変態男子は訪問者が欲しい
トイレから帰ってきた琴花ちゃんと向かい合うように長机に座ってから。
俺はコホンと一つ咳ばらいをしてから、話を始める。
「琴花ちゃん、この部活は今もの凄くピンチだ」
「そうですよね。私もうすうす気づいていました」
ここお悩み相談部は、日常生活の中で起こるありとあらゆる悩み事を相談して貰い、それを解決するというのを活動方針としてやっている。
だけど、新学期が始まってから未だに誰も訪問者が来ていないのだ。
「このままだと、部活存続の危機だ」
「現状、活動してないも同然ですからね」
「どうして誰も来ないんだろう」
「センパイがキモイからですよ」
「うん、センパイそろそろメンタル壊れそうだよ」
「でもセンパイはヘンタイなので、心のどこかで罵られることに快感を覚えてるんじゃないんですか?」
「琴花ちゃんって俺のこと一体どんな目で見てるのさっ!」
まぁでも正直悪くないかなって思うよ。
っていうか個人的にはこう、凄く純粋そうな子からヘンタイって言われる方がゾクゾクしちゃうなっ。皆もそう思わない?
「もうどうしようもないヘン……変質者ですね」
「なんか変質者っていうのも新鮮で良いねっ。えへへ~」
「……」
俺が悪かったからそのゴミを見るような視線やめて欲しいなせっかくの綺麗な顔が台無しだよ!
「センパイに褒められても全然嬉しくないですね」
「ちょっさっきから思ってたけどさ、なんで当然のように俺の思考読んでるのっ?」
「センパイが分かりやす過ぎるんですよ」
おっぱい。
「最低ですね」
「ごめん、ちょっと出来心で試したくなっちゃって……」
「最低ですね」
「そっそんなことよりさ!どうしたら来てくれるかなっ?」
「最低ですね」
「脳死していらっしゃるっ!?」
あぁどうしよう。我らが琴花ちゃんがただの罵倒マシーンになっちゃったっ!
まぁでも、俺的にはこれはこれでアリ――
「ナシに決まってます。というか良い加減話合いをしましょう」
目を細めて、明らかに不機嫌そうに吐き捨てる琴花ちゃん。そろそろちゃんと考えないと……
俺は琴花ちゃんから少し視線を逸らし、考えこむ。
人を集めるには、呼びかけとかが一番有効になると思う。
しかし、ここは悩み相談をする場だ。俺らが呼び込んで悩みを話して貰うっていうのは少し違うと思う。こう自発的にっていうのが大事だと思うから。
だとしたら本当にどうするべきなのだろう――
「あっそうだ!」
「なんですか?」
「ほら、琴花ちゃんってかわいいじゃん?」
「はっ、きゅ急になに言ってるんですかっ!」
顔を真っ赤に染めて、俺の方にグイっと近づいてくる琴花ちゃん。
うーん……なんか俺またまずいこと言ったっけ?
「いっいや、本当に本心からそう思ってるよ……?」
「ふーん……そっそうですか」
ぷいっとそっぽを向く琴花ちゃん。
……いつもそうなんだけど、たまに本気で琴花ちゃんがなにを考えてるか分からなくなる時がある。今みたいに。
あーあ、俺も琴花ちゃんの心を読んでみたいなってつ、くづくそう思うね。
「それは絶対ダメです……されたら困ります……」
「え?今なんて?」
「なっなんでもないですよっ。そんなことより、早く続きを聞かせて下さいっ」
「あっうん。えっとね、琴花ちゃんせっかくかわいいんだから、なにかコスプレして看板娘として立ってくれたら――」
「却下です。それセンパイが私のコスプレ姿見たいだけですよねその思考回路が汚いですねしんでください」
「なんかいつもより罵りにトゲがあるよっ!」
「あの~……すいません……」
突然、扉の方から余所余所しい声が聞こえてきた。
俺と琴花ちゃんはいっせいにそちらの方に顔を
向ける。
「ご相談があるんですけど……良いですか?」
訪問者がやって来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます