第102話 引き継ぎは引き継がれていく
「神聖魔法については書かれてないの?」
ロゼお姉様が先を急かす。
私は日記部分っぽいところはパラパラと飛ばして行き……この辺かな?
『神聖魔法は
私がお世話になった教会の人たちはこの世界の言葉で「
もちろん、不埒なお願いは通じないと思うけど、私以外の誰か日本人がこれを読んでいると思うので「日本語で」試して欲しい。
あなたが不純な魔素を持つような人でなければ、神聖魔法を使えると思う。とりあえず、魔石を魔晶石にする浄化の魔法あたりで試すのがお勧め』
私が読み上げたそれを聞いて、ロゼお姉様以外の目が点になっていた。
うん、まあ、こんなの今の教会関係者に聞かせられないよね……
「えーっと……」
「試してみなさい。その『にほんご』とやらで。シルキー」
「はい。ミシャ様、これをお使いください」
そう言って手渡されたのはビー玉ぐらいの魔石。ゴブリンあたりのかな?
まあ、そこまで用意されたらやるしかないよね。
『
そう言った瞬間、私の魔素が少しだけ消費され、魔石は淡い輝きを放った後に魔晶石に変化した。
うん、ヨーコさんの言う通り。概ね想定通りの挙動です。
「ロゼ様?」
「ミシャには今さら言っても無駄よ」
ちょっ! やれって言ったじゃん!
まあ、人前でやらない方がいいのは確かだと思うけど……
「えーっと、表立って使ったりはしませんから。私、魔術士ですし」
「ミシャ、あなた魔術士だって最初は隠すつもりだったわよね?」
……
えー、そんな昔のことは忘れました……
「「ミシャだからしょうがない」」
そこ! 魔法の言葉はやめなさい!
***
休憩を終えて、ルルとケイさんは再び手合わせ中。
やっぱりルルの
ディーはまたクロスケと庭のあちこちを走り回っている。多分、精霊ときゃっきゃうふふしてるんだと思うんだけど、私から見ると一人でニヤニヤしてる変人だ……
ヨーコさんの本……いや日記かな。後半はほとんど神聖魔法について、患者の症例とそれに対して行った処置などが書かれていて、正直すごく助かる中身だった。
やっぱり、こっちの世界にも急性アルコール中毒みたいなのはあるらしく、神聖魔法の解毒で対処できたとか、そのあとはちゃんと水を与えて活性化をかけたとかそういう話などなど。
「これって写させてもらって良いです?」
「その本、あなたにあげるわよ。私、読めないし、できれば続きを書いてあげて?」
そう言われ、ページをめくっていくと本の三分の二あたりからは白紙になっている。最初の頃は日記風だったけど、後半はカルテみたいなものだったし、ずっと書いてたわけじゃないのか。
でも、この続きを書いておけば、これから転生とか召喚された人にも役立つかな……
あ、転生だと日本語読めないんだっけ。ソフィアさんは
「わかりました。じゃ、私が続きを書きます」
「ヨーコも喜ぶと思うわ。そうそう、杖はいつぞやにマルリーたちが持ち帰った物だと思うけど、そのローブはどうしたの?」
「え、これですか? これはベルグの大公姫……皇太子妃のエリカにルシウスの塔の件でもらった報酬です。何でも彼女の母親、前王妃の形見だとか」
これよりも良い物を見つけてエリカと皇太子様の子供に譲らないとなんだよね。なかなかプレッシャーがかかる
「はぁ……、かなり
「は?」
思わずそんな返事をしてしまった。
そいや、フェリア様がロゼお姉様の匂いがするとか言ってたの、実は指輪だけじゃなくてローブもだったってこと?
そういえば、魔法陣で飛ばされた先でもローブのこと気にして裏地とか見てたような……ロゼお姉様のローブっぽいけど、なんか違うからってことかな?
ヨーコさんにローブが渡ったのは、多分、そこから随分後のことだろうけど……
「えーっと、ヨーコさんって別に結婚も出産もしなかったんですよね?」
「ええ、ずっと独身だったわよ」
「うーん、無駄に祀られるぐらいならって誰かに譲ったという線はありそうですけど」
このローブの性能をクローゼットの隅に置いとくのは大損だよなーって私なら思うし、ヨーコさんも同じように考えそうではある。
「まあ、あなたが使うなら良いわ」
「一応、エリカに子供ができて大きくなったら、これ返すことになってるんですけど」
「それは建前であって、本音はあなたがベルグにとって重要だから死なないようにってことでしょ。どうしても返すことになるなら、私が今着てるのをあげるから言いなさい」
「はーい」
そういうことだろうなとはわかってるけど、一応ね?
本当にエリカの子供が優秀な魔術士に……可能性は低そうな。でも、エリカのお母さんがこれを着てたってことは、隔世遺伝ってパターンもあり得る。
まあ、それまでに自力でもっと良いローブを探すべきなのかな……
「ちなみにこのローブって、杖みたいに古代魔導具の一種なんですか?」
「半分正解って感じね。生地は古代遺跡から手に入ったものよ。私が今着てるのもね」
「なるほど……」
「新しいのが欲しいの?」
「あ、いえ、ルルに邪魔にならない程度のマントとして着せたいかなーって」
ディーはクラリティさんから貰ったマントがあるけど、ルルだけ何もつけてないんだよね。
身体強化だって魔法だし、消費もすると思うので、回復を早める手段があるなら装備させたい。
「へえ、面白いこと考えるわね」
「そうなんです? 身体強化も魔法ですし、魔素の回復は早い方が」
「そうじゃなくて、普通は鎧から先に考えるんじゃないかしら?」
アッハイ、ソウデスネ……
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