第一部 勇太side⑥ 途中の村
それからしばらく旅は順調だった。
道中はサラさんとしりとりやらマジカルバナナをして遊んでたし、泊まらせてもらった村でも、相変わらずオーバーに歓迎してもらいゆっくり休むことができた。
お陰様で冒険開始4日目の今日もそんなに疲れが溜まってない状態で元気に歩くことが出来てる。
いやまぁサラさん程じゃないけど。早朝から元気な彼女は、見てるだけで割と楽しい。連想ゲーム・マジカルバナナで単語が出てこなくてジャンプしながら歩くくらいには元気が良い。俺も若い頃はこうだったのだろうか。まだ高校一年だけどな。
「今日は早めに宿泊予定の村に着く予定です!あと20分程で着くと思いますよ!」
彼女の言う通り20分程歩くと大きな門が見えてきた。巨◯兵門番は最初の村だけのようだ。なんか村長さんの能力で作った土の人形とやら、らしい。異世界って感じだな。
他の村は一般サイズの人間さんが門番をしている。この村も同様で普通の人間の門番さんに通してもらい俺たちは村に入った。
その村は並んでいる家などは今までと同じ小さめの木の家だったが1つ他の村と違うのが、村の奥の方に教会があることだ。白い壁で屋根みたいなものの下には大きな鐘が吊り下がっている。いわゆる教会といった建物だな。今日は暫く時間もあるようだし後で軽く見に行ってみるのもいいかもな。
相変わらず村人さんにモテモテな俺は5人くらいの村人さん達に付き添われながら宿屋へ行った。宿屋は教会のすぐ近くだった。近くで見ると教会は結構大きめのサイズだった。
とりあえず荷物を部屋に置き、サラさんに声を掛ける。因みに今回もサラさんは別の部屋だ。いや同じ部屋でも困るけどもちょっと気にはなるぁないならないですはい!
「俺ちょっと近くの教会覗いてきますね。」
「教会ですか……分かりました?いってらっしゃいませ?」
今までもあまり村の中で何かを見ると言うことが無かったからサラさんを少し戸惑わせてしまったかもしれない。俺にとっても新鮮なことではある。よし、一応早めに休みたくもあるしパッていってこよう!
熱い瞳達にも慣れたもので、特に気にせずに教会へ向かう。気にしないといっても女性からの視線なら見つめ返すようにはしてるけどな。
白塗りの壁は綺麗で木で出来た扉はシンプルだが美しい紋様が施されている。鍵はかかっていないようなのでそのまま扉を開けて中に入る。
するとそこには……眼帯を付けた銀髪の青年がいた。彼は細長い木の棒を掲げるようにしながら持ち、少し驚いたようにこちらを見ている。
人が入ってくるとはおもわなかったのだろうか、イケメンなのに口が開いて間抜けづらになっている。ザマァwww
彼は5秒ほど固まった後恐る恐るといった様子で枝を下ろすと、俺に声をかけた。
「貴様は誰だ!ここはこのレオン・スノー様の支配下である!即刻立ち去りたまえ!!」
うん、うわぁ、これはあれだよね?
「なにをぐずぐずとしているんだ!行ったろう即刻立ち去れ!そうでなければこの私に加護を与えし神が貴様に恐ろしい天罰を与えることになるぞ!」
やーこれはあれだ。日本人の99%が発病するという中二病というやつではないだろうか?銀髪、長髪、眼帯。
「ふん。言葉には屈さぬか……貴様、名を名乗れ!」
「あ、どうも田中勇太ですぅ。」
ですぅってなんだよ気持ち悪い。
「ユータとやら。貴様、私の忠告を聞かないとは……覚悟はできてるのであろうなぁ!?」
覚悟ってなんだよ……って待てここは異世界だった!
この重度の中二病発病者が本当に危険な能力を持っているかも分からない。ちょっと不味いのか?どうしよう……
「いくぞっ!!」
中二君がこちらに突進してくる。避けようと思ったとき、彼は急に足を踏み切って飛び上がった。ただのジャンプかと思ったが滞空時間が長い。ずっと宙に留まっている。そう、中二が宙に留まっているんだ!
くだらない駄洒落は置いといて、此奴は多分空を飛ぶとか空中に滞在するとかそういう系の能力だろう。今のところそんなに攻撃力とかは高くなさそうだが彼は俺に何をするつもりなんだ?
「フッ。この私の能力に恐れを成したか!だがまだまだこれからだ!」
彼 はさらに上昇すると俺の頭の上に大量の落ち葉を落とし始めた。あ、待って微妙にヤダ!ちょっとチクチクするし服の中とかに入るし目は開けられないし結構散々だ。ねぇ本当にやめて!嫌だって!んもう!ちょっとぉやめてって言ってるでしょぉお!?
咄嗟に俺は手を伸ばして彼の足首を掴む。すると彼はそのまま地面に落下した。
そうだ俺無能力だった。
これは、無効化したってことか?よかった能力が無い人じゃなくて。かなり気にしてたんだよな。
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