第119話 直帰せずに報告しろって
「
これまでの手順はだいたいこんな感じ。
まず大岩に元素魔法で作った鉄の
次に運び手となるストーンゴーレムを二体作り、ディーの精霊魔法で
後は大岩の重さを重力魔法で無くし、ストーンゴーレムに引っ張ってもらえばいい。
「ふう……」
深呼吸をした後、大岩に魔素を流し込んでいく。
スレーデンの遺跡にあった蓋よりも一回りは大きいかな。厚みもかなりあるし。
五分ほどかけてゆっくりと流し終え、
《起動》《無重力》
これで重さは無くなったはず。
さて、こっちはこのまま維持して、ゴーレムを動かさないと。
《起動》《全送信:操作:前進》
変な引っ掛かりもなかったようで、大岩がすっぽりと崖から抜ける。
抜けた大岩が見た目を裏切る不自然な動きをしてて、まるで発泡スチロール……いや風船みたい。
《起動》《全送信:操作:目的地移動》
見て楽しんでいてもしょうがないので、さっさと仕事を終わらせよう。
二体のストーンゴーレムがふわふわとしている大岩を引っ張り、私が魔素で指定した穴の中へと進んでいく。
「すごい!」
大岩が穴に吸い込まれ、ストーンゴーレムはもう見えなくなった。
そろそろ大丈夫かな?
《起動》《全送信:操作:停止》
あの二体は戻ってこれないのが前提。そのうち土に還る……のかな?
そして、大岩の無重力も解除すると、自重を取り戻した大岩が着地し、地響きを立てつつ転がって行く。
「うわあ……」
あんなのに巻き込まれたらと考えるとゾッとする。
ストーンゴーレムも粉々だろうし、そのうちどころかすぐに土に還っちゃったよね。
「どうやらうまく行ったようだな」
万一に備えて近くにいてくれたディーが穴を覗き込む。
大岩は既に停止していて、削り取られた土砂がさらに上から降り注いだので、これを下から取り除くのはまず無理だと思う。
けど……
「ディー、一応、最後までやっとこ?」
「うむ、そうだな」
《起動》《土壁》
穴の入り口を塞ぐ土壁を作り、ディーの精霊魔法で植物を植えてもらう。
あとはいつものポーションをかけて終了。わっさわっさ草生えるって感じ。
「おー、完全に塞がったね!」
「ワフッ!」
ルルとクロスケが駆け寄って来て塞いだ土壁を眺めている。
ケイさんとその肩に座っているフェリア様も土壁を眺めて満足そうだ。
「うむ、ご苦労であったな」
「貸し一つですからね?」
別にタダでもいいんだけど、こうでも言っておかないと次々と厄介ごとを頼まれそうだし。
だが、フェリア様はそんな言葉は全く聞いてない風で続ける。
「さて、
「ですね。穴が塞がったことを伝えて、その後は王都に戻って説明かな、と」
「フェリア様とケイさんはどうするの?」
「我らはリュケリオンへ戻るぞ。ロゼとディオラがうるさいからの」
そりゃそっか。じゃ、伝言だけ頼んで撤収かな。
まずはディーの部屋に転移して、そこからゲーティアへ行って一泊?
次の日には王都へ戻って、エリカに報告を入れて……やる事ありすぎだよね……
「そいや、ロゼお姉様は一段落したらラシャードに戻るつもりですかね?」
「我やディオラとしてはリュケリオンにいて欲しいところだがな。無理強いもできん……」
「わかりました。連絡は私とディオラさんの間で転送すればできるので、何かあったらいつでも連絡してください」
フェリア様とケイさんが頷き、リュケリオンの方へと飛び去る。
さて、私たちも帰りましょうか。
「ミシャ、大丈夫? 疲れてない?」
「ん、大丈夫。さくっとディーの部屋に戻りましょ。で、ゲーティアに出発だね」
やっぱり、王都近郊にも転移先を設置したいなあ……
***
「ルルお嬢様! そして皆さんもご無事で何よりです!」
エルフの里のディーの部屋に転移し、手早く荷物をまとめ、里長とその息子たちに簡単な別れを告げて出発。
お昼をまわった頃に里を出て、昼の三の鐘が鳴ったぐらいで国境門に着いた。
で、国境門を潜ったところで、確か警備隊長さんだったはずのおじさんに迎えられたというわけ。
「ゼノン先生、ただいま! ウルクっていうこーんなでっかい魔物倒したよ!」
ルルがニッコニコでそんな話をするが、警備隊長さん引き気味だよ。
てか、先生? 前に王都の学園に通ってたとか言ってたから、担任の先生みたいな人だったのかな? それなら、私が昨日感じた校長先生感も納得?
「昨日はすいませんでした。ちょっと急いでたので」
「はは、年寄りにはなかなか衝撃でしたな」
笑って済ませてくれてるけど、ホントごめんなさい……
「それで、戻って来た皆さんを迎えるよう、頼まれた方が来ておりましてな。兵舎の方へ来ていただけますか」
案内されるままについて行く。誰だろ? シェリーさん……はエリカの元を離れないよね。
おっと、そういえば気になってたことを聞いておかないとだった。
「えーっと、王都から増援は来たんでしょうか?」
「ええ、五十名ほどの騎士が来ております。あまり大人数でも問題になりますしな」
ああ、確かにそうか。下手に大軍で街道に入ると、妙な勘ぐりをされるかもしれないよね。
リュケリオンはいいとしても、その隣の国を刺激するかもしれないし。
「増援で来た人たちはどうするの?」
「明日、三十名ほどで中間地点まで向かう予定です。その後はリュケリオン側と連絡を取って、街道の安全が確認できれば、通行を再開でしょうなあ」
ふむふむ。そういうことなら、魔物が出て来た穴を塞いだことは話しておいた方がいいかな?
あと、森の中に関しては、エルフさんたちに任せてあげた方が、お互い刺激しなくていいだろうと思うし。
そんなことを考えていると、いつの間にか兵舎らしき建物に到着していた。
ぱっと見は大きな格納庫みたいな感じだが、扉は開け放たれており、中では騎士さんたちが休憩中なのか雑談をしている。
今日はここまで来るのが仕事だった感じかな。ひょっとしたら、魔物が国境門まで押し寄せて一戦交える可能性もあったんだろうけど、それがなかったせいかゆるい雰囲気だ。
「くっくっく! 待っておったぞ。白銀の盟約にて繋がりし同志たちよ!」
うん、誰だか丸わかりですね……
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