幕間:魔法世界のコーディング規約:3

【魔法と魔道具の整理】


 カピューレの遺跡に向かう前に魔法を整理しようと思い立った。

 時間があるうちにやっておかないと「あれってどこにあったっけ?」状態になるし。



《指輪——ロゼお姉様からもらった》

 元素魔法の基本ライブラリと、いくつかの魔法が記されている。

 火球、氷槍、雷撃といった攻撃的な魔法や、土壁、氷壁のような防御にも使える魔法。

 あとは清浄、送風、着火などの生活に使う魔法が詰め込まれているので、これ以上、魔法を詰め込める空きスペースはなし。


《ペンダント——森の館にあったのを拝借》

 同じく元素魔法の基本ライブラリを入れてある。万一どっちかを盗られたりしても、指輪かペンダントのどっちかあれば大丈夫なように。冗長性は大事。

 こっちには地味化、防衛機構、索敵、静音、解析、鑑定、付与消去といったサポートツール的な魔法を持たせてある。

 一度だけ使った睡眠の魔法は、相手が立ち止まっていて、かつ、油断してないと使えないのがわかったので削除。

 睡眠魔法、ソフィアさんの加護みたいに精神に影響を与えるやつじゃなくて、薬で昏倒させてるようなやつっぽいし化学系? 風向きとか考えると危なそうよね……


《短杖——ガテンワンド》

 ナーシャさんにとりあえず魔素容量が大きい杖ということでお勧めされた杖。そのうち買い換えたい気もしてる。

 これには人型魔法の基本ライブラリを入れてある。人型とはゴーレムのことで、ゴーレムの生成から動作AIまで含まれていて占有容量がかなり大きい。

 ルシウスの塔に行く前は、まずゴーレムの体を生成して、その後に動作AIを付与してたけど、これを一つの魔法にまとめた。

 今までは「ゴーレムを作ってスクリプトを渡す」だったのを「スクリプトをリソースとして持ってるゴーレムを作る」感じ?


《腕輪——魔素腕時計》

 ルルの大叔母さんでノティアの魔術士ギルド長であるドワーフ、ナーシャさんにもらった腕輪。

 彩神教の教会の鐘の音は、音だけでなく魔素も飛ばしていて、それを受信することで現在時刻を把握できる仕組み。

 鐘と鐘の間を六十分割してゲージ風に表示してみたけど、こっちの世界には分の概念がないので伝えづらい。

 あと、余りスペースに自作の攻撃魔法である白氷球や磁鉄塵を保存してあるけど、それぞれ使いどころが限られてる気がしなくもない……


《魔素手帳》

 ルルの大叔父さんで領主様の弟であるドワーフ、ロッソさんに作ってもらったミスリル板。

 魔素で書いたメモを保存できる優れもの? 魔法を保持できるなら、ただのメモだって保持できるのではと思って試したらうまくいった。

 魔法がプログラムだとしたら、メモはただのテキストって感じ。

 これにはメモもそうだけど、ダンジョンコアが保存してあった動画データも収納してある。容量大丈夫かなって思ったけど、圧縮率が良いのか気になるほどではないっぽい?


《ギルドカード》

 個人データだけが収められている……と思う。

 前世では指紋認証だったり、光彩認証だったり、静脈認証だったりだけど、この世界……の古代文明では魔素認証だったみたい。

 個人データを読み取る魔法(個人情報取得と勝手に命名)を試してみると、ルシウスの塔の最上階をクリアしたっていうデータも取れた。でもこれ、ホントに使うことあるのかな?



「まあこんなものかな?」


「ミシャって整理するの好きだよね?」


「んー、そうかな? そうかも?」


 まあ、SEとかやってると、できることできないこと把握しておかないと死活問題だったし。


『○○って機能、他所でできてるし、うちもできますよね?』


 急な仕様変更、突然の新機能追加……

 うっ、頭が……

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