第十話 おとぎ話の少女

「ヨゥ、ベイビー! お前ら三人を学園長が呼んでるぜェ!」


 レッスン室で練習していたかのん、ツバキ、あゆみの三人は、急に飛び込んできたマイク先生に驚きつつ、その言葉に首を傾げた。


「学園長が? なんだろう?」

「さァな! 行きゃわかるぜェ!」


 詳しい用件は知らされてないと、マイク先生がギターをかき鳴らし、笑ってごまかす。

 そんなマイク先生に苦笑しつつ、三人は急いで片付けをしてから、レッスン室を飛び出した。

 三人がすたこらと学園長室にたどりつけば、そこには学園長である天之川光彦と、マイペース少女ひなが待っていた。


「皐月さん? どうしてここに?」

「はい~。みなさんをお待ちしておりました~」

「三人とも、来てくれてありがとう。用件については、私から説明しよう。まずは、これを見てほしい」


 そう言って、学園長は自らの机に置いてあったリモコンを手に取り、ピッと何かのボタンを押した。

 すると、壁際に天井からモニターが下りてくる。

 それを見て、かのんは「おおー! カッコイい!」とはしゃいでいた。


「毎週土曜のこの時間はー! お待ちかね“気になるあの子のルーツを探せ”のコーナーです! 今が旬の芸能人達の、素顔や秘密に迫っちゃうこの番組、今日のターゲットは~」


 下がってきたモニターの中では、男性アナウンサーがお決まりの台詞を言って、番組を進めていた。

 コーナータイトルは“気になるあの子のルーツを探せ”であり、モデルから俳優、アイドルからミュージシャンまで幅広く取り扱うコーナーで、まさに今人気の人物が選ばれる事が多いと、通の間では評判になっているコーナーだったりする。

 ただ、番組映えの関係上、一般家庭や特殊な経歴を持っていない人には声が掛からないらしく……今が旬のCMアイドルであるはずの、かのんには声が掛からなかった。


「この番組、まだやられてたんですね」

「神城君が出演してから、すでに二年は経っているからね。当時とは放送時間も変わってしまっているし、知らなくても仕方がないさ」

「……って、ツバキ出たことあるの!?」

「当たり前じゃない。芸能人一家の神城家長女よ? メディアがこんな面白い題材を放っておくわけがないわ」


 そう、番組映えの関係上、一般家庭や特殊な経歴を持っていない人には声が掛からないが……ツバキの家はその範疇では決してなかった。

 よって、ツバキはしっかりと、このコーナーに登場していたのだった。


「あの時は、まさか我が綺羅星学園に、神城家の息女が入学してくるとは思ってもみなかったよ。いやぁ、てっきりお父さんの後を継いで、役者業に専念する物かと思っていたからね」

「ええ、当時の私は確かにそれもひとつの選択にいれてました。しかし、今の私はご覧の通り……これからもご指導のほど、よろしくお願い致しますわ、学園長先生」

「これはこれは、ハードルを上げてくるねぇ……」


 頭を下げた後、学園長へにっこりと笑いかけるツバキに、かのんは“そういえば、ツバキって凄いお嬢様だったんだよね”と今更なことを思っていた。

 そんな状況から、ひとまず話を戻そうと、学園長が「うぉっほん!」とわざとらしくクシャミをして、「それでだね、君たちを呼んだのは、この番組のことなんだ」と話を進めた。


「そこにいる、皐月君の方にオファーが入ってね」

「そうなの~。ひなのおじいちゃんの家にみんなで行きたいの~」

「と、言うわけだ。どうだろうか?」


 “どうだろうか”と聞かれても、スケジュールの関係とか……と、ツバキが頭を悩ませていると、“そんなの関係無い!”と言わんばかりに、かのんが「行きたい!」と手を挙げた。

 そんなかのんの行動に、ツバキは思わずあゆみと目を合わせてしまい、諦めたような目をしたあゆみと一緒に「私達も行きます。かのんが心配なので」と、手を挙げた。


「ちなみに、スケジュールの方は大丈夫だからね! ちゃんと合う日をお願いしておいたよ」

「すでにそこまで手が回ってたんですね……」


 「みんなでお出かけだー!」とはしゃぐかのんと、それに同調するひなを見ながら、ツバキとあゆみは、大きく溜息を吐く。

 それでも楽しみではあるのか、かのんに「ロケ用の服とか決めるわよ」と笑いかけたのだった。


☆☆☆


 青い空、輝く太陽、そして辺り一面と広がる、緑の大地。

 そんな最高のロケーションで、かのんは「広ーい!」と走り回っていた。


「ほら、かのんー! まずは荷物をひなの家に置きに行くわよー!」

「かのんさん、まるでわんちゃんみたいです~」

「あはは。かのんちゃんらしい」


 かのんが飛び出したあと、送迎のバスからツバキ達が出てくる。

 今日のために何度か顔を合わせていた四人の仲は、すでに気兼ねなく話せる仲へと変化していた。


「えへへ、つい楽しくなっちゃって」

「とか言いつつ、かのんっていつも走ってるじゃない」

「……たしかに!」


 言われて気付いたといわんばかりに、かのんは目を大きく見開いて驚いたような声を出す。

 その仕草に、ツバキもまた驚いた。

 そうして二人がじゃれている間に、あゆみとひなは、荷物を祖父の家へと置いてくるのであった。


「かのんちゃんじゃないけど、ほんと広い牧場だね」

「はい~。みんなのんびりできるようにと~」

「みんな?」

「はい~。牛さん、羊さん、それにわんちゃんです~」


 そう言って笑うひなに、あゆみは「そうなんだ。すごくいい環境だね」と笑い、辺りを見まわすと、動物たちがのんびりと暮らしている姿が、あゆみの目に入る。

 そんな姿に“可愛いなぁ”とあゆみが微笑んでいると、向かっていた祖父の家から「おーい、ひなやーい」と男性の声が聞こえてきた。

 ひなは男性の姿が見えると、少し足早に家へ駆けていき、「おじいちゃん、ただいまです~」と笑いかけた。


「ひな、おかえり。テレビ局の人、もう来ているよ」

「やあ、ひなちゃん。今日はよろしくね。一足先に、牧場の風景を撮らせてもらってたんだ」

「はい~。よろしくおねがいします~」


 ひなの祖父の後ろから、テレビ局の人が数人現れ、ひなへと挨拶をしていた。

 その挨拶がひと段落付いたところで、ひなは後ろを振り返り、「こちらが~、私のお友達のあゆみちゃんです~」と、あゆみを紹介した。


「こ、こんにちわ。成瀬あゆみです。今日はよろしくお願いします」

「おお! “あしたべ”のみきちゃんだね! いつも楽しく見させてもらっているよ。僕はディレクターの山田です、今日はよろしく!」

「あ、はい! ありがとうございます」


 お互いに頭を下げ合い、挨拶を交わした後、山田は「そういえば、あと二人ゲストがいるって聞いてたんだけど……」と辺りを見まわす。

 そんな山田に苦笑しつつ、あゆみは「すみません。あとの二人はたぶんもうすぐ来ると思います」と再度頭を下げた。

 それから五分ほどして、ツバキがかのんの手を引きながら、ひなの祖父の家へとやってきたのだった。


「はーい。それじゃ、カメラ回しまーす」


 全員揃ったこともあり、ついに撮影がスタート。

 とはいえ、今回の撮影は台本なしのオールアドリブであり、ひなが普段どんなことをしているのか、が映ればOKらしい。

 ツバキによると「私の時もそうだったわ」とのことなので、昔からこのスタンスには変わりがないようだ。


「では~、まずみんなに挨拶に行きましょ~」

「牛さん! 羊さん! あと、わんちゃん!」

「こらかのん、はしゃがない」

「だって、楽しみなんだもん!」


 ついさっきまで走り回っていたはずのかのんが、まだまだ元気を有り余らせているのを見て、ひなは“かのんちゃんはやっぱり元気だなぁ”とのんびり笑っていた。

