幕間:魔法世界のコーディング規約:8
【元素魔法ライブラリのローレベル実行】
この世界の人たちは『元素』を基本的に『四大元素』である地水火風の方で捉えている。
けど、多分このライブラリを作った人たちは『化学元素』か、もっと究極的な物質構成要素の意味合いで作った、と思ってる。
ディオラさんにアイアンゴーレムの件で怒られた後、私なりにいくつか試してみたことがある。
《構築》《元素》《Fe》
これでも鉄が生成される。おそらく純鉄と呼ばれる炭素含有率が少ないやつ。
そして次に試したのがこれ。
《構築》《元素》《鋼》
成功。鑑定をかけると、炭素含有率が上がっている。とはいえ、どの程度の含有率が鋼と純鉄の違いなのか知らないのでなんとも。
《構築》《元素》《鋳鉄》
成功。鋼よりもさらに炭素含有率は高い。これまた何を基準にしてるのかわからないけど……
さて、ここで試すのが当然、
《構築》《元素》《銀》
成功。あ、ダメなやつだこれ。もちろん『Ag』でも成功する。抗菌グッズによくAg+とか書かれてたから覚えてただけだけど。
《構築》《元素》《金》
成功。はい封印決定! 昔の人はこれ許してたの!?
古代魔法があった時代って貴金属に価値がなくなったような世界だったのかな?
金の元素記号? そんな昔のことは忘れました……
問題はなんで『鉄』を知ってる魔術士にできないのか。同じようにした『土』とか『石』とかはできるそうだ。
そして、ディオラさんも『鉄』を生成することができる。けど、量が少ないらしい。
視覚化を掛けてから鉄を生成してみてもらったけど、指定した体積の百分の一くらい?
ということは……
「魔素の色の差でしょうね」
「ですよねえ……」
どうも青の魔素を持つ私だから、魔素分を満額で生成できるっぽい。
ただ、やってみて分かったのは、鉄よりも銀、銀よりも金の方が魔素を消費してるっぽい。
あくまで仮説だけど、魔素がそのまま陽子・電子・中性子、いやもっとローな素粒子へと変化してるなら、その構成数が多い原子に変換するために、より多くの魔素が必要になって……とか?
もっと化学に詳しければ、この辺きっちりとした推論が立てられたかもしれないんだよね。
とりあえず「人前で金属を生成するのは無し」ということになった。気をつけよ。
あと放射性物質とか、間違って生成しないようにしないと……
【ルルの
元素魔法を使っても
鑑定してみると『
ルルの
ロッソさんがそれを改めて見て、領主様——ルルのお爺ちゃんが持ってるものと同じじゃないかって。
実際に見せたらほとんど同じだったらしい。持つ部分のサイズとかはルルに合わせてあるみたいだけど。
その領主様が持ってる
そっちも同じルシウスの塔で手に入れたってことかな。私たちが一位を奪ったけど、領主様たちも誰かの一位を奪ったわけで、二つ貰えたんだろう。それらをベルグの初代王と領主様で分け合ったってことかな?
うーん、ルルとエリカは本当に縁があるんだねぇ……
「むふー、これはもうじーちゃんを追い越したね!」
「でも、まだダンジョンからお金入った宝箱見つけてないよ?」
「じゃ、探しに行こ!」
あっ、焚き付けてしまった……
【私の
私がマルセルさんから買った
前にルルがマルリーさんの大盾ぐらいあるって言ってたけど、それだと比重がすごいことになりそうな。比重がすごい金属ってあんまり覚えてないけど、鉄の三倍くらい重いのがあったはず。それ覚えてたら分かったのかな……
「重さを変える魔法ねえ」
「それを使って、フェリア様と王都まで飛んできたんですよ」
ナーシャさんにもディオラさんと同じ説明をし、魔素の色制限があることを伝える。
飛行については、重力魔法で重さをゼロにし送風での推進を実演して見せた。
「こんな感じですね」
「
「あはは、後で気づきました。なので、重力魔法を手放さないように指輪を買おうかなって」
ナーシャさんはその答えに一つ大きなため息をつくと、裏手に行って指輪を一つ持ってきてくれる。
「金貨一枚。付与は自分でやるんだよ」
「うっ……ありがとうございます」
高い! と思ったけど、どうやら
金貨一枚を渡してそれを受け取り、さっそく重力魔法のライブラリ部分を付与する。ついでに無重力も登録っと。
サイズ的には中指しかないかな。右手はロゼお姉様から貰ったのがはまってるし、左手の中指にしとこっと。
「ちょっと試してみな」
「あ、はい」
《起動》《無重力》
そっと床を蹴ると、ふわっと体が上方に浮いた。なかなかに気持ちいい。
「へえ、不思議なもんだねえ」
と近寄ってきたナーシャさんが、あっ、ちょ、それは!
「ほれ」
私の体をグルンと回され、そのまま慣性でぐるぐるぐる……
ああうあああ……私、三半規管が……弱いから……うううっ……
「こういうことも起こるんだ。ちゃんと考えておくんだよ」
そう言いつつ、そっと回転を止めてくれる。
「わ、わかり……まし……た……ううっ……」
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