第5話 騒動
教室に戻ると、室内は異様な空気に包まれていた。
後ろの方で睨み合っているのは脇淵浩介と永田華だ。他の人は、少し離れたところから様子を伺っている。そもそもこの2人は、所謂『チャラい』グループの中心メンバーで、付き合っていることはみんなが知っている。
様子を見るに、痴話喧嘩なのだろう。クラスでも派手な2人だ。周囲も声をかけずらい。
「あのさー、前にも言ったけどさぁ、やっぱり浮気してんじゃないの?」
永田が見るからに怒った様子で切り出す。
「は?してねーし。何勝手に嫉妬してんの?」
「っ!最近調子乗ってんじゃないっ?」
「いや、こっちのセリフだから。」
あーあー、このままだと埒が明かないなぁ。仕方ない。
「はい、ストップー!」
確かこういう時は、下から行かず、上から目線になりすぎないことだったはず。春休みに学んだ事を思い出す。
「2人とも落ち着いて」
隣で碧も加勢してくれる。
「そうだよ〜、2人ともせっかく仲良いんだし、こんなふうに喧嘩してたら勿体ないと思うな〜」
注意すると言うより、諭すという言い方が正しいような碧の口調に2人は毒気を抜かれたような顔をしている。
「まぁ、宮崎がそう言うなら...」
「うんうん、みんな仲良く!」
無事に解決したようで何よりだ。碧の場を収める空気はすごかったな。さすがって感じだ。
飲み物を買いに自販機に行くと、後ろから碧がついてきた。
「頑張ったじゃん」
と声をかけられたので
「ああ、まあね」
と返事をすると、「何買う?」ともう次のことを気にしている。
「三ツ矢サイダーにする」
言ってから気づく。
「自分で買うよ。」
碧は、もう500円玉を自販機に入れ、三ツ矢サイダーのボタンを押していた。
「いいからいいから」
ペットボトルを手渡す時に目が合う。ほんとに綺麗な顔をしてるな。
「ちょ、何?なんか付いてる?」
つい見つめてしまったようだ。
「ごめん、なんでもない」
受け取ると、碧はもう自分の分を買っていた。
三ツ矢サイダーだった。
「おそろいだね」
照れくささから顔を見ることは出来なかったため、碧の耳がほんのり赤く染まっていることに爽が気づくことはなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
短め。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます