第9話 大津への旅路

太陽に熱せられた外から逃げるように冷えた電車に乗り込む。今日は5月にしては暑く、朝の天気予報では今年1番の暑さになると予報が出ていた。

岐阜から大津まで電車で行き、そこからはバスで移動するらしい。

「席どうする?」

向かい合うタイプの席なので、男女で別れるのが妥当だろう。幸い電車内は空いていたので、楽に座ることが出来た。

「俺さ、琵琶湖言ったのって小学校の頃が最後なんやてー。そやでほとんど覚えてないんよ。お前らはいつが最後なん?」

翔太郎がだらけきった口調と姿勢で口を開く。

「俺は中2の遠足で言ったなぁ」

「まだ2年前だろ。遠い目で語る事じゃありません」

「良太は2年も前の事を覚えてるなんてえらいなぁ」

「優太ー? 大丈夫? ボケちゃった?」

「ワシももう永くないじゃろう。アホ息子の爽のことは任せたぞ…」

「よっしゃ任せろ!」

「俺優太の息子なの?そんで翔太郎にだけは任されたくないんだけど?」

「後半は分かるわ」

翔太郎は気にしずにスナック菓子を食べている。

「お、ポテチじゃん。ちょっとちょうだい」

「1枚10円な?」

払えそうな値段持ってくるなよ。1万円とか言えばネタで済ませれるのにほんとに払わなきゃ行けなさそうになるだろ。

「まぁいいや。もーらい!」

「あ、おい10円よこせ!」

良太と翔太郎がじゃれあっているとどうしてもうるさくなるのはなんでだろうか。性格か。

窓の外をふと見ると、岐阜らしい田んぼの景色が広がっている。岐阜では山が見えるのは当たり前だが、都会の人は山に感動するらしい。よし、勝った。田舎は都会よりつよい。

なんの勝負だよ。


しばらくすると皆疲れたのか男子も女子も眠ってしまった。

通路を挟んで反対側、つまり女子側でも起きているのは1番俺に近い席に座っていた海だけだった。1人でぼーっとしていてもつまらないので海に話しかける。

「健康志向のレディは昨日何時に寝たのかナ?」

「いやー、昨日はワクワクしすぎて1時まで碧たちと話してたんだよね」

「遠足前日の小学生かよ」

「ちなみにまだワクワクしているため眠気が来ないだけですぐに寝ると予想されるよー!あ、でもエッチなことはしちゃダメだゾ?」

「したら良太に殺される気がするね」

「私も手加減はしないからね」

海に魅力が無いわけでは全くないが、人の彼女に手を出す趣味とかは無いので安心してほしい。


気がつけば大津まではもうすぐだった。


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