橘さんはカレシに襲って欲しい
俺と琴花ちゃんが訪問者はその訪問者を招き入れ、さっきの長机に座ってもらい、その対面に俺と琴花ちゃんが座った後。
その訪問者はどこかおどおどしながら口を開けた。
「あのっ……!は、初めまして……二年の橘って言います……」
「初めまして。同じく二年の髙浪湊です」
「初めまして。一年の笹倉琴花です」
橘さんに続き、俺と琴花ちゃんも軽い自己紹介をする。
あとこれは完全に余談なのだが、橘さんめっちゃおっぱいでか――
「痛っ!」
「えっえっ急にどうされたんですか……!」
「大丈夫です安心してくださいこちらのことですから」
隣に琴花ちゃんが太ももを抓ってきたのだ。
本当に痛かった……。
「センパイが変な事を考えるからですよっ?」
「はい、すいませんでした」
「反省してください」
俺をジト目で見つめてから、橘さんに向き直る琴花ちゃん。
「それで、相談とはなんでしょうか?」
「はいっ!えっとですね、実は私こう見えてカレシがいるんですよっ」
少し照れながら、えへへ~とはにかむ橘さん。
……え、なに?今からカップルの惚気話でも聞かされるのか俺?
まさかこの子、カノジョが欲しい俺を煽りに来たのか新手の罵倒使いかっ!
そうだとしたら全力で追い返すぞこのクソリア充めがっ。
「そのカレシさんとやらとなにか?」
「いや特には変わったことはないんです。普通に仲良いですし」
「ほう」
「まぁそこが問題っていうか……」
眉をひそめ、少し俯き口をつむぐ橘さん。
最初は破局の危機とかそういうのを予想していたが、この感じだとそうではないらしい。
じゃあ、橘さんはそのカレシにどんな悩みを抱いているのだろうか。
そんなことを考えてると、橘さんは少しモジモジしながら口を開いた。
「そのカレシとは中学校の頃からお付き合いを始めて、もう三年近く経つんですけど――」
「そのー……まだ一度もえっちをしたことがなくて……」
うん、追い出そうこのクソビッチリア充めがっ。
「このクソビッチリア充めがっ」
「くそびっち……?」
「センパイ心の声出ちゃってますよっ」
琴花ちゃんに小声で指摘されて、俺は慌てて口に手を抑える。
いやぁこれは失敬失敬。妬み過ぎてつい出ちゃったよ。
琴花ちゃんがコホンと、咳ばらいをする。
「えっと、どうして橘さんはえっちをしてないことが悩みなんですか?」
「それはですね……私さっき、特に変わったことはないって言ったと思うんですけど、最近、本当になにも起きなくて……ネットで調べたら、普通は付き合ってから三か月くらいで皆えっちをしてるらしいんですけど、私達はまだで……」
「あー、なるほど。倦怠期かもしれないと思ったってことですか?」
「そっそういうことです!言葉足らずですみません……」
さすがは琴花ちゃん。相手が言わんとしていることをすぐに読み取った。
素直に凄いなと思う。
「私的にはえっちとかしても良いんですけど、彼、全然求めてくれなくて……私結構奥手なんで言いづらいですし、行動にも移せなくて……」
「まぁでも基本そうなんじゃない?普通は、男からそういうのって求めるもんだと思うし」
「そうでもないですよ――……あっなんでもないですっ」
「え?」
ぷいってそっぽを向く琴花ちゃん。え、なになに急に?
今の言い方だとまるで琴花ちゃんが誰かを求めているみたいな感じ――
「痛っ!!!」
「今度はどうされたんですか……!」
「今すぐさっきの言葉を忘れてくださいっ!無理ならセンパイまるごと消し去りますよっ!」
「分かった分かった忘れるからっ!」
琴花ちゃんがげしげしと足で脛を蹴ってきたのだ。
痛過ぎて失神するかと思った……。
「とっとにかく、橘さんの悩みはカレシさんに求められないってことですねっ」
「あっはいそうです!彼に襲って欲しいというか……」
「わ、分かりました。その悩み、私達が解決しますっ」
「本当ですかっ!ありがとうございますっ!」
まぁ悩みを解決するっていう部活だから引き受けるのは良いんだけど。
この悩み、恋愛経験のない俺と琴花ちゃんが、果たして解決出来るのだろうか……。
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