閑話:魔法はなぜ動くのか?

 この世界に来て魔法を使えるようになったのはいいけど、改めてプログラミングと似てるところを考え直してみることにする。


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 まずはハードウェア。


【CPU】

 やっぱり私自身の頭脳になるのかな?

 人の脳のクロック数は30Hz程度らしいけど、計算量としてはスパコン2000台分ぐらいあるって聞いたことがある。

 格闘ゲームで1フレーム(1/60秒)で反応する人とかどういう脳なのか。

「小足見てから昇竜余裕でした」とか一度は言ってみたい台詞よね……


【メインメモリ】

 体全体、加えて、身につけている物など、魔素を支配できる物がメインメモリ?

 通常、メインメモリ上にはコントロール可能な魔素が充満しているが、これを魔法で具現化して使うので、メインメモリの容量以上の魔法は使えない。多分。

 魔晶石っていう追加メモリを増設しておいた方がいいのかも?


【ストレージ】

 私の場合は指輪だったりペンダントだったり短杖ワンドだったりと、魔法の術式を保存できる物。

 ただ術式には限らず、テキストメモだったり動画データだったり、魔素で刻み込めるものなら何でも保持できる模様。

 ちなみに鉱物の方が望ましく、銀、金、宝石と価値があるほど容量もある。世知辛い。


【グラフィックカード】

 現実世界がそのままディスプレイに相当するので、グラフィックカードに相当するものは不明。

 ただ、魔素を自在にコントロールできるのは、概ね見えてる範囲内なので、目か視神経がそうなのかな?


【入力装置】

 キーボードやマウスは不要で、基本は音声入力になる。ただ、魔導具によってはボタンを押すと発動みたいなのもあるので、それも入力装置かもしれない。


【ネットワークカード】

 ネットワークカードは無いけど、魔素を使った無線通信はできる。距離的にはWifiとかBluetoothレベル。

 古代魔導具には信号化した魔素をすごい距離飛ばせるもの(教会の鐘とか)があるので、その原理を知りたい……


 ハードはこんな感じかな? 次にソフトウェア。


【OS】

 体がハードウェアだとしたら、魂とか自我とかがOSなのかな。

 私は転生してハードウェアを乗っ取ってしまった感じでちょっと申し訳ない。今さら返せる物でもないけど……


【アプリケーション】

 アプリケーション=魔法。

 魔素への命令を組み立てて術式として実行できるようにした物。

 自身で構築したものは、以後、付けた名前で発動可能。それが付与された物を持っていれば、構築できない人でも使用可能になる。

 火球の魔法の原理を知らなくても、火球が記された魔術書なんかを持ってれば使えるので、この世界の人はだいたい昔からある魔法しか使えない。

 魔法の実行は基本的に詠唱で行われる。いつも《起動》《火球》とかいう風に発動してる。

 魔導具に付与すれば《判定起動》を使って「握ったら発動」とかも可能になる。けど「普通の魔術士は簡単に魔導具を作れない」そうなので自重中。

 まあ、握ったら火球が出るような魔導具とか普通にヤバいしね……


【ライブラリ】

 ライブラリ=基礎術式。

 基礎術式が書かれた物を持ってないと魔法を使えない。これはロゼお姉様に最初に習ったこと。

 私の場合は指輪とペンダントの両方に元素魔法の基礎術式を持っていて、これを使うことで元素魔法を発動できる。

 ちなみにこの世界の一般的な魔法は、基本的に元素魔法ライブラリを使用した元素魔法しか使われてないっぽい。その他のライブラリがあることは知られてはいるが、使える人がほとんどいない感じ?

 私が手に入れたゴーレムを扱う人型魔法ライブラリは……できるだけ秘密にした方が良さそう。


【標準ライブラリ?】

 ライブラリを読み込まなくても使える魔法がいくつかある。

 魔素に色をつける視覚化、魔法の解析の魔法、ギルドカードの情報を読む魔法、あと身体強化魔法なんかは多分そのくくりに入るかも?