 そんな四人が向かったのは、沢山の牛が飼われている牛舎だった。


「ひなちゃん、ここで何をするの?」

「お手伝いの時は~、いつも牛さんのお乳を絞らせてもらってるの~」

「へえ、面白そうね。かのん、やらせてもらってみたら?」

「いいの!? やってみたい!」


 シュバッと手を挙げて笑うかのんに、ひなは「では~、かのんさんどうぞ~」と牛の近くへかのんを招く。

 そして、「こうやって~」と簡単にレクチャーしてから、かのんにバトンタッチした。


「うひゃー!? すごい元気!」

「かのんさん、上手です~」


 絞る度に、ビシャーッと出てくるミルクに、かのんは楽しそうに声を弾ませる。

 そんなかのんを見ながら、あゆみは“かのんちゃんが絞りすぎないと良いんだけど……”と、牛の心配をしていた。

 しかし、当のかのんはそんなことを思われてるとも知らず、「ツバキー! あゆみちゃんも、やってみてよー! すごいよー!」ととても楽しそうにはしゃいでいた。


「では~、次は羊さんのところに行きます~」

「羊? さっきかのんを追いかけてた時に、外にいたけど……」

「はい~。夏の間は、外でのんびりしてもらっています~」


 そう言って牛舎から出て行くひなを、三人とテレビ局の人が後を追っていく。

 すると、柵で区切られた場所に、十数匹の羊がのんびりと暮らしている場所に辿り着いた。


「ここでは~、いつも放牧のお手伝いをさせていただいてます~」

「放牧のお手伝い? でも、みんな思い思いに動いてる感じね」


 ツバキの言葉に、かのん達が辺りを見まわしてみれば、毛を刈られた後のような羊達がそれぞれに草を食んでいた。

 その状況はまさに自由といった感じで、お手伝いという言葉が全然当てはまらず、首を傾げたかのん達の前で、ひなはポケットから笛を取り出す。

 ひながその笛に口を付け、吹く……が、音が鳴らない。


「およ? ひなちゃん、音出てないよ?」

「かのん、あなたねぇ……。ひな、それ犬笛でしょう?」

「はい~。牧羊犬のわんちゃんを呼ぶための笛です~」


 “なるほど”と、頷いたツバキの横で、かのんは“何が?”と首を傾げる。

 そんなかのんに、あゆみが「かのんちゃん。犬笛っていうのは、犬にしか聞こえない音を出す笛だよ」と苦笑しながら説明していた。

 テレビカメラがそんな微笑ましい状況を撮っていると、遠くからふさふさの毛並みを持つ犬が近づいてきた。


「この子が、うちのわんちゃんです~。チャロちゃんって言います~」

「ふさふさわんこだ。可愛い!」

「へえ、オーストラリアン・シェパードじゃない。まさに牧羊犬って感じね」

「オーストラリアン・シェパード? ツバキさん、犬種が分かるんですか?」


 駆けてきた犬を一目見ただけで犬種を言い当てたツバキにあゆみが驚く。

 そんなあゆみに対して、ツバキは「知り合いが同じ犬種の犬を飼ってるの。だからよ」と、照れたように笑いながら返した。

 もっとも、ツバキ達が話しているのを尻目に、かのんは駆けてきたチャロと「わーい!」と戯れていたりするが。


「ねえ、ひなちゃん。この子と何をするの?」

「チャロちゃんには羊さんを集めてもらうのです~。運動も大事なの~」


 そう言って、ひなはまた笛を吹く。

 するとかのんと戯れていたチャロがスクッと立ち上がり、羊たちの方へと駆けていった。


「おー、すごい! 羊さんがどんどん集まってくる」

「へぇ、すごいじゃない。牧羊犬が羊を集めたり、動かしたりするのはテレビで見たことあるけど、実際に見るとまた少し違うわね」

「うん。かのんちゃんなんて、ずーっとチャロちゃんの方を見て驚いてる」

「だって、すごいよー! あんなにバラバラだった羊さんが、どんどん集まってくるんだよ!」


 鼻息荒く興奮した様子のかのんに苦笑しつつ、あゆみとツバキもまた、集まってくる羊たちに驚きの声を漏らす。

