第8話

俺は体を無理やり動かす。

だが全身に力が入らない。

熊も、そんな都合よく待ってくれるなんてことはない。

熊が目の前に来た。そしてもう一度腕を上にあげた。

だがその瞬間、信じられない光景が目に入った。

「ドーーン!」

「え!」

凄い轟音と共に、熊の上半身がいきなり無くなった。

そしてそのまま光の粒子となって消えた。

助かったのか?

そう思っていたら誰かが近づいてきた。

「大丈夫かの~」

そう言っていた。

顔は良く見えない。だが老人ぽかった。

そして俺はその人が近づいてきたと同時に、あまりの体の痛さと疲労さで、その場で意識を失ってしまった。



side???

周り一帯には木ばかりはえている。

しかしこの森の中に一つだけ小屋がある。そこには一人の老人が住んでいた。

「何だか森が騒がしいのう」

その老人は森の異変に気づいて杖を持ち、すぐさま小屋を出た。

老人は風のごとく走っている。普通の人が追いつけない程に。

しばらく走ると遠くに赤い熊がなにかに攻撃しているのを見つけた。

その老人は赤い熊がなにを攻撃しているのか気になり、攻撃している所に目をやった。老人は驚いた。真っ白い犬が攻撃されていた。

「いかん!」

老人は犬の出血量を見てあわてて走った。そして、

「トルネード!」

そういった瞬間、目の前に大きな風が発生した。老人は赤い熊めがけて風を放った。すると赤い熊の上半身は跡形もなくなくなった。やがて光の粒子となった事をみて老人は犬に近づいた。

「大丈夫かの~」

そう言ってみたが犬はその後すぐに横に倒れてしまった。

老人はあわてて犬を抱えて、また森の中に入って行った。



「チュン、チュン」

「ん~、何だ?鳥の鳴き声?」

鳥の鳴き声と同時に目覚めた俺は、自分の体サイズのかごに毛布にくるまって寝ていた。傷の部分は包帯が巻かれている。

「ここ、どこだ?」

そして何があったかを思いだそうとする。

「確か、熊のモンスターと戦ってたらいきなり上半身が無くなって、その後誰かが俺を拾っってくれた気がする」

「お!起きたか」

「え?」

その時、誰かの声が聞こえた。

そして俺は声があった方に振り向いた。

その人は部屋のドアの前に立っていた。

見た目は160センチ位の白髪のおじいさんだった。ただ何か神々しかった。

でも助けてもらったみたいだからお礼を言わないと、と思った。

「そ、その助けて頂いてありがとうございます」

そしたらおじいさんはなぜかとても驚いた表情で言ってきた。

「お、お主喋れるんか!」

「は、はい」

とっさに返事してしてしまった。

おじいさんはその後2、3秒固まっていた。

確かに犬が喋るってことはあり得ないと思うけど。

その後、急に老人がきて顔を近づけてきた。

「あ、あのぅ~」

「あ~すまんすまん。喋る犬を始めてみたからのう」

「は、はぁ~」

上手く言葉が出てこなくて困惑していたら、何かに気づいたように

「そういえば自己紹介がまだだったのう」

そう言ってきた。確かに名前を知らないなとめんどくさいな思った。

「わしの名前はベクトルじゃ。そして一応神じゃよ」

「お、俺はリツです‥‥って神ぃ~~?」

恐らく今日一番驚いた。


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