスン室に行くわよ」

「はーい。みんなもう行ってるかな?」

「どうかしら? 連絡もないし、わからないわね」


 レッスン室へと向かいながら、隣り合って話す二人。

 そんな二人が廊下の角に差し掛かったタイミングで、横からつばめが滑り込んできた。

 ……ゴンッと鈍い音を響かせながら。


「いったぁ!?」

「えっと……かのん、大丈夫? それにつばめも」

「……大丈夫じゃない」

「大丈夫そうね」


 廊下に転がったまま恨めしそうに見てくるつばめに、ツバキは呆れ顔でため息を吐く。

 その横で、「ぬぅ……」とうめき声を上げながらも立ち上がったかのんは、ゆっくりとつばめに近寄って手を差し出した。


「二度目」

「あはは、そうだね。初めて会った日も、こうしてぶつかったんだよね」

「痛かった」

「私も痛かった」


 言いながらもかのんは笑い、そんなかのんの手を取ってつばめは立ち上がる。

 その後ろからあゆみとひなも合流し、「……なにがあったの?」と、あゆみはツバキに状況を訊いていた。

 しかし、ツバキもまた「よく分からないわ」と、肩をすくめてみせるのだった。


「カノン、提案がある」

「ん? なに?」

「雪だるまを作ろう。道のわきに」

「雪だるま! 楽しそう!」


 三人をよそに始まった謎の展開に、ツバキが慌てて「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?」と盛り上がる二人の間に割って入る。

 そんなツバキに驚きつつ、「ツバキもやる?」とつばめはマイペースに訊いていた。


「いや、待ちなさいよ。私達は一年生の代表で、本番前の最終確認とか色々あるでしょう!?」

「それは、そうだよね……」

「……ツバキ。今日はクリスマス。クリスマスは楽しいもの」

「いや、そういうことじゃなくて……」


 ツバキの言葉で勢いが弱まったかのんを見て、普段は物静かなつばめがツバキへと食ってかかる。

 その圧があまりにも強くて、ツバキは最終的に「ああもう、分かったわよ」と、折れてしまうのだった。

 ただ、ツバキはやはりツバキなのだ。

 折れるだけではなく、しっかりと「早く終わらせて、後で合わせはするから」と、背を向けるのだった。


「カノン、行こう」

「えっ、いいの?」

「かのんちゃん。行こう」

「はい~。みんなで作るのです~」


 いつもなら率先して駆け出すかのんに、つばめが手を差し出して、あゆみ達が背中を押す。

 三人だけではなく、ツバキもまたかのんが少しだけしょんぼりしていることには、気付いていたのだ。

 だからこそ、ああも簡単に折れてくれていた。


「うん! いっぱい作ろう!」


 だからこそ、かのんが楽しそうに笑ったことで、三人は本当にホッとしたのだった。


☆☆☆


 あれから一時間半ほどかけて、正門から会場までの道わきに雪だるまを作りまくった五人は、大急ぎで最後の確認を行って、ステージの裏へとやって来ていた。

 作った数は数えるのも面倒になるほどに沢山で、大きさもまたそれぞれの個性が溢れていた。

 ちなみに、かのんの作った雪だるまは大きすぎたため、頭が上に乗らず……“横たわった雪だるま”という謎のオブジェになっていたりする。


「お客さん、たくさん来てたね!」

「ええ。アリシアさんも来てるらしいわ」

「自分のミューズのステージだもん。もちろん見にくるよね!」


 ニシシと笑うかのんに、ツバキも笑い返し、スッと真剣な表情へと戻す。

 そんなツバキに向けて、つばめが拳を突き出し……その拳にツバキも拳をぶつけた。

 相変わらず、ステージの上で戦う気らしい。


「もう……。ツバキさんもつばめさんも、あんまり熱くなり過ぎないようにしてくださいね?」

「はい~。せっかく五人一緒のステージなのです~。楽しくやりましょ~」

「え、ええ。もちろん。分かってるわ」

「……私も」


 そんな二人をあゆみが諫めて、ひなが楽しそうに笑う。

 ちょっとだけクールダウンしたツバキ達もまた、苦笑がちに笑い、全員揃ってかのんへと視線を向けた。

 そして、ツバキがなにかを期待するように「ほら、かのん」と声をかけるのだった。


「そろそろ出番。カノン」

「かのんちゃん」

「かのんさん~」

「……えっと、うん」


 みんなに名前を呼ばれて、かのんは照れつつもツバキとつばめへと手を伸ばす。

 二人はかのんの手をギュッと握り、空いた手をあゆみとひなへと伸ばし、五人で繋がる円を作った。

 それを見て、かのんは何度か深呼吸をして……「思ってたホワイトクリスマスとは少し違うけど」と、口を開いた。


「みんなで雪だるまを作って、今までとまるで違うクリスマスになった。ありがとう、つばめちゃん」

「うん。カノンは楽しそうにしてるのが、一番」

「えへへ、そうかな。……えっと、特別な日に、こんな特別なことが起きて……もっとすごく特別な日になる。それって、すごくすごいことだから」


 抽象的すぎる言葉だけれど、繋いだ手から繋がる熱が、言いたいことを分かりやすく伝えてくれているみたいに感じて、かのんはギュッと手に力を込める。

 そんなかのんの気持ちに応えるように、繋がった手もまた、ギュッと握り替えされる。

 それがすごく嬉しくて、かのんは満面の笑みを晒しながら「私は、この気持ちをみんなに感じて欲しい」と言い切った。


「今年のクリスマスは最高だったって、みんなに思ってもらいたいから。……最高のステージにしよう!」

「ええ、もちろん」

「任せて」

「がんばろうね」

「はい~!」


 みんな笑顔で頷いて、かのん達は「おー!」とタイミングよく気合いを入れる。

 そしてすぐにモバスタを取り出し、全員同時にセットするのだった。


☆★☆綺羅星学園クリスマスフェスタ 一年生代表ステージ -立花かのん・成瀬あゆみ・神城ツバキ・皐月ひな・久世つばめ- ☆★☆


 五人が現れたステージは、輝く夜空の星と、キラキラなイルミネーションの光るクリスマス風景の野外ステージ。

 今はやんでしまった雪も、スタァプログラムの見せるステージの中では、ゆっくりと光を跳ね返しながら舞い踊っていた。

 そんな綺麗な光景の中、かのん達はスッと自らの立ち位置へと移動し……クリスマスソングである“Christmas Party!”に合わせ、パフォーマンスを始めるのだった。


 ――


   うきうき 浮き足立って

   ( So happy day! )

   ワクワクが止まらない

   ( Winter day!)

   まるで羽根が ついたような

   ( Oh wow! )

   軽いリズムで踊っちゃう


   今日の空模様

   少し暗いけど

   ( けどー )

   雪が降る? 夢をみる!

   楽しみが増えていく!


   「みんな、揃った? それじゃーせーのっ!」

   「「「「「メリークリスマス!」」」」」


   とびだすクラッカーの音

   ( Bang! Bang! Bang! )

   はじけるみんなの笑顔

   ( Happy Christmas! )

   ケーキを食べて おしゃべりをして

   みんな みんな たのしもう

   今日は ハッピー

   クリスマス!

 

   (メリーメリークリスマス。ハッピーハッピークリスマス)

   (メリーメリークリスマス。ハッピーハッピークリスマス)


   プレゼントは なにかな?

   リボンをほどいて……「わぁ!」


 ――


☆☆


「ふふっ、かのんちゃん達、とっても楽しそう」

「ああ、そうだね。みんなそれぞれの輝きを増して、入学当初から比べると、大きく成長しているように見えるよ」

「あと三ヶ月……いえ、二ヶ月と少しの時間で、さらに輝きを増してくる。私も負けていられませんね」


 かのん達のステージを見ながら、キセキと学園長は楽しそうに微笑む。

 それは、もうすぐ訪れるこの学園最大のイベント……スタァライトプリンセスカップでの激闘が予想できるからだろう。

 勝っても、負けても、キセキはこの学園を卒業する。

 すなわち……世代交代は必ず起きるということ。


 だからこそキセキは、自らの残せる最後の輝きを最高のモノにするために、その拳をギュッと握りしめたのだった。


☆★☆次回のスタプリ!☆★☆


 クリスマスフェスタも終わり、年末年始のオフに合わせ帰省するアイドル達。

 それはもちろんかのん達も例外ではなく、この年末年始はみんなそれぞれに家族の待つ家へと帰る予定になっていた。

 しかし、ツバキだけは……?


 第三十九話 ―― ゆったり?お正月! ―― 

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