 そうして集まった羊たちだったが、確認のために数を数えていたひなが「あら~?」と声を上げた。


「ひとり足りないみたいです~」

「えっ!? でも、見えるところにはいないよ?」

「どうしよう、ひな。私達も手分けして探した方が良い?」

「ツバキさん。そうは言っても、チャロちゃんでも見つけられないってことは、全然違うところにいるんじゃないかな?」


 あゆみの言葉に、ツバキは「それは、そうかもしれないわね」と困ったような声を出す。

 そんなツバキ達をみながら、ひなは少し笑って「大丈夫です~。いつものことなので~」とのんびりした声をあげた。


「いつものこと? ひなちゃん、それってどういうこと?」

「羊さんのなかにひとりだけ~、いつも違うところに行っちゃう子がいるのです~」

「なるほど。なら、行き先は分かってるってことね」


 ひなの説明にみんなで胸をなで下ろす。

 しかし、そんなかのん達を見ながらひなは首を傾げ、「行き先はわからないです~」と零した。

 その言葉に、かのんやツバキはもちろん、あゆみも驚き、「ど、どうしようかのんちゃん」と近くにいたかのんの肩を揺さぶる。


「うーん……、やっぱり私走ってきた方が良いかな?」

「言いながら走り出そうとしない。かのんはここにいて、じゃないと行方不明が一匹から一匹と一人になるわ」

「えー!? 私、ちゃんと帰ってくるよ!」


 駆け出そうとしたかのんの肩をツバキがしっかりと握り止める。

 そんな二人のやりとりに、あゆみは苦笑しつつ、ひなに「どうしようか、ひなちゃん」と聞いていた。


「羊さんはひなに任せてください~」

「ひなちゃんに? 何か策があるの?」

「はい~」


 よく分からず困惑しているかのんにひなは微笑むと、「歌います~」と両手を胸の前で組む。

 そして、唐突に歌い出した。


「ラ~ララ~ラ~、ラ~ラ~」


 広々とした牧場でひなの声が響き渡っていく。

 歌声に羊たちはおろか、付近を飛んでいた鳥たちですら、ひなの傍に集まってくる。

 その光景に、ディレクターの山田さんは大きく頷いて、“すごいが撮れたぞ……!”と拳を握った。


「あ、かのんちゃん見て! あっちから一匹!」

「ホントだ! ひなちゃん、すごい!」

「歌が凄いのは知っていたけど……これほどとはね。燃えてきたじゃない」


 歌声に惹かれて近づいてきた羊を、チャロがしっかりと群れの中に連れてくる。

 それを見届けてから、ひなは歌うのをやめたのだった。


☆☆☆


 あの後、かのん達と花壇を見たり、取れたてのミルクを飲んでみたりと目一杯楽しんで、ついにコーナーの締めである、ひなのステージ撮影へと移っていた。

 もちろん今までの撮影は上手く行っており、いろんな表情を見せるひなに、山田は興奮しっぱなしで、「今回のコーナーは大成功間違いなしだ!」と、ひなだけでなく、かのん達にも感謝の言葉を述べていたりもする。


(かのんさん。それにツバキさんとあゆみさんも、今日はとても楽しかったです~)


 みんなとの撮影を思い出して、ひなはひとり楽しそうに微笑む。

 人とリズムが違うひなは、友達ができてもうまく馴染めず、結局いつも一人で花や動物と戯れて生きてきた。

 けれど、今日は違う……いや、今日までもずっと違った。


(これも、かのんさんと出会えたから。かのんさん、ありがとう~)


 だからこそ、今日のステージは良い物にして、みんなにお返ししたい。

 そう思ったひなは、手に持ったモバスタに視線を落とし、画面に映されているドレス……小さな花の可憐さを最大限に表現した“リトルサンライトコーデ”に気持ちを込めていく。

 “リトルサンライトコーデ”はブランド“4leaf Clover”のメインカラーである白を基調とした、ふんわり柔らかなドレスで、ベルスカートにレースをあしらうなど、全体的に可愛らしいイメージを持っていた。


