第14話 馬上戦
中天の都まで馬を貸して貰えることになった一行。陽太と姫華は馬に乗るのは初めてだったが、お栄の指導もあって無事に乗りこなせるようになった。
「いやぁ、快適なもんだなぁ馬って奴も」
「ね、今まで徒歩だったのが馬鹿になるぐらい」
「俺は、海外でも、馬をっ、乗りこなしてぇ!?」
言葉とは真逆に馬に暴れられているカラス。
「ふふっ、天童様の馬は大変、妖魔をお嫌いになりますから、それが原因かと」
「笑ってる場合じゃない!?」
カラスが暴れ馬に悪戦苦闘しているのを遠巻きに笑い合う一同、お栄の先導の下、一路、中天の都へと向かう。
山道に差し掛かった時だった。なんとか暴れ馬を御したカラスが警告を飛ばす。
「妖魔の気配だ。それも複数」
呪文を唱え鎧天を纏う陽太。初の馬上戦、手綱を握る手が汗ばむ。
「どこだ……? っそこかっ!?」
道横の茂みを薙ぎ払う陽太。現れたのは黄金の獣だった。
「麒麟!? なんでこんな上級妖魔がこんなとこに?! 龍神の時といいどうなってやがる!」
愚痴をこぼすカラス。陽太はそれを無視して妖魔・麒麟に向かい合う。すると相手はふわりと浮かび上がり陽太の上取る。
「腹が、がら空きだぞ!」
「馬鹿! 雷撃に気を付けろ!」
陽太の剣撃と麒麟の雷霆がかち合ったのはその瞬間だった。衝撃で思わず馬からずり落ちそうになってしまう。
「危ねぇ……!」
ここで考え込む陽太。(どうする一旦、馬を降りるか……?)
しかし間髪入れずに来る雷撃に対処するので精一杯で降りる機会が見つからない。
「陽太!」
その時だった。姫華からの援護射撃、封印の光輪が麒麟を狙う。それを巧みに躱す麒麟、しかしさらにそこにお栄の放った呪符が飛んで来る。今度は麒麟を捉える。
「今だ! 日ノ出・天しょ……うわっ!?」
日ノ出・天昇を放とうとした瞬間、無意識に手綱を手放し体勢を崩す陽太。
そのうちに麒麟は呪符の束縛から逃れてしまう。
「陽太様! 馬を信じ人馬一体となるのです! さすれば勝機が見えます!」
「人馬一体……よし今日からお前の名前は日出丸だ。日出丸、俺を信じて乗せてくれよな……!」
ヒヒンと馬の肯定にも似た鳴き声。それを聞き再び体制を立て直す陽太。
「カラス!」
「えー、ここで俺に頼るのかよ……まあいいけどよぉ」
カラスの幻術、辺りの景色が歪む。きょろきょろと陽太達を探す麒麟。そこで陽太が、自らの馬、日出丸に陽気を纏わせる。ふわりと浮かび上がる日出丸と陽太。麒麟と同じ位置までたどり着く。
「我流……日ノ出・騎馬一閃!」
宙を駆ける日出丸と共に麒麟へと突っ込む陽太、剣を振るう。今度は手綱を離さない。真っ二つに裂ける麒麟。決着は着いた。
「まさか、こんな道中で総力戦をやることになるとはな……」
「俺も戦力に数えられてた事が驚きだよ」
肩をすくめるカラス。陽太は自分でも不思議そうな顔を傾げながら。
「まあでもオラス戦で世話になったのは事実だしな」
「お、ようやく俺の価値に気づいたようで」
「元からお前は魔縁までの道案内だろうが」
「さいで」
そんなやり取りも終え、しばらく何事も無かったかのように進む一行、山を越えるとそこには。
「見えてきました。中天の都です」
お栄が指で少し遠くを指さす、確かにそこには都があった。
「おお、案外、近かったな」
「馬を飛ばして来ましたからね」
こうして一行は中天の都へとたどり着くのだった。
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