第133話 フィーチャーの再確認

「よろしくお願いします」


 ええ娘や……私こんな時期なかった……(n度目


「よろしくね!」


「忙しいところすまない。私からエリカに言って同行してもらうことになった」


「いえいえ! 久しぶりに神樹の様子を見られそうで嬉しいです!」


 ほんま、ええ娘や……


「ミシャ?」


「あ、ううん。じゃ、行きましょ。サーラさん、お願いします」


「くっくっく、では、大地の恵みが秘められし地に向かうとしよう!」


 うん、絶好調ですね。

 せっかく王都に居るんだし、マルリーさんは無理だけど、前回のメンバーでいいよねと。

 サーラさんの分のお給金は私たちで出すことにしました。


「そんな律儀なことしなくても大丈夫だって知ってるんじゃないの?」


「知ってますけど、だからって出さなかったらマルリーさんに怒られますし」


「あはは、それは確かに怖いね」


 そんな軽口を叩きつつ、私たちしか乗ってないオープントップな荷馬車は、これから幹線道路となる道を進んでいく。

 元が荒野だったので障害物などはほとんど無く、行き先の西側には地平線が見えるだけ。

 エリカの話では、まだ外周部の調査が少し進んだ程度。まあ、ご成婚祭りが続いてるしね。

 というわけで、魔物が出る可能性もあるので気を付けてくれと言われている。サンドリザードかブラッドスコーピオンなら楽勝だけどね。


 ………

 ……

 …


「ずーっとまっすぐ西に来てると思うんだけど、何だか不安になってくるねえ」


「ですね。ちょっと見て来ましょうか?」


 そう返すと、サーラさんに睨まれた。解せぬ。

 そしてため息を一つ吐いて、


「いいけど、何するか先に言って?」


「えーっと、空に上がって高いところから見ようかと……」


「ボクも乗せて!」


 うん、ごめん、それは危なくて無理。落としたら洒落にならない。


「ルル、無重力の維持は自分以外は大変だっただろう?」


「あ、そっか。今の無しね」


 ディーはちゃんと覚えてた。偉い。

 そんなやりとりにサーラさんもソフィアさんも呆れた顔をしてしまっている。


「わかったけど、見えたらすぐ降りてくるんだよ?」


「はーい」


 はい、年長者の言いつけは守ります。

 というか理解が早かったのは? ああ、ケイさんが同じようなことしてるや、うん。


《起動》《飛行》


 垂直離陸して一気に高度を上げる。

 今回は指輪に重力魔法と飛行を入れてあるから安全安心。


「んー、気持ちいいなー!」


 馬車の向く方向のまま浮き上がったので西を向いてるはず。

 で、あっさりと遺跡が見えた。今のルートからほんの少し左に向いた方が良さそうだけど、まあもう少し先でいいかな。

 左側には海が見え、右側には……ああ、あれが巨石とか言ってたやつかな。米粒に見えるけど。

 その先に土手がずーっと続いてて、改めてソフィアさんのご先祖はすごいなと思うなど……


「ただいま〜」


「はあ、もう驚き尽くしたから今さらだね」


 酷い! ケイさんだって飛べるんだし、別におかしな話じゃないじゃん!


「ミシャ様、すごすぎます……」


「いやいや、すごいのはソフィアさんのご先祖様だなって改めて思ったよ。このままもう少し進めば、右手に巨石が見えると思うけど、そこからずーっと土手続いてるんだもん」


「ああ、それは間違いないな」


「だよねー」


 ルルもディーも同意見。私が同じ立場でアレをやろうと思うかというと……無理無理。

 ともかく、方向に間違いはないので、このまま進んでもらうことに。

 場所的には、王都と遺跡のちょうど真ん中ぐらい? あと鐘一つ半——一時間半——も進めば見えてくると思う。


「ほい、了解」


「ということは、鐘三つほどでレスタ領まで行けるということか……」


「そうだね。そこからゲーティアまで鐘三つぐらいだから、今のままでもかかる時間は同じかな」


 これが、それなりに舗装というか整地されて、馬車がもう少し速く走れるようになると、その分早く着くことになる。


「この幹線道路に合わせて、レスタ領からゲーティアへの道も拡幅工事をすることにしました」


「いいね!」


 さすがソフィアさん。今までは馬車一台ちょいぐらいの道幅だった。すれ違うにはどっちかが路肩に避ける感じだったので、それを二台が避けずにすれ違える広さにするそうだ。

 その費用は例の巨大な害虫の魔石を売り払って捻出できたとのこと。国庫からお金が無くなるんじゃないのって思ったけど、そんなレベルじゃないよね、国家予算って。


「結局、税金から払われて、それが地方の公共事業に落ちていくって感じかな」


「地方交付税交付金ですね」


「それそれ」


 前世な会話をしてるせいで、ルルとディーが面食らってる。程々にしよう。

 今度エリカに会ったら、買った魔石ってどうしてるのか聞きたいな。多分、リュケリオンに輸出してるんだと思うけど。


***


 巨石が真北に見えたあたりでもう一度空に上がり、遺跡方向へと進路修正した。

 幹線道路はこのまま土手を右手に走り、いい具合のところで北へと曲がることになるんだろう。


「くっ……右目に封印されし白銀の鳳凰が疼く!」


「あー、解放されそうですかー」


 厨二病解釈すると、どうやら遺跡が見えてきたんだと思う。

 土手から歩いて二時間ちょいの距離だったけど、馬車だと楽チンよね。


「ゴーレム増えてる!」


 ルルが荷台で立ち上がって目を凝らしている。多分五キロほど先だよね? よく見えるなあ。というか、身体強化的なものが効いてるのかな。


 程なくしてはっきりと遺跡が見えてくると、その手前にロックゴーレムたちがうろうろしているのを確認できた。二、四、六、八……増えたね。

 さらに近づいても、彼らが私たちを攻撃するようなそぶりはない。

 馬が驚くかなと思ったけど、その前にクロスケが悠々と走っているせいか穏やかなものだ。


「ブラックウルフの時もそうだったけど、クロスケってリーダー格なの?」


「ああ、そうだぞ。森に住む者はエルフも動物も皆、ウィナーウルフを崇めているからな!」


 ディーが我が事のように嬉しそうで何よりです。

 馬車はロックゴーレムたちの間をすり抜けて遺跡に到着する。用事を済ませて今日のうちに自宅に戻る予定なので、手っ取り早く終わらせたいところ。


「クロスケ、お馬さんと待っててくれる?」


「ワフッ!」


 お馬さんには飼葉と水を与えて休憩していてもらおう。クロスケもいるし、繋いでおかなくても大丈夫かな。

 で、クロスケにも干し肉と水を。


 久しぶりのカピューレの遺跡は……

 あれ? なんか片付いてる気がするんだけど?


「ミシャ、ゴーレムが片付けしてる」


 ルルが指差した先にはロックゴーレムが崩れた石柱を抱え、ひと所に運んでいるようだ。しかも三体ぐらいいますね……

 ロゼお姉様が言ってた、掃除するゴーレムってこれ? まあ、シルキーに睨まれたし、使うつもりは……外の作業ならアリ? でも、掃除の基準がわからないなあ。

 あれ? 私、カピューレの遺跡のダンジョンコアから魔法を……ダウンロードし忘れてた……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る