第二章◆戦闘 2
「はい、今日はここまでです。
最近、教会の終わる時間が少しだけ早くなっている。
というのも、裏山のゴブリンが
母さんをはじめ狩人衆が
ある程度巣が大きくなってくるとゴブリンマジシャンという魔術を行使できる種が生まれて結界で巣を
一方、この村の狩人衆は
つまり急激に巣が成長していたとしても、魔術抜きでこの村の狩人衆から見つからない巣であったとしても、異常事態であることに変わりはないのだ。
村長と狩人衆の
ゴブリンが人里に降りてくることは
先輩は感知系のマジックアイテムを教会から
「最近、教会の時間が短くてつまんないなー。外で遊ぶのもダメって言われるし、
ルークが木の棒をブンブン振り回しながら、そんな
「最近、牧場のモココやミルルが
「ローガン君の言う通りよ。今は何が起こってもおかしくないのよ? ゴブリンに襲われたら、すぐ食べられちゃうわよ」
「そうだぜ、あいつら本当に
ローガンと先輩の男の子と女の子がルークを
「シリウスくん、
「あぁ、本当に危ないからララちゃんも気をつけないとね」
「……シリウスなら
ララちゃんと話していると、なぜかグレースさんがジト目でこちらを見てきた。
学校の
……逃げ切れるどころか、毎週倒していたけどさ。
そんな話をしながら林の横道を歩いていると、急に『
なぜこんなに近づくまで感知できなかったんだ!?
「きゃぁっ!?」
ララちゃんの悲鳴が聞こえそちらを見ると、飛来する矢と
瞬時に手に持っていた黒板に気を
「ララちゃん、大丈夫だよ」
「シリウスくん……? ありがとう……」
安心させるように、
そんなララちゃんの頭を軽く
「ひゃうっ」
くすぐったそうに目を細めるララちゃんから視線を外して周囲をザッと
いきなりこれだけの数が
「ラァァッ!!」
周囲を観察していると、不意にルークが手に持った木の棒で
ゴブリンの頭部に
「痛ッ……
ゴブリンの
ゴブリンは何の
……仕方ないな。
二の矢を
四筋の
「「「えっ!?」」」
周囲から
あの鎧を着たゴブリンはゴブリンリーダーだろう。身体能力はゴブリンより
僕の魔術を見てから
可能ならばゴブリンリーダーから
「
ルークに手を貸し後方へ下がろうとしていたローガンに接近するゴブリンの身体に『
「シリウスお前……。すまねぇ、助かった」
ルークは情けなさと
「氷雪よ、我が手に
後ろにゴブリンが来るなと気配を感知し振り向こうとした
僕らの
「くっ、私ではまだ一発では倒せない……」
「
村長の
「ふっ! この程度、造作もないことですわ!」
ドヤ顔のジャンヌさんをよそに、ゴブリンたちは仲間たちがやられようと
僕はすぐさま射線上にいるゴブリンに『
『
僕の背後にはララちゃん、クロエさん、ジャンヌさんが、そして二人を守るようにグレースさんとローガンとルーク、そして先輩たちが前に出て構えている。
まずは『魔力感知』でゴブリンの数が一番多く危険な状態である同学年組の方へ回り込み、ゴブリンの横腹を思いっきり蹴り
そして
付近のゴブリンを
敵との間合いが開いたところで息を
「シリウスあんた、やっぱりとんでもなかったわね……」
「シリウスくん、かっこいい……」
「中級魔術を詠唱破棄で並列展開……? ありえない……」
「もしかして俺より筋肉が……?」
興奮したように一斉に口を開く同級生たち。そしてその横でコソコソと話している先輩たちも、聞こえてますよ。
「あんな子どもがあの魔術の腕って……ありえなくないか?」
「ありえないわよ!!」
「まるで
囲い込んでいたゴブリンたちを
皆の話に
こいつら……死を
自らを守り息絶えたゴブリンを見て、ゴブリンリーダーは満足そうにグギャギャと笑っていた。
おまけに自らの
相手がただのゴブリンであれば魔力を節約して近接
それもゴブリンを盾にされてしまうと威力が
逃げ道は確保できているので逃げるというのも一つの手なのだが、僕ら子どもの
皆を先に
……腹をくくるしかないな。
倒したゴブリンからショートソードを拾い、強く
「僕の魔力も残り少ないので、前へ出ます。クロエさん、ジャンヌさん、まだ魔力が残っていたらサポートをお願いします」
「まだ行ける。任せて」
「分かりましたわ!」
二人は恐怖で小さく
「前へ出るなら、俺にも手伝わせてくれ!」
それを見ていた
「……それなら皆の護衛をお任せしてもいいですか? またどこからか
「……分かった。すまん、
先輩の戦闘力ではゴブリンとの近接戦はあまりに危険だ。
僕は先輩の視線を受けて頷き、一歩前に
「ハァッ!!」
身体に気力を
ゴブリンの持つショートソードは
その流れで横から突っ込んできたリーダーと斬り結ぶが、その
ゴブリンリーダーは苦々しい表情をしている僕を見下し、
なんだあの笑みは……ッ!?
