緊急メンテ
第179話 セキュリティアップデート
転移した先は……リュケリオンのロゼお姉様の部屋、リビングかな?
見回すと、スペースを開けるためか、長椅子やローテーブルが脇に避けられている。
「ミシャ様、ようこそお越しくださいました」
すっと現れたのはシルキー(姉)。
「うん。ロゼお姉様は?」
「フェリア様の部屋にいますので、お呼びしてきます」
そう告げて消える。
じゃ、ルナリア様とシルバリオ様を立たせたままもなんなので……
「あ、ルル、ありがと。お願いしようかと思ってた」
「えへへー」
得意げに長椅子を運ぶルル。ケイさんもディーも気がついて、ずっしりと重いローテーブルを運んでくれる。
「まずはお二人が掛けてください」
私は一人掛けを運んでそう告げる。
隣の部屋だし、ロゼお姉様はすぐ来ると思うし。
「ありがとう」
「感謝いたします」
二人が長椅子に座り、ルルがもう一つある長椅子を運ぼうとしたところで、ロゼお姉様が肩にフェリア様を乗せて現れた。
「ルナリア、よく来てくれたわ。事情は伝わってると思うけど……」
「ええ、カーネリアンのことは聞いたわ……」
そう言って押し黙る二人。
私たちに何か言えることでもないので、長椅子を運ぶ作業に戻ると、フェリア様がロゼお姉様の肩から離れ、私たちの方へと飛んできた。
「ご苦労であったな、ケイ。
「ううん、大丈夫」
もう一つの長椅子を置き、私たち三人が座る。ってケイさんの椅子がと思ったが、ケイさんは首を振り、ロゼお姉様の後ろへと立った。
「ロゼよ、黙っていても仕方あるまい。これからどうするかを白とかげに説明せよ」
「……相変わらずうるさい羽虫ね」
フェリア様、『白とかげ』とかなんてこと言うの! と思ったら、ルナリア様も『羽虫』呼ばわりするしでビクビクする。
と、フェリア様が飛んでいって、ルナリア様の肩にとまる。
「早う会ってやれ。だいぶ我慢しておるようだ」
「ええ、そうね……」
って、仲が良いのかなこの二人。悪口を言い合う仲ってこと?
「それじゃ、説明するわ。ケイ、先にスレーデンまで飛んでくれるかしら? ディオラとマルセルが待機してるから合流して、明日早朝からカーネリアンがいる部屋の手前まで進んでちょうだい」
「わかりました」
ケイさんはそう答えると、一礼して部屋を後にする。
ん? えーっと?
「ミシャ、悪いけど明日もう一度、ケイのところまで転移してもらうわよ」
「あ、ああ、そういうことですか。って、ロゼお姉様が転移使えば良いんじゃ?」
「私が運べるのは一人が限界よ。あなたほど重力魔法に秀でてないもの」
そんな答えが返ってきた。そうなんだ。魔素が純粋に青じゃないからってことなのかな?
「くくくっ、ロゼが負けを認めておるぞ?」
「ホント、珍しいこともあるものね」
と、フェリア様とルナリア様がニヤニヤ。ロゼお姉様はぷいっと横を向いてしまう。
まあ、これは勝ち負けっていうよりは、向き不向きの問題だと思うんだけど。
「わかりました。じゃ、えーっと、ルナリア様とシルバリオ様と転移すれば良いんですよね?」
「ええ、ルルやディアナも来てちょうだい。おかしなことにはならないと思うけど、万一の時はミシャを」
「もっちろん!」
「うむ」
と、頼もしい返事が……
「ワフッ!」
「おお、すまんの、クロスケ。
「ワフワフ」
フェリア様、クロスケと異様に仲が良いんだけどなんで?
まあ、それは良いとして、明日の午前中にはカーネリアン様がいる最下層最奥に行くということで、今日はしっかり休むことになった。
***
翌日は朝食をいただいてから待機モード。うん、待機って結構辛いんだよね。
ロゼお姉様もボーッと待つのは辛いのか、私たちが竜の都に行くまで、どこでどうしてたのかみたいなことを聞かれた。
そういえばとコーマの洞窟?にあるダンジョンのことを話したり。
あそこがダム……は通じなかったので、でっかい溜め池を管理してるダンジョンなのを説明しておく。
ロゼお姉様やフェリア様が知る限り、あの辺りで水害が起きたことなんかはないらしく、多分、それもダンジョンのおかげなんだろうなー、とか。
ちなみに
「あっ!」
私の腕輪が光り、銀貨が一枚転送されてきた。向こうの準備オッケーの合図だ。
「では、我が先に行こう」
フェリア様がそう宣言して、さくっと転移してしまう。
なんというか、暇すぎて飽きてたんだと思う……
「ミシャ、先に行きなさい」
「はーい。じゃ、行きますよー」
今回はケイさんがいない分、少し魔素が少なくて済む。全体の六割ぐらいかな?
まあ、このローブと
《起動》《転移:ケイさん》
***
転移で出てきた場所は結構明るい感じ。
あ、光の精霊だ。これはディオラさんかなと思ったら、その当人の声が掛かる。
「ミシャ、ロゼ様は最後?」
「あ、はい。今どきますね」
転移先に何かあると失敗するので、私が連れてきた人たちも含めて捌ける。
ほどなくして、ロゼお姉様も転移してきた。
「ふう……転移は面倒ね……」
とポツリ。うーん、この辺は個人差なのかな。
どのプログラミング言語が一番みたいな宗教問題になりそうなのでやめとこう。
「さ、行くわよ」
と声を掛けるロゼお姉様なんだけど。
「あれ? ここにいるメンバーで全員なんです?」
ざっと見回して、ロゼお姉様、フェリア様、ルナリア様、シルバリオ様、ケイさん、ディオラさん、マルセルさん。それに、ルル、ディー、私とクロスケ……
「えーっと、神官さんがいない気がするんですけど? ああ、ルナリア様が?」
白竜姫ってぐらいだし、あの輝く白い魔素は
「何を言ってるの。あなたが浄化するのよ?」
「は?」
「ここで隠してもしょうがないでしょ。もうディオラにもマルセルにも話してあるわ。カーネリアンほどの竜を浄化できる見込みがあるのはあなたしかいないのよ……」
えええー……確かに神聖魔法も使えるようになったけどー……
「ルナリア様じゃダメなんです?」
「私は神聖魔法は使えないわよ」
「ええ! そうなの!?」
私の代わりにルルが驚いてくれた。そう思うよね!
「竜として生きているのに神を頼る必要があるのかしら?」
「あ、はい……」
いや、でも、今、カーネリアン様が困ってるじゃん! とは言いづらい。
それに、神聖魔法だからって
うーんうーん……
「ミシャ、大丈夫なのか?」
「ああ、うん。できるよ。私がやると思ってなかっただけだから」
ディーが心配してくれるが、基本的には聖霊にお願いするだけ。
心配があるとしたら、どれくらい魔素を使うかだけど……
「クロスケも手伝ってね?」
「ワフッ!」
よし、頑張りましょ!
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