第4話出会い

一人で参加するパーティはとても緊張したが、別に何かあったところで死ぬわけではないので、途中からは気楽に考えていた。

 参加者は男女比ほぼ1:1で総勢80人くらいだったと思う。最初は1人3分程度で異性全員と順番に自己紹介を行い、その後フリータイムで気になった異性とお話をして、最後に意中の人の番号を提出し、見事マッチングしたらカップル成立という以前に参加したパーティと同様な流れだった。

 最初の自己紹介の時、2人組で参加していた女性の1人に好感を持ったが、フリータイムでは他の男性がその女性を捕まえていたため、彼女とお話することができなかった。

 フリータイムを無為に過すのは勿体なかったので、たまたま千葉の外房から来ていた女性とお話したりしながら、自分なりに楽しもうとした。

 結局、フリータイムでは意中の女性とお話するという意味では上手く立ち回れなかったので、マッチングなんてできるわけもなく、収穫無しで帰ろうと考えた。

 しかし、どうせならダメ元で、僕が好感を持った女性にパーティ終了後に声をかけて、連絡先だけでも聞こうと思い、会場から彼女が出てくるのを待っていた。

 そして、お目当ての人が出てきたのだが、僕は直ぐには行動を起こすことができず、彼女達の少し後ろを歩きながら心の中で声をかけるかどうか鬩ぎあっていた。

 僕が悩んでいる時、突然後ろから女性に声をかけられた。振り返ると女性が2人居て、そのうちの一人がフリータイムでお話をした千葉の外房から来た女性であり、後に僕を日々悩ます原因となる人<佐々木 友里>であった。

 そして、もう一人の女性は、僕の勤めていた会社の関連会社に勤めている人で

<小田さん>という名前だった。

 

 彼女達に声をかけられたため、僕が好感を持っていた女性には結局声をかけることができなかったが、幸運にも女性から声をかけていただいたので、彼女達と適当な喫茶店でお話をすることとなった。その際に、<友里>からは、僕の心を見透かされたかのように「誰かに声をかけようとしてたのかな?」などと言われたが、そこは失礼のないように適当に胡麻化した。

 

 2人から話を聞いたところ、彼女達は千葉から来ていたこともあり、フリータイムでも彼女達は女性同士意気投合してお話をしていたらしいが、僕が<小田さん>の会社の親会社に勤めてることを<友里>が思い出して、その話を<小田さん>に伝えて、帰りに僕に声を掛けてみようということになったらしかった。


 僕も手ぶらで帰るよりは、2人の女性とお知り合いになれたので、正直なところ感謝していた。

 とりあえず、お互いに「お友達で!」ということで、連絡先である自宅の電話番号(当時はそんなに携帯電話が普及していなかった)を交換し、僕は携帯電話も持っていたので、その番号も合わせて伝えた。

 そして、お互いの年齢(<友里>は僕より1つ年上、<小田さん>は僕より1つ年下)やその他の話ながら、適当に雑談をした後、2人と別れて帰宅したのであった。

 

 ちなみに人事異動となった際、僕は会社の寮を出て実家に戻っていた。それは、研修を行う場所には実家から通えたのと、週末はもともと実家に帰ることが多かったためである。まあ、ぶっちゃけ実家の方が寮で暮らすよりも主に食事の面で楽という理由だったのだが。

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