第153話 レビュー&マージ

「ん、ダウンロード完了かな」


 監視所から管理室へ戻り、ダンジョンコアが持ってる魔法もダウンロード。

 まあ、新しい系統の魔法は無かったけど、水資源管理のダンジョンなら元素魔法ぐらいですよねってことで。転送関係は設置機能っぽいし。


「ねえ、ミシャ。ここにマルリーさんたちが来たときの様子って見れないのかな?」


「あ、そうだね。ちょっと聞いてみましょ」


『ここに四人組か五人組の女性が来たことないかな?』


『回答します。本ダンジョンは管理室及び監視所、貯水該当区域以外の立入情報は保持しておりません』


「あらら。この部屋とさっきの場所と水貯めてあるところぐらいしか、わからないんだって」


「そっか、残念」


 まあ、本来の目的以外の部分に機能を持ってないってことかな。

 しょんぼりしたルルが可愛いので頭を撫でておこう。で、残念エルフは立ち直ったかな?


「ディー、大丈夫?」


「ワフワフ」


 クロスケに頭でグイグイされて、どうやら立ち上がれるレベルには回復した模様。

 高所恐怖症とかって本当に足が竦んで動けなくなるらしいからね……


「だ、大丈夫だ。ふう……。二人はその……怖くないのか?」


「ボクは全然!」


「まあ、私は元いた世界であれくらいの高さの塔に登ったことあるから」


 ルルとディーがそれを聞いて驚いてるけど、私からしたらルシウスの塔とかリュケリオンの魔術士ギルドの方がすごいと思うよ? 構造計算とかない世界なのに……って建てた人?神様?は知ってるか……


「他に聞きたいことはない?」


 ぷるぷると首を振る二人……クロスケも。かわいい。

 まあ、ちょっと良い観光スポットに来れたってことで良かったかな。

 じゃ……


『ログアウト』


***


 彩神様さいしんさまと泉がある部屋に戻り、そこで測位をしておいた。

 たまにこっそり来て、監視所からあの風景を眺めるのも良いかなと。今日みたいな天気の良い日も良いけど大雨の日とか気になるし、早朝に来れば朝靄あさもやとか掛かってそうでそれはそれで。


「これぐらい? あの野菜とかは埋める?」


「ううん、放置でいいと思う」


 ルルがクワとスキっぽい物を担ぎ、ディーには雑貨……使い古した木箱やら皿?とかを持ってもらう。あの連中が使ってただろうし、気持ち悪いので清浄をかけとく。


「あのゴブリンたちはなぜこのクワやらを武器にしなかったのだ?」


「んー……長すぎるとか重すぎるとかじゃない?」


 そう答えるとディーが「なるほど!」みたいな顔をする。いや、適当に答えただけなんだけど……


「ワフン!」


「はいはい、帰りましょ。遅くなると詰所にいたおばさんも心配するし」


「おー!」


 というわけで、サクサクと来た道を戻って、共用ギルド詰所まで帰ってきた。報告は……ルルに任せよう。


「おばちゃん、ただいま! ゴブリン倒してきたよ!」


「ああ、良かった! 心配してたんだよ! ってゴブリン倒してくれたのかい!?」


「うん、四匹いたけど全部やっつけた!」


「あらー!」


 私、もうこのおばちゃんのパワーについて行けない。バッグから飴とか出てきそうだし。


「で、これって盗まれてた農具とかだと思うんだ。あと……」


「こちらの雑貨などもそうかと。綺麗にしてあるが、不要なら捨ててしまってくれ」


 ルルとディーがそれぞれの戦利品?を地面に置いた。

 あとは魔石なんだけど、こういうのって私たちがもらうのが普通なのか、ギルドに収める方が普通なのか……

 オーガロードの時は討伐した私たちがもらったけど、それ以降は依頼主に渡すこともあったし、そもそもベルグの時とかと同じルールなのかな?


 そんなことを考えているうちに、なんか話がまとまってた。

 おばちゃんは依頼にしてでもお金を渡してくれるつもりだったが、ルルは魔石があるからいいよって感じで押し切った模様。一応、魔石はちゃんと確認してもらったらしい。

 ゴブリンの魔石だと大きいのでやっと銀貨一枚なので、今回のは大銅貨三枚サイズ。それが四個で大銅貨十二枚。日本円にして一万円ちょい。うん、十分だと思う。


「ご婦人、あの洞窟の四匹以外にゴブリンはいないだろうか? 我々が倒したと安心されても不安なのだが」


「うーん、どうだろうねえ。まあ、心配せいでもええよ。今までも野菜盗まれるぐらいやったけん、残りがおっても逃げてしまうやろね」


 んーむ、もともとそんなに切羽詰まった感じでも無かったし、そういうことなら大丈夫かな?

 ディーが確認を求める視線を私に送ってくるので頷いておく。


「そうか。では、私たちはこの辺で……」


「あ、待って! ねえ、おばちゃん。白銀の乙女の話って何か知らない?」


 ああ、それは確かに聞きたい! 『白銀の乙女の伝説の村』って何が伝説なの?


「あら! お嬢ちゃんたち、そんなこと知ってるなんて通だねえ!」


 いや、村の入り口の看板?に書いてありましたけど。

 と、そこからおばちゃん怒涛のおしゃべりモードが発動。私たちは鐘一つ近く、その話を聞くはめになった。

 中に案内されて、お茶しながら聞けたから良かったけどさ……


***


「ただいま!」


 どうにか昼の五の鐘がなる前にオウマの街に帰り着いた。おばちゃんの話長かったけど、マルリーさんたち白銀の乙女の話……言い伝えも聞けたし。


「あら、良かった。お夕飯用意しようか迷ってたの!」


「これ、村の人からお土産もらったんだ。女将さんに渡せって」


 と、ルルが売れ残り野菜が詰め込まれた麻袋を置く。結構重いと思うんだけど、ディーが即席で作ってくれたつた紐でうまく背負えたからか、疲れては無さそう。


「あら、さっそく使うわ。できるまで、テーブルで休んでて」


「はーい」


 って、女将さんも結構力持ちですね。ひょいっと持って行ってしまった。

 私たちも荷物を置いてテーブルへ。日帰りできる距離だったけど、割といろいろあってちょっと疲れちゃったかな……


「しかし、あの村に白銀の乙女が訪れたのはなぜだろうな? 聞いていると偶然としか思えないのだが……」


「えー、おばちゃんが言ってた『聖女様にお告げがあった』からじゃないの?」


 私もディーと同意見かなあ。本当に偶然立ち寄ったら洞窟に魔物がいて、それを駆逐しただけっぽい。


「ミシャはどっちだと思う?」


「うーん、どっちもかな。聖女様ってヨーコさんでしょ? なんか『ダンジョンあるみたいだし行ってみよう』みたいな感じで行ったら、魔物がいたから倒した……みたいな?」


 私の中でのヨーコさんのイメージがそう告げている。で、多分、ヨーコさんが行くって言い出したら、みんな「しょうがないなー」って付いて行きそう……


「なるほど。私たちと同じだな」


「そういうこと」


「えー! どういうこと、それ!」


 そういうことだよ、ルル。

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