The end of magic 壱章 上 不要品
目の前には見たことのある光景が広がる。
「マタキタ…ハヤク……オマエ」
その影は言葉を口にした。おぼつかない口取りで…。
「喋った…!?」
「コッケイ…コッケイ…オマエ…ダレモスクエナイ…ムダナニンゲン……ブザマ…クワレルダケ…ナニモシナイ…ヨワイ…ケッ…ケケケ…コッケイ…ムノウ……オマエハヤクシネ」
バケモノはその
「……っ………!よく喋るっなぁ!」
大智は地面を蹴り走る。持っていた鞄から教科書を取り出した。
そいつは口を大きく開けた。口の手前で足をとめ4
そいつは
「ケッ……ケッケケ…ケケケケケケケケケ…ムダダ」
ソレは
これが本当に夢じゃないのか。これが現実なのか。その応えはいつしかどうでもよくなっていた。
もう一度殴る。
「ケッケッ…ムダ…だっ……」
フラッシュ。
予想道りやつは怯んだ。フラッシュが効いたのだ。
「とったぁっ!」
勝った。そう思った。しかし目の前のバケモノの他に注意するべき物があった。
「ムノウ…」
「…ムノウ」
「……ムノウ…」
一体じゃなかった。
「イマ、ドンナキモチ…?」
「また…嫌だ……」
その瞬間体が
銃声。
「なんだ…?」
銃声のあと化け物は次々と倒れて行く。大智は立ち上がる。
「ナカマ……カ…?」
最後の力を振り絞って喋ったのだろう。しかし大智は気にならない。そもそも気にしたくもなかった。コイツに三回も殺された。
「お前…今、どんな気持ちだ?」
足で頭を抑え付け、持っていた鞄で思いっきり殴る。
鈍い音が響く。
確かめてはいないが死んでいる。そう思った…違う思いたかった。ただその時は助かった事だけを事実として残したかった。
少し安心する。一息つくと背中にコツンと何かがあたる。振り向くとあの女の子が大智にしがみついていた。安心しきった顔で。無理もない。
二歳児には刺激の強い体験になったはずだから。
両親をアレにやられたとしたら彼女には住む場所がない。先ずは警察に行かないと行けない。でもそれは少し気が引けた。
少女の手はまだ震えている。大智は考えた。そして結論が出た。
その子は少しずつ話してくれた。彼女の家は異臭と血が派手に飛び散っていること以外はなにも無かった。死体すら…死体どころか肉片すらなかった。
「綺麗にたいらげたな…」
「ただいま」
久しぶりに帰ってきた気がする。
「大ちゃん!帰りが遅くなるなら連絡くらい…」
母の目線が大智の目元から下がって行く。
「ゆ、誘拐!?」
「違うわい!」
「か、彼女…?大ちゃんがロリ…コン…?」
「それも違う!」
あの件を話す事なんて当然できない。言い訳を考える。するとまたしがみついていた。
「……」
大智は下を見る。
「と、とりあえずあがって?」
母にそう言われると大智は靴を脱いだ。それに続いて少女も少し警戒しながらあがる。
廊下をわたってリビングの扉を開ける。
「おかえりおにぃ…ママー!にぃがロリコンになったぁぁ!!」
「だから違うわ!」
大智は化け物の件を除いて全て話した。
寝る場所も確保できた。何も問題はない。はず…
「ケッ…ケケケ…ケケ…マダ……オワッテナイ…ケケケ…ケケッ…」
二時頃、大智は嫌な予感がしていた。
なかなか眠れない。何故だろう。大智は自分の部屋を出てリビングへ向かう。
ガタッ
雪の部屋からだった。
「まだ起きてるのか?」
ドアの前で話しかける。しかし応答がない。
「入るぞ?」
ドアを開けると。目に飛び込んできたのは無残な母の姿と、なにかに怯える雪だった。
「…!」
後に蹴りを入れる。鈍い音がした。
「ケッ…ケケ…」
しかし何も見えない。
「にい…ちゃ…」
「これはあの子のが呼び寄せたのか。それとも…」
嫌な予感がする。
「ケケケ…ケッケケケケケケ」
どこからか嗤い声が聞こえる。
「クソッ…」
大智は雪の手を引いて家を出た。利口な案とは言えない。さらに被害を出す可能性が出た。しかし違う…大智は雪を突き飛ばすと無防備になる。
「お兄ちゃん!」
鼓動が聞こえない。
雪の叫びが響いた。
「あり…がと…」
上半身が数メートル飛んだ。そこから見た雪は悲しみに溢れた表情をしていた。
大智はできるだけの笑顔を作って見せた。そして、落下した。
「きろ…」
戻ってきたのだろう。
「…きろよ」
「起きてるよっ!」
頭をあげる。恐らく幸輝の顔に直撃した。
「ははっ、ごめん急ぎの用があるから先帰る」
「急ぎなら寝てんなよな…」
大智は急いで校舎を飛び出した。もう大智の中では戦いは始まっていた。
走りながら考えた。何故か、敵は何体いたのか把握できたのは三体、そしてもう一体。
「あれは対策考えないと…」
そうして大智は改札を入り一つ前の電車に乗った。
早めに。早めに。
大智はある場所へ向かった。ひたすら走って。
――――そして…
「ついた…」
大智は息を切らしてとある家の前に立ち止まった。
「ここからだ⋯」
ドアノブをそっとまわす。鍵が開いている。
扉を開け、中へ入ると鼻を
リビングに入ると血が派手に散乱した光景が広がったと同時に激しい吐き気に襲われる。まるで何日も経っているような異臭と不自然に散らばった血。
今にも倒れそうなくらいの目眩がした。グルグルと回る。そして少しずつ視界がぼやける。
少しづつ、少しづつ
そして――
倒れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます