安定した運用を目指して
第136話 監視体制の見直しを
「おう、呼び出してわりーな!」
「全然!」
いつものハイタッチ。相変わらず皇太子妃様は気楽な感じ。そして、
「ワフゥ〜」
クロスケを撫でまくる。そんなにもふもふ好きかね。わかるけど!
「みなさま、東屋の方へどうぞ」
ここ数日は雨が続いてたりしてたんだけど、今日はいいお天気。
ちなみに、雨の日もサーラさんは稽古をつけに来てくれた。むしろ、
「雨の日にうまく戦えないのは半人前以下だね」
とか言ってた。確かに……
「さて、先に呼んだ用件を話しとくぜ」
エリカと私たちが東屋のテーブルについたところで、すぐに話を切り出してくる。
シェリーさんはそれを聞いているのかいないのか、邪魔にならない感じでお茶を用意してくれている。
「リュケリオンとの街道は先週ぐらいから元通りになってんだが、これからのことを考えて結びつきを深くしておきたいって話をしに行ってくれ」
エリカがそこまで言って、お茶に手を伸ばした。
そしてルルとディーが私を見る。丸投げか、君たち?
「えーっと、どの程度結びつきを深くするつもり?」
「問題はそれだ。ミシャ、卑怯なのは重々承知だが、リュケリオンをどう感じた?」
ぐっ、また答えづらい質問をしてくるなあ。さすが王族というか、エリカこういうことには鋭いよねえ。ちゃんと貴族してるのがすごいよ。
「はあ、まあ正直に話すと今のままだとあまり肩入れするメリットはないかな。でも、その程度のことはエリカだって知ってるでしょ?」
「ふふん、わかってんじゃねーか」
ニヤリと笑うエリカだが、このやりとりにルルとディーが置いてけぼりになっている。
ちょっとややこしいというか、腹黒い話なので二人には無理もないと思う。私だって政治的な話はあまり好きじゃない。でも、好きじゃなくても考えないといけないことだってある。
「私としてはベルグが望んでる落とし所を知りたいんだけど」
「そんな多くは望んでねーよ。まあ、リュケリオンが北部諸国連合、テランヌやヴァヌに乗っ取られるのは避けてーな。そのためにうちの席が欲しいって話だ」
「なるほど。わかるよ、その気持ちは」
リュケリオンが合議制な以上、北部諸国連合の手先に議会の多数派を取られっぱなしは厄介だってことよね。
ロゼお姉様を追い出すぐらいのバカをやるわけだし、スレーデンの遺跡の件だって行政の不手際なんだよね……
「もー! ミシャもエリカも説明して!」
あ、ルルがキレた……
***
「ふむ。その議会の席をベルグでも持ちたいということか」
「簡単に言やそういうこったな」
「それって今はどうなってるの?」
リュケリオンに行ったはいいけど、政治的な興味はまるでなかったので、議席の割合とか全然知らないし。
「全議席が九つあり、テランヌとヴァヌが三つずつ持っています。残りの三つのうち、二つが空席、最後の一つが花の賢者フェリア様です」
「空席が二つ?」
「土の賢者リュケリオン様と森の賢者ロゼ様の席だそうですが、後継者がいないため空席のままということです」
後継者がいないから放置? わけがわからない……っていうか賢者なのに議席一つ分しかないの!?
この合議制にしたのって土の賢者リュケリオン様だよね? 誠実が行き過ぎてダメな人に思えてきたんだけど……
「最低でも両方から一つずつ奪っておきたいね。できれば二つずつ」
「二つずつは無理じゃねーか?」
「いや、取れるときに取っとかないとダメでしょ。スレーデンの件で向こうに瑕疵があるんだし、今がチャンスだよ」
「お前、あたしよりえぐいな……」
エリカのその言葉にルルもディーもシェリーさんまでも頷いている。酷い!
しかし、上手く削れたとしても、
「ベルグに席が用意されたとして誰が行くの? 私は無理だよ?」
「そりゃわかってる。お前を放り込むとルルに恨まれるしな」
それにルルがうんうんと頷いていて、まあ、私としてもホッとする。
必須条件として魔術士でないといけないけど、かつ、貴族としてこの国への利益誘導もできる人物ってなると……
「ナーシャおばさんとか?」
「ナーシャ様に頼みたいところですが、ロッソ様と離れる気はないということでして……」
とシェリーさん。
あの夫婦、見た目よりずっと仲良いよね。年中どつき漫才してる感じだけど。
で、ロッソさんごと行くわけには絶対にいかない。極秘の
「ディオラ様とマルセル様を推薦されました。ディオラ様はナーシャ様のお弟子様だとか。マルセル様もマルリー様の弟さんだと」
なるほど、あの二人ならベルグに抱き込める……って言い方は悪いけど、少なくともベルグにとって悪い方向には転ばないか。
ナーシャさんらしい、気の利いた人選だとは思うけど、二人とも嫌がりそうなんだよなー。
「じゃ、私たちがその話をして説得してこいって感じ?」
「ま、そういうこった。その二人ともどうしても嫌っつーんなら、うちの宮廷魔術士の中堅クラスを出すしかねえ。ただ、そっちに向いてるやつってのがなあ……」
あー、現場とか研究職で優秀な人ってマネージャーやるとポンコツだったりするからね。
あれだ。「政治は人を狂わせる」とかいうやつ……はちょっと違う?
「はー、お前ぐらい出来る奴が欲しいぜ、ホント」
「ダメだからね!」
ルルのブロックが厚い。エリカもそれを打ち抜く気はないみたいだけどね。
それはともかく、まずは議席を空けさせることができるかだよね。
「ちなみにこれって、公式の使節団扱いで行くの?」
「ああ、もちろんだ。ルルがちょうどいいしな」
エリカも結構えぐいと思うんだけどなあ。
国で一番影響力のある伯爵の孫娘だから身分的に不都合はない。しかも、ルシウスの塔を一緒に制覇した仲間、かつ、スレーデンの遺跡の件にも絡んでるわけで。
「私たちだけって話じゃないよね?」
「ゲーティアにいるゼノンを同行させるが、お前らの訪問の表向きは親善使節になってる。ま、街道を守った功労者を送るんだ。ただで返すこともねーだろ?」
「なるほどね。ひとまず行って感触を確かめてってことね。いい感じに動かせそうなら、そのまま転がしちゃっていいの?」
まあ、実務者協議をやって上手くいきそうならそれでって感じかな。それなら堅苦しいこともあんまりないと思うし。
「ああ、そこはお前さんを信用してるぜ。どうだ? やれそうか?」
「まあ、できるだけのことはしてくるよ。あそこにいたテランヌだか、ヴァヌだかのおっさんにはムカついたしね」
あのおっさんだけは許さん。真面目に窓口業務をしてる人たちを軽んじる輩には天罰を下さねばなるまい……
「お、おう、まあ頼むわ。で、そのおっさんってなんの話だ?」
その後、リュケリオンであった話をしたら、エリカが大爆笑して大変でした……
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