変態男子はカノジョが欲しい

しろき ようと。(くてん)

変態男子はカノジョが欲しい

 カノジョが欲しいっ!



 世の男子高校生なら誰もが皆、一度はこう思ったことがあるだろう。


 それは俺――髙浪湊たかなみみなとも、勿論例外ではない。

 毎日寝る前にカノジョが出来ますようにと神に祈り、毎日恋愛成就のお守りを持ち歩き、毎日カノジョの妄想をしている。

 それほどまでカノジョが出来ることを望んでいるっ!



 だけども、世は非常なり。

 カノジョを作れるのはいつも高スペックな男ばかりだ。

 俺みたいなルックスも知能も運動神経も平凡なやつには、どうやらカノジョを手に入れるという権利はないらしい。ってかまずまともにお話することすらしてくれなおいよね。あぁ悲しきかな。




 そんなことを考えながら、俺は部室の窓から外を歩くカップルを眺めて、一つ溜息を溢す。



「あーあ、俺もカノジョ欲しいなぁー」


「寝言は寝て言ってください、センパイ」


「うん、さらっと辛辣だね琴花ちゃん。普通に傷つくからやめてくれるかな?」



 本を読みながら淡々と話すこの子は笹倉琴花ささくらことかちゃん。

 うちの部活で俺以外の唯一の部員であり、読書が好きな後輩だ。



「だってセンパイはヘンタイなので多分無理です。あとちゃんづけやめてください」


「おぉ、センパイとヘンタイってなんか語呂が良いね。世紀の大発見だっ」


「なにいってるんですか」



 うーん、自分でも本当になに言ってるか分かんないや。



「大体、センパイはどうしてそんなにカノジョさんが欲しいんですか」



 そう言われて、僕は少し悩む。

 なんて言うんだろう、こうカップルらしいことに憧れがあるからかな。

 手を繋いでデートしたり、甘い甘いキスをしたり。

 良いよねそういう甘々な恋愛って!まぁ妄想しかしたことないけど。




 あとは――おっぱいを揉みたいからかな?




 一生に一度だけで良いからあの、ふよふよのたわわに触れてみたいだ――あっでも欲を言うならば小さいのと大きいのの揉み比べをしてみたいから二度揉みたいね。


 だけど、恋愛関係にない人のおっぱいを揉むのは犯罪行為だからね。だからカノジョを作りたいんだ。カノジョのおっぱいを揉むのはOKだからねっ。



「センパイ、多分今すっっっごい不潔なこと考えてますよね」


「そっそんなことないよまったく」



 もうとにかくおっぱい揉みたいし、どうしてもおっぱい揉みたいし、なにがなんでもおっぱい揉みたい。おっぱいおっぱい。



「じゃあ、センパイはカノジョさんになにを求めてるんです――」


「おっぱい揉みたいっ!……あ」


「ほらやっぱり不潔なこと考えてるじゃないですか。顔でバレバレなんですよ」



 はぁ……と呆れる琴花ちゃん。なんかごめんね?



「ごめんで済んだら警察はいらないです。あと、恋愛関係にない女の子にそういうこと言うのも犯罪ですよ?センパイ」


「許してください琴花ちゃんほらこの通りお願いっ!」



 俺は慌てて土下座をする。



「土下座の形が好みじゃないのでゆるしません」


「めっちゃ理不尽!」



 というか、土下座に好みの形とかあるのっ?



「まったくもう……センパイが変な話するから、本どこまで読んだか分からなくなっちゃったじゃないですか」


「反省しております……」


「ちゃんと反省してくださいね?」



 そう告げて、席を立つ琴花ちゃん。



「どうかしたの?」


「少し、お手洗いに行ってきます」


「分かった。じゃあ帰って来てから予定してた話し合いをしよっか」



 そう返事すると、琴花ちゃんは教室を出ていった。

 段々と、トコトコという足音が遠ざかっていく。



 俺は静かになった教室をぼんやりと眺めて、小さく呟いた。



「あーあ、今度こそ琴花ちゃんに嫌われちゃったかなー……」














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