具現旧日
神崎りら
The end of magic 零章 メッセージ
「キミが
「…い……」
「おい……」
その
「おい……ろ」
「…あ……?」
「お、やっと
「ん…あぁ、ごめん」
「でもよぉ、よくあんなに
「うん…いや、
「なんだよそれ」
「そういやお
「え?あ、うん…
「で、なんで?」
「え?」
「コンタクト。
「いや、
「まあどうでも
「ええんかい」
「ナイスツッコミ」
そうこうして
「まだなんだ」
「なにがだよ」
幸輝が振り向く。
「いいよ、速く買いなよ」
そうすると幸輝は切符売り場の画面を数回タップする。
ホームに入ると
「お、ラッキーじゃん」
幸輝はその電車に乗ろうする。
「この電車…違うよ」
幸輝が扉ギリギリで止まる。
「速くいえよ」
「速く
数分経つと
電車を降り、駅から出ると西に
「それじゃあ、僕はこっちだから」
「おう!またな!」
二人はわかれて道を進む。気が付けば辺りは暗く街灯が足下を照らす。
黙って歩く夜道、一人ポツンと小さな人影が見える。
その時何故かその影を放っておけなかった。
「女の子…?」
何か不気味な気配がした。
確かに小さな女の子の影だった。
少し心配になった。
『
そんな言葉が脳裏を何度も駆け巡る。しかし、なにかがおかしい。辺りは家があまりない。虐待なら
「ねぇ、きみ如何したの?名前は?お家はわかる?」
返事がない。まるでこの世の終わりのような顔をしている。
視線を携帯におとす。すると少女が何かに怯えだした。まるで大智の後ろになにかが居るとでも言うように。
「?」
大智は後を振り返る。そこには
街灯の明かりにあたりようやく姿があらわになる。
「……は…?」
バケモノ。何度も脳裏に逃げないとと駆け巡る。しかし逃げる事は愚か足すら動かない。
「くそぉっ!」
それは
瞬きするよりもはやくそいつは目の前まで来た。そして鈍い音と共に激しい痛みが走る。
「ぐぅっ…」
ガリガリとなにかを
「終わった…」
初めての感覚。
「痛い…いたい…イタイ…いた…イ…」
そして…
目が覚める。飛び上がるように顔をあげた。夢だったのか。と少し安心した。すると
「うわっ!」
起きた
「どうした
授業中の先生が黒板を背に大智を見る。
「大丈夫です」
そう返答する。そして授業が再開された。
チャイムがなり、辺りは騒がしくなる。
「お前寝てたろ」
幸輝が後ろを向く。
「え、うん」
「あれは笑ったわ。さて帰るか」
幸輝はそれ以外何も言わなかった。
教室を出ると幸輝が後ろの大智に言った。
「しかしよくあんなに寝れるよな。あのまま寝てたらチャイムも聞こえなかったんじゃないのか?」
「うん…」
大智は少し不思議に思った。
「どうした?」
「いや、なんでも」
そのまま駅まで歩いて行く。
「そういやお前コンタクトにしたんだな」
「うん……ん、ねぇ」
「ん?」
「この話前もしなかった?」
「いや?夢の中とゴッチャになってんじゃね?」
そうなのかもしれない。あれは本当に夢だったのか。それが何故か引っかかる。
「おーい」
「え?」
「大丈夫か?お前今日へんだぞ?」
気が付けば着いていた。
「じゃあまたな」
「うん…」
「……事故に遭うなよ」
「…」
いつもの帰り道。街灯の下に小さな人影がある。
まただ。夢と同じだった。
「もしかして…夢じゃないのか?」
女の子が何かに怯えて居るように小さくうずくまっている。
あの夢が本当ならあれ来る。思い出したくもない。
大智は決意した。
大智はその子の手を取り走りだした。女の子が何度か転けそうになったが無我夢中で走っていた。あれが夢だと祈って。
気が付けば住宅街まで来ていた。後ろを振り返ると息を切らした少女と暗闇が広がる。
前を向いて歩こうとしたとき、右手がふと軽くなった。
「…?」
後ろで嫌な音がする。何かを
おそるおそる振り向くと…
「……ぁ、あぁ…うそ…だ………は……?」
気付けば腕に噛みついていた。
よくわからない何か。このナニカは容赦なく腕を噛む。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
大智はそれを必死に
「いやだ…いやだいやだいやだ…死にたく…ない」
持っていた自分の鞄をそれにぶつけた。何度も。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も繰り返し殴った。
やっと剝がれた。右腕と一緒に。
右腕から血が流れる。
「痛い…」
もはやなにも考えられない考える脳すら持ち合わせて居なかった。その時は。
「また…死んだのか…」
嫌だった…それを認めたくはなかった…。
また死んだ…もうよくわからない。本当に死んだのか。
「……っ…!」
暗闇で目を開けた。暗く何も見えない。
顔をあげる。明るくなる。
「……」
戻ってきたのだろう。腕がある。目の前で女の子が無残に食べられた。それを見ることしか出来なかった。
酷い事をした。
あの子の最後の顔が頭から離れない。
訳も分からず無造作に口に入れられ…泣いていた。
「うっ…」
急な吐き気が大智を襲う。
大智は口元を抑えて走り出した。
「どうした狭霧」
授業をしていた先生が手を止めて振り返った。それに大智は答える事無く教室をとびだした。
トイレには水道の水が流れ落ちる音と大智の嗚咽が響いた。
「先生…俺、やっぱ様子見てきます」
幸輝が
「あ、あぁ…」
幸輝は教室を出た。
「っはぁ…はぁ…っ……」
嫌な臭いがする。
あの奇妙な影…人ではない何か…あれは…。
「大智っ!」
幸輝が息を切らして走ってきた。
「授業は?」
「それよりどうした?寝てたと思えば急に走り出して。何かあったのか?」
言えない。言ってもどうせ信じてもらえない。そんな考えが頭の中を駆け巡る。
「気にしないで…」
大智は幸輝の横を通りすぎた。
「お、おい…」
「ホントにいいから…大丈夫だから…」
大智はそう言うがその顔は語っていた。暗い表情、絶望の上に佇んでいるような顔をしていた。
幸輝の知らない顔…幼馴染みすら押し退けてしまう鋭い目付き。
「…」
そして…
「戻った…。今度は…今度こそは」
「マタキタ」
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