第61話そんなこんなで・・


結局自分の下位劣化版ヒールでさっき付けられていたであろう新しい傷だけは治して、なんとかついてきてもらう事には成功した。


一瞬だけ光を取り戻したと思った目は結局あれからは目の光は戻ってしまっていた。心に負った傷を治す事自体は実際はほぼ不可能であくまでも目立たなくしたり、向き合える様になったりと、その事自体が消える事は無い、この子がどれぐらいの歳なのかよく分からないが、もうそういうものを背負って生きていくのだなと思うと。いても立ってもいられなくなったのだと思いながら。


黙ってついてくるシロを時々見ながら、自分の家が見えてきたので、こう声かけをした。

「家で水とかお湯とか用意してくるからゆっくり来てね」

と伝えかけ出す。


途中振り返るとそれでもゆっくりと歩いて向かってくれてい他ので問題はないだろう。

家のドアを開けてただいまと大きな声で挨拶をしてミーアさんにお湯の準備をしてもらった。

「ハーフエルフの子が泥んこで、お湯と水が必要なんだけど・・後拭くものと服も」と伝えると、一瞬考えるような、訝しむ様な、そんな仕草をした後にわかったわ〜用意するね〜と言いながら準備を始めてくれた。


ミーアさんのあの一瞬の顔の表情の変化が何だったのか分からなかったが、その事は後回しで自分は服を洗う為のオケなんかを用意する事にした。


あの子の着ている服は上下を一枚で覆える様な物一枚だけだったのでまあいちばん小さい直径30cmくらいのオケでも大丈夫だろうと思いそれを取ってくる。


オケを持って家を出ると後4〜5mくらいのところまで来ていたので、タイミングはバッチリであった。


シロを水浴びの場所に案内するとミーアさんとニーアが来ており

「ニーアも水浴びる!!」と、喜んでいた。


ミーアさんはシロの方を見てやはり一瞬険しい表情になったのだが、それを切り替えて水浴びの準備を進めてくれた。

自分はシロの服を洗うよと伝えて、服を持ってきてもらっていいかとニーアに言うと、首を縦に振りまくっていた。


水浴び場から井戸の方に移ってオケに水を組むために滑車を操作していると、一杯目が組み終わる頃にニーアが服を持って来てくれた。

ありがとうと伝え、さてこの頑固な汚れどこまで落とせるかななんて考えながら2杯目の水を組み始めた。

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