第8話 琵琶湖にいこう!

「おーい! 爽〜! こっちこっち!」

5月2日。

集合時間の30分前、9時半に岐阜駅に着く。一番乗りできたつもりでいたが、碧には先を越されたようだ。待ち合わせの時、碧は必ず誰よりも早く来る。それを見越しての30分前だったが、甘かったようだ。

「 おはよう」

「爽が私の次か〜。最後から2番目だと思ったのにな〜」

碧は、水色の肩が見えるワンピースを着ていた。普段から大人っぽい碧が、一段と大人びて見える。細くてスラリとした足に見とれていたのを悟られないため、全く別の事を聞く。

「じゃあ最後は誰と予想したの?」

「翔太郎」

「なるほどっ」

「碧ちゃんの足の感想は?どう?」

バレてた。ニヤニヤしながらこっち見んな。


まだみんなは来ないので、駅前のコンビニでコーヒーと紅茶を買って碧の元へ行く。

「ほい、紅茶」

「ありがと。 いくらだった?」

「それぐらい奢るって」

むしろここで金を貰ったら男が廃る。

「それで、どこに行くんだ?」

今最も気になっていることを聞く。碧は考えた後、「琵琶湖」とだけ答える。それで持ち物に水着とかもあったのか。

琵琶湖はみんなご存知、滋賀県にある日本一広い湖だ。周囲にはキャンプ場などもあり、釣りをしたり、泳いだりもできるらしい。

今日からの2泊3日に思いを馳せていると、良太と海がバスから降りてきた。

「よっす」

「よっす」

良太の挨拶にオウム返しをすると、碧と海も同じ挨拶をしているのが耳に入った。

良太は白いTシャツにカーキの短パン、緩い胸元にサングラスを引っ掛けている。

海はグレーのパーカーを着ている。サイズが大きいため、下にズボンを履いているのかどうか分からない。べ、べつに見てないもんね!

さらに、良太とお揃いのサングラスをつけている。普通ならばチャラくかんじるかもしれないが、2人がつけるとさわやかに見えるから不思議だ。

続いてやってきたのは優太と優菜。

優太はTシャツの上に袖の短いシャツを羽織っていて、大人っぽい印象。

優菜はふんわりとしたワンピース。黄色い色がよく似合っている。

予想通り翔太郎が最後に来たのだが、まさかのアロハシャツで来たのでみんなで大爆笑してしまった。常に予想の斜め下を突いてくるその姿勢、流石です。

みんなが揃ったところで碧が口を開く。

「よし、行こっか」

それに対し、翔太郎が当然の問いを発する。

「どこに?」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「まだ寝ぼけてるの〜?」

「ごめん、それ優菜にだけは言われたくないかも」

「あおちー酷い!シクシク!」

それ口に出す言葉じゃなくない?

「えっとね、琵琶湖に行きます!」

「琵琶湖って、あの琵琶湖?」

「うん、あの琵琶湖。」

「遠くないの?」

「それがそこまで遠くないんすよ旦那」

そう、実は琵琶湖は結構近いのだ。

岐阜県は中部地方、滋賀県は近畿地方だが、ほんの少しだけ接しているため、ほかの県を経由することなく行くことができる。だからなんだって話だけどね。

「さあ、琵琶湖に向かって〜?」

「...」

「出発進行ー!」

優奈が掛け声をかけるが、反応したのは翔太郎だけだった。

翔太郎、空気をよもう?


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