 そんなドレスに、ひなは大草原イメージのステージを登録し、モバスタを機器にセット。


「ひなの願いは歌にして」


 心の底から願いを込め、ひなは開かれたゲートへと入っていく。

 自らの歌に、全てを託して。


☆★☆“気になるあの子のルーツを探せ”用ステージ -皐月ひな- ☆★☆


 ステージへと現れたひなは、踏みなれた草原の感触に少し安心し、にっこりと笑った。

 今回のステージは撮影なため、観客は非常に少ない。

 しかし、かのん達やお爺ちゃんなど、ひなにとっての大切な人達が、ひなのステージを楽しみに待ってくれていた。


 みんなに向けて感謝を伝えるためにも、ひなは“全力で歌おう”と心に気合いを入れる。

 そんなひなの気合いを感じたのか、ついに曲が流れ始めた。

 優しいメロディながら、芯を持った女の子のバラード“箱庭の夢”を。


 ――


   ねぇ、夢をみていたの

   ずっと、楽しく笑いあう夢を

   私は願うの

   ずっと、ずっとこのままで


   ああ、目が覚めるとすぐに気付く

   あのころの夢と

   思い出の中の情景と

   愛しくて大事な日々


   戻ることは できないから

   代わりに祈る この先に

   またいつか あえるといいな

   あの日の 私に


   ねぇ、夢をみていたの

   ずっと 楽しく笑いあう夢を

   いつだって 願ってる

   あの日の想いは消えないで、と


   ねぇ、夢を見ていたの

   ずっと 私の未来だって

   いつの日か、辿りつく


   あの日の輝きに

   いつか届く日を


 ――


☆☆


「ひなちゃんの声って、なんだか不思議と安心する声だよね」

「うん。かのんちゃんも落ち着かせちゃう声なのは、少し驚いちゃう」

「それは言えてるわね。かのんのために、後で録音させてもらおうかしら」


 なかなか容赦のないあゆみとツバキに、かのんは少し頬を膨らませるが、ひなのステージにすぐ頬を緩ませる。

 ステージ上では、決して派手ではないものの、見て聞いてをしているだけで、心が洗われるような……そんなステージが行われていた。


(でも、歌の点数だけで入学試験の合格を決めたっていうのも、やっぱり頷けるレベルね。歌唱力だけで見れば、学年どころか、学園でもトップクラスじゃない)


 ひなの世界に魅了されているかのんやあゆみとは違い、ツバキは一人真剣な目でひなのステージを見ていた。

 今でこそ自分や友人、そしてファンの為に歌えるようになったとはいえ、ツバキにとって、負けているというのはやはり悔しいものだったのだ。

 だからこそ、ツバキは真剣にひなのステージを見て、自分とのレベルの差をしっかりと認識しようとしていた。


☆★☆


「ひなちゃーん! 最高だったよ! すごく良い画が撮れたよ!」


 ステージが終わった直後、山田がひなへと熱い賛辞を送る。

 そんな山田にひなは「ありがとうございます~」と返し、微笑むと、かのん達の方へ「どうでしたか~?」と聞いてきた。


「うん、すっごく良かった! 癒やされる~って感じだったよー!」

「わたしもかのんちゃんと一緒かな。ひなちゃんの世界に見惚れちゃった」

「ありがとうございます~」


 にこやかに感想を言う二人に、ひなも満面の笑みで返し、何も言わないツバキの方へと振り向く。

 ツバキはそんなひなの目をしっかりと見つめて、「凄い良いステージだったわ。でも、私は負けないから」と言い切った。


「ありがとうございます~。でも、勝ち負けはよく分からないのです~」

「ええ、その通りね。でも、これは私の心の問題だから」

「わかりました~。でしたら、ひなもがんばります~」


 ひなののんびりとした返事に、ツバキは「ええ。受けて立つわ」と気合いを入れる。

 そんな二人のやりとりを、カメラもしっかりと捉えており、山田は「いいぞ! 熱い! 熱いアイドル達のやり取り! いいぞ!」とテンションを上げていた。


☆★☆次回のスタプリ!☆★☆


 ひなと出会い、友達として、そしてライバルとしても切磋琢磨していくかのん達。

 そんなとき、ドラマ“あしたべ”で役者としての才能を発揮したあゆみに、次なるドラマのオファーが飛び込んできた。

 しかし今度の役は、またひと味違った役で……。

 

 第十一話 ―― 演じられない役者 ――

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