第67話やっぱり家族会議でした3


正直、本格的に剣術やら体術を教えていくという条件はあるとはいえ、まさか反対されることもなくさらっとシロと関わることを許してもらえた事はありがたかった。


シロはシロで今までずっと不安だったのだろう。

グラムの言葉を聞いた瞬間にすごい大泣きをし始めた。


所々、しゃべっていた事を繋げると。母と父が自分のせいで死んだと言われ続けた事。自分のせいでハイエルフもダークエルフも仲が悪くなっていた事。エルフの国ではどこに行っても邪険に扱われていたこと。ここ、アブでも大人の悪意には露骨に晒されなかったのでマシではあったのだろうが。誰も関わろうとしない、関わっても子供たちの敵やマトの様な物だった事。


生まれてからずっと、悪意の中で生きてきたと、泣いている時の愚痴のような、叫びのような心の咆哮ともとれる不安の塊を吐き出していた様であった。


一通り吐き出して、それを聞いて一緒に涙を流したり、涙を流さないまでも、目元を濡らしていたりとそれぞれの反応ではあったものの、ここには、シロを邪険にする様な意見や考えは存在していなかった。


少なくとも、昨日までのひとりぼっちのシロではなく、シロの事を大切に思う人達のグループができたと言って差し支えなかった、子供達だけのなんの力も無い状態ではなく、大人達の力も借りれるこの状態はきっとシロの今後を大きく変える日になるだろうと感じた。


あ、別にそんなことを考えていたら元の世界の年齢を足すと、20代後半の大の大人の自分が釣られて大泣きとか、よく分からない感情に涙が止まらなくなったりなんてなっていない。

(すごく喉が痛いし声もガラガラだ、目も擦り過ぎて痛い、持っていた布がびしゃびしゃで冷たくなっていた、拭いていた最中は少し暖かいかなって思っていたのに)


この子は、自分に課せられた謂れもない罪、偏見、差別。悪意。全てに対して真っ向から挑もうとしているのかなと思うと。そこに、自分がいる場違いさが何とも言えなかった。


何はともあれシロと一緒に居て良いのだから、とにかく自分を守る事、皆んなを守れるようになる事、今まで以上に自分を鍛え上げるてやるとやる気が止まらなくなっていた。

より良い未来を手に入れる為に、真っ向から勝負するのだ。

相手が、世界が、ルールが、常識が、時代が、陰湿に、姑息に。理不尽にどの様にきたとしても、最後に笑うのは僕たちで、後にも先にもこんな悲しいお話は世界からなくなる。

いや、それはシロに失礼か・・。

シロの呪いは解けたのだ。呪いが解けたのだから、後は素敵な魔法に掛かるだけとは誰の言葉だっただろうか?


まさにこの世界にぴったりだと思ったと共に、シロにとってもぴったりの言葉になるようにしたいと感じた、泣き疲れた夜だった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る