ゴブリンリーダーに意識を集中していたせいで、他のゴブリンが僕の視界から消えていることに気づいていなかった。
僕が知ったことに気づいたのか、ゴブリンリーダーは楽しそうに
「きゃっ!?」
「シリウス……!? ありがとう……!」
後ろから聞こえてくるジャンヌさんとクロエさんの声と共に、ゴブリンの魔力が消失。
魔力が失われ身体を襲う倦怠感を抑え込みつつ着地すると、そこへゴブリンリーダーの剣撃が
「ウオォォッ!!」
気力を漲らせ、軽く
かすり傷だ、問題ない。
あとは、この少ない魔力でゴブリンリーダーをなんとかするだけだ。
「グギャギャッ! グギギギギギィィィ!」
僕がゴブリンの奇襲を台無しにしたことに
気力が込められた叫び声に、ララちゃんの引き
ゴブリンリーダーは気力が枯渇することを
僕も気力を練り上げ、ショートソードに
「うおおぉぉぉ!!」
ゴブリンリーダーの
こちらも気力を振り
ゴブリンリーダーは剣を一振りするごとに、
「グギャヘッ! グギャギャフッ!」
自らの身体が限界に近づきつつあることを感じていると、後ろからクロエさんとジャンヌさんの魔力の高まりを感知。背後へ意識を向けると、小さな声で詠唱が聞こえてきた。
ここぞとばかりに思い切り気力を込め、ゴブリンリーダーに斬り掛かる。
「ハアァァァァァァッ!!」
「グッ!! グギャェ!」
僕の
「──
「──力を象りなさい『
僕の剣撃を受け止めているゴブリンリーダーに、二色の光が見事命中。
「ギャッ!?」
二人の初級魔術は強力な気力を纏っているゴブリンリーダーには
しかしそれは、今までにはなかった確かな隙を生んだ。
「『
その僅かな隙に天から一筋の
すかさず最後の魔力を振り絞り、僕の魔術の中で最も射程が短く殺傷力がある中級魔術『
「シリウスくんっ!!」
僕が横たわると、間髪入れずに
クロエさんとジャンヌさんも魔力枯渇寸前で座り込んでおり、他の皆は安堵の笑顔を浮かべていた。
なんとか付近のゴブリンは殲滅したけれど、いつまた先ほどみたいに急に
そう思って身を起こそうと思った矢先……。
「キャッ!!」
悲鳴をあげたララちゃんの視線の先を見ると、ゴブリンリーダーが
倒しきれていなかったのか!?
剣先を
「ハァッ!!」
クロエさんへ向かい振りかぶるゴブリンリーダーの射線を
冷静に見切る
しかし息をつく間もなく、ゴブリンリーダーが次の投擲のために
早く
しかし、その思いとは裏腹に気力と魔力の枯渇により視界がボヤけて身体を起こすことができない。
強く歯を食いしばり
動け!! 動けよ!! あと少しだけ……!!
■
「
気がついたら、シリウスくんのお母さんのミラさんがわたしたちの
さっきゴブリンリーダーを倒した光はレグルスさんの魔術だったみたいです。
「ミラさん、レグルスさん、わたしたちは大丈夫です! それより、シリウスくんが!!」
シリウスくんはゴブリンリーダーの投げた剣から皆を守ってくれて、そのまま倒れてしまいました。
シリウスくんが死んじゃったらどうしよう……。心配すぎて涙が止まりません。
「ララちゃん、シリウスを心配してくれてありがとう。
「ゴブリンの死体が大量にあるが、これは……ゴブリンリーダーも
ミラさんとレグルスさんは
ミラさんとレグルスさんはシリウスくんがこんなに強いことを知らないみたいです。裏山に行ってたことも秘密にしているみたいだし、シリウスくんは
「えーっと……そのぉ……」
シリウスくんの秘密を守りつつ、この状況を
「お父様!! お母様!!
「「「ファッ!?」」」
突然のジャンヌさんの言葉に、思わず変な声を出してしまいました。
「ちょっ! ちょちょちょっとまってくださいジャンヌさん!! シリウスくんの気持ちを無視して何言ってるんですか!? それにわたしたちの
ジャンヌさんは一体何を言っているんでしょう!? シリウスくんがジャンヌさんと
「ジャンヌ……確かにシリウスくんは格好良かったけど、いきなりそれはないでしょ!」
「ジャンヌ、自重しろ」
そうです、
「ちょ、ちょっとまってくれ……ジャンヌちゃんだったか? そういう話は本人と話し合ってくれ。俺らは口出ししないから。ってそれは置いておいてだな……話の流れからすると、シリウスがゴブリンを倒したということか……?」
「シリウスとジャンヌさん、あとクロエが倒しました……ほとんどシリウスですけどね。ゴブリンリーダーを瀕死まで追い込んだのもシリウスでした。お二人はシリウスの強さを知らなかったんですか?」
あぁぁローガン君……ここまできたらもう隠せません……。
わたしは
「ゴブリンリーダーもシリウスが倒したですって……?」
「ふむ、見る限りほとんど
レグルスさんがすごく
「で、でも
ミラさんはシリウスくんを剣士にしたいみたいです。シリウスくんは剣も魔術もどっちも凄かったので、どちらにもなれるんじゃないでしょうか。
「むぅ……確かに、ゴブリンリーダーに
「大体想像はできるけれど……そうね、急に村の中に湧いてきたこともあるし、まずは皆の安全を確保しましょう」
レグルスさんとミラさんに連れられ、わたしたちは無事に村の集会所まで避難することができました。
他の場所にも急にゴブリンが出てきたみたいでしたが、皆大きな怪我はしていないようで安心しました。
シリウスくん、大丈夫かな……。色々な意味で、心配です……。
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