真っ黒羊のリベルテ

夜明け前に帰る

 ここは人工洞窟の中。俺の隣で白髪の少年が寝ている。少年の名前はムートン、群れに帰らなかった羊。


「これ美味しいよ……リベルテも……」


「夢ん中で何食ってんやら」


 今は深夜、ムートンの眠りは深い。出会った当初は、俺に寝顔を見せなかった。


「図太くなったな。誰に似たんだ?」


 俺はムートンの頭を撫でる。柔らかな毛が心地いい。こうやって、撫でることができるのは、寝てる時だけになった。


「ほらほらぁ。撫でられちまってるぜ」


 俺が調子にのって撫でまくっていると、俺の手が払いのけられる。あぶね、起こしちまうとこだった。


 なんだか今日は眠れない。こういう夜は、散歩するに限る。俺はメモを書いて、ムートンの近くにおいた。

 

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