第4話屋上での昼食

「今日の授業はここまで」

 スガちゃんが宿題を告げる声を聞きながら、昼食の準備をする。

高校生活が始まり、2週間ほど過ぎた。みんなが生活に慣れてきた雰囲気である。

「やっと授業終わったぁ!」

 ググッと手を上に伸ばし、リラックスした姿勢をとる良太。

「良太はこのタイミングがいちばん元気だよな」

 後ろからやってきた優太も、心なしか頬が緩んでいる。

「ご飯食べに行こっか」

 とりあえずお腹がすいたので、2人に声をかけて、購買へ向かう。ちなみに翔太郎は弁当である。

「どこで食べる?」前を歩いていた優太が後ろを振り返りながら聞いた。

「教室でよくね?」

 2人とも甘い。

「スガちゃんに頼めば屋上の鍵借りれるってスガちゃん言ってたし、屋上行かない?」

「爽それマジかよ?!」

「ナイス学級委員!」


一旦教室に戻り、みんなも呼ぶことにする。

「みんなで屋上いかね?」

「え、行けるの?」

「スガちゃんに頼めば鍵借りれるらしいよ」

みんな乗り気のようだ。7人でぞろぞろと職員室に向かう。

「スガちゃ...須川先生いますか?」

「おう、星野たちか。どうした?」

屋上で昼食を食べる旨を伝えると、「リア充め...」

とか呟きながらも鍵を渡してくれた。


屋上に着くと穏やかな風が吹いていて、とても気持ちが良かった。

碧が揺れる髪を押さえながら隣に来た。何かを考えている様子で遠くを見ていたので、無言で横顔を見ていると、

「どうしたの?」

と声をかけてきた。

「いや、何を考えてるのかと思って」

と返すと、「爽の事」と、語尾にハートマークが着く勢いでこちらにウインクをしてきた。

やばい絶対顔真っ赤だなんか言わないと、可愛いね?いやそれは違う自爆だええとそうじゃなくて...

あまりの可愛さに混乱していると、明らかににやけ顔の良太と海が近寄ってくる。

「お二人さん、イチャイチャするのもそこまでにしておきなさいや」

そんなにくっついて歩きながらなにをいってるんだこいつは。

「盛大にブーメラン刺さってるけど?」

「俺たちは付き合ってるんだし、別にいいじゃん」

うわ、こいつら開き直りやがった。そうなると難しいから、優太の下へ逃げる。

「優太ー、こいつら見てどう思います?」

「爆ぜればいいと思う」

「良太被告、何か言い分は?」

「付き合ってるからいいと思います。」

「優菜裁判長、判決は?」

「ちょっと待って〜、碧裁判官と、しょーちん裁判官と話し合いまーす」

「爆発刑で」

「俺も賛成!」

「満場一致で爆発刑ですね。執行は爽に任せるね〜」

「異議あり!」

「なんだね海弁護士?異論反論講義質問等受け付けないが?」

「爽の鬼畜〜!」


そんな風に遊びながら昼食をとる。

昼休みの終わり頃には、黒々とした積乱雲が登っていた。


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