 ちょっと謎ではあるけど、OSが持ってる標準ライブラリだと思えば納得。


【元素魔法ライブラリ】

 元素魔法のライブラリは「地水火風を操る術式」ということになっているんだけど、実は原子核と電子のレベルまで扱えるっぽい。

 魔素コントロールしつつ指定した物質に変換することが元素魔法。


『地』

 魔素を土というか鉱物に変換する。土壁とか石壁とか。

 土壁の組成は接している地面の土質に似る。石壁も同じ。接してない時はどうなるかというと、前回の組成が使われているようだ。


『水』

 魔素を水、H2Oに変換する。

 どうやら定義がどこかにあるらしく『水』なら液体に『氷』なら個体に『水蒸気』なら気体で具現化する。


『火』

 火は燃焼という現象。

 魔素を可燃物と酸素に変換し続けることで、燃焼の連鎖反応を継続してるんだと思う。多分。

 より高温な火を出したい場合は、特別な可燃物が必要なのかな? 化学がダメ過ぎて辛い……


『風』

 空気の流れなので、魔素を指定方向に動かしながら大気(窒素、酸素、その他)に変換すれば発生してくれる。

 ちなみに、よくある「ウインドカッター」的なことはできない。かまいたち現象って肌をちょっと切る程度ですよ? その程度でゴブリンを切り飛ばしたりできませんって……


『その他』

 この世界の人は地水火風が基本でそれ以外は知らない。存在自体を知らない。

 けど、術式に「ドライアイス」と指定すると、魔素は固体の二酸化炭素に変わる。森の館にいるときに試しに「液体窒素」に変換してみたけど、やばすぎて封印した。うん、危険度の高いオーバーテクノロジーは極力封印しよう……

 水、氷、水蒸気と同様、ドライアイスのように定数定義されている物がいくつかあった。ルシウスの塔でアイアンゴーレム相手に使った磁鉄なんかもそう。

 逆に、それくらいの指定ができないと、化学が全然な私がいろんな魔法を使えるはずがない。

 すいへーりーべーぼくのふね……ぐらいしかわからないです……


【火球とは何なのか?】

 氷槍は氷を槍状にしてぶつける。雷撃は相手の頭上に電子を大量に発生させて落雷させる。とまあ、この二つはすんなりと理解できた。

 じゃあ火球とは?

 実際に間近で確認するわけにもいかないので推測でしかないけど、一番近いのは火炎瓶なんだと思う。

 中心の火種が魔素膜で包まれており、その外側は可燃性の高い気体がさらに包まれていると考えると、着弾時に両方の魔素膜が破れることで引火・爆発する……であってそう?


【火球を打つ方向は?】

 火球を放った! 敵に着弾ドーン! って簡単に言うけど、狙わないと当たらない。

 氷槍みたいに初速で直進させる魔法は最初のエイムが重要だけど、火球はその性質上、誘導ミサイルのようなもの。

 避けられても地面にぶつければ、それなりの衝撃波が敵を襲うという利点がある。やっぱり火は怖いものだしね。


【n個の火球を打ちたい問題】

 多数を相手にする場合、こちらも多数の火球を撃ちたくなるかもしれない。

 じゃ、引数を3にとか、ループで3回まわす、とかならないのが厄介。なぜなら、火球にする魔素を指定する必要があるから。

 火球を打つ場合、2mほど先に魔素の塊を作ってから『この魔素を』《起動》《火球》『して敵に向かえ〜』ってやってるんだよね。

 直進だけする火槍って魔法を作るべきなのかな……


【鑑定って?】 

 元素魔法の一つで鑑定対象の組成を教えてくれる。

 金貨や銀貨が本物かどうか確かめたりできるし、多分、知識として持っているものに該当した場合にそれがわかる優れもの。


【清浄って何してるの?】

 元素魔法の一つなんだけど、これが本当に謎……

 体や服についた汚れを落としてくれる魔法なんだけど、手の脂分とかまでゴッソリと綺麗にしてたりしないか心配。

 おそらく鑑定による組成分析をしたのち、そぐわないものがあればそれを取り除いてくれているんだと思うんだけど……


【人型魔法ライブラリ】

 ゴーレムを作り動かすのに必要なライブラリ。

 素体作成には元素魔法ライブラリが前提として必要になっている。

 動作AIに関しては単純に状態遷移の塊だけど、そのほとんどがライブラリ側にあるので、自身で複雑な状態遷移を組む必要はない。それが必要だったら泣いてた……


 ————


 こうしてみると「魔法のある世界です」とは言っても、随分ときっちりしてるよね。

 精霊魔法やダンジョンといった存在も、この世界ではかなりきっちりと系統だっていると思う。

 まあ、ダンジョンに関しては、設置したけど放置ってのが納得いかないけど……

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