第131話 ウォーターフォール?
「はー、やっぱりお風呂があると疲れが取れるね……」
このお屋敷の素晴らしい点はお風呂があること。
さすがに一人用で、バスタブもなんかヨーロッパで見たことあるような猫足のアレ。体は中で洗って流すやつ。
本当なら調理場でお湯を沸かして入れるとかするんだろうけど、私には魔法があるので楽チン。バスタブいっぱいに水を張って、程よく加熱するだけだ。
ディーもルルも入りたくないとか言い出したけど、いいから入れと無理やり入らせた。ま、二人ともカラスの行水だったけどね。
逆にクロスケはお風呂大好きのようで、しっかり洗ってあげてふわふわのもふもふだ。うん、毎日は辛いから勘弁して……
で、今日からここが自宅な訳で寝泊まりすることになる。それは当然なんだけど……
「ベッドおっきい!」
ぼふんとダイブするルル。そのベッドはキングサイズってやつだと思う、多分。
それに私とルルが、隣のクイーンサイズ?のベッドにはディーとクロスケということになった。
「広いベッドが良かったのなら、新しいの買えば良かったのに」
「それはダメー」
例によって抱き枕にされるんだろうなあと思いつつも、まあいいかと思ってる。
二人とも結婚とかする気ないの? って感じだが、ルルやディーの方が圧倒的に長生きするわけだし、今の間は好きにさせよう……
「この部屋にベッド三つは不自然だしな」
とディー。
まあ、確かにこのベッド二つに合わせて作られたような部屋なので、シングルを三つ入れても違和感はあるけどさ。
「それより井戸どうしよっか?」
「とりあえずそれっぽく直したいけど宛てがないよね。ロッソさんとかに頼めばいいのかな? でも、井戸直すだけに来てもらうのもちょっとなー……」
お茶の後、シルキーの指摘した井戸を見に行ったが「これはダメだね」と三人で納得した。
この世界によくあるレンガを積んで囲われた井戸に、本当は屋根と滑車があるんだけど、完全に風化してボロボロ。
荒野と化してた時間が長すぎて、特にゴミも入ってなかったのが救いだったぐらい?
「私としては、自分たちで直していいと思うのだが……」
ディーがまたクロスケを撫でながら提案。
自分たちでなんとかしたいなーって私も思うけど。
「エルフの里のように樹木を自然の屋根にすることはできる」
「ホント? すごいじゃん!」
「他の部分はミシャやルルにお願いすると思う」
レンガを作るのは石壁で代用できるだろうけど、目地材ってなんなんだっけ? モルタル? 漆喰? ま、やってみればいいや。
「レンガ積みはなんとかなるとして、問題はバケツを引き上げる滑車とかかなあ」
「それなんだが、ミシャは水を汲み上げる魔導具を作れないか?」
「あ、そっか」
鉄……は錆びるから銅がいいんだっけ。銅パイプ作って空気を抜くようなものを作れば行けそうな気がしてきた……
***
翌日。家の中のことはシルキーに任せておけば万事オッケー。
というわけで、私たちは井戸をどうにかしないとなんだけど。
「じゃ、ルルとディーでお願いね」
「任せて!」
「うむ。ミシャのことは頼んだぞ、クロスケ殿」
「ワフッ!」
なぜ頼まれるの……
ルルとディーは通りの向こう側の森で井戸の屋根代わりになる苗木を調達してくるそうだ。
ディー曰く、樹々が密集している中には育ちの悪いのがあるので、それを持ってくるとのこと。確か間伐だっけ? 間引かないと土壌が崩れやすくなるとかあった気がする。
二人を見送って、私はまず崩れた井戸枠のレンガの積み直しかな?
地中部分、穴側面の土がこぼれないためのレンガは問題なさそうだけど、地上に出ている部分は崩れてしまっている。
半ば風化したそれを手に取って……結構重い。まあそうよね。
鑑定して大きさと材質を把握。石壁を同じサイズで作ってみると色味は違うが問題はなさそう。
「レンガ全部作り直した方が綺麗だよね?」
「ワフワフ」
クロスケもそっちに賛成のようなので、地上に見えてるレンガは全部撤去しましょう。
無駄に疲れるのもなんなので、無重力を掛けてぽいぽいぽいっと……っと目地材を鑑定しないと!
「うーん、これと同じ土壁を作って、水で濡らせばいいのかな?」
「ワフ?」
クロスケがいてくれるおかげで、ラバーダッグデバッグっぽいね。ちょっと試してみましょ。
えーっと、
《起動》《石壁》
で、レンガを作って、その上にうっすらと塗るように、
《起動》《土壁》
厚切りトーストにスライスチーズ乗ってるみたい……
で、これに水をかける。
《構築》《元素》《水》
ふむふむ、それっぽい感じになってきた。
上に積んでみよう。
《起動》《石壁》
「おっ! これバッチリじゃない?」
「ワフン!」
クロスケも納得の出来上がり。
よしよし、これで組み上げ直そう。
………
……
…
「できた!」
「ワフッ!」
乾燥をかけようか迷ったけど、ルルとディーがまだ帰ってきてないし、放置して乾燥した方がいいよね。自重が十分あるし、交互に組んでるから簡単にずれたりはしないので、ちょっと休憩かな。
「ミシャ様、冷たいお茶をどうぞ」
「ありがと」
魔法でレンガ積みしてたので汚れてはないけど、気持ちの問題なので清浄をかけてからいただく。
うん、冷たい豆茶美味しい……
「よし、揚水ポンプ作ろ」
お茶を一気に飲み干し、カップをシルキーに返す。
さて、まずはモックアップを作りましょう。色付き魔素膜で四角パイプを作って井戸の底へと伸ばしていく。
……水面に当たったかな。……底に着いたっぽい。
「結構深い……わけでもないのかな」
底まで十五メートル、水面は十三メートルってあたり? 普通の深さなのかな?
積んだレンガの淵に沿うよう、直角に魔素膜パイプを曲げる。水が出るのはこっち。
底は蓋して取水口を横につけた方がいっか。土を吸っちゃうかもだし。
………
……
…
「よし、モックアップ完成」
「ワフー」
魔素パイプを取り出し、それを厚みを持たせた銅に変換。確か銅って柔らかかったよね?
後はこれを……重いので無重力をかけて井戸に入れ、底まで沈めてから無重力解除。
この銅角パイプを固定する何かが必要だけど後でいいか。まあ、レンガに噛ませるように、鉄の金具でも掛けよ。
さて、魔法を試す時間です。
《構築》《空間》《回転》
真空で吸い上げるよりもこっちの方が楽だと気づきました。
銅パイプの内部、垂直部分の空間だけを逆さまにすることで、水が下から上へと落ちていき……
「ワフッ!」
勢い良く吐き出される水を浴びて大喜びのクロスケ。びしょ濡れになる前に止めれば良かった。
「ミシャ様」
シルキーの視線が痛いです……
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