コンビニ
深夜一時過ぎた頃に俺はコンビニを訪れた。夏休みに入ってからほぼ毎日来ている気がする。入口の前に立つと自動ドアが開く。やる気を感じない店員のいらっしゃいませと一緒にヒヤッとした冷気が頬を撫でた。冷房の効いた店内に入り、はっきりとした目的もなく雑誌コーナーへ向かう。なんとなく雑誌の表紙を見ているとなぜか尊敬している部活の先輩に言われたことを思い出した。最後まで部活を精一杯頑張った人間は受験勉強も部活が終わった後の夏休みに伸びる、俺も部活を引退してから受験勉強を始めたが志望校に合格できた、だから後悔が残らないように今は部活に集中した方がいい。その言葉を信用し部活だけに打ち込む日々だった。しかしいざ部活が終わり勉強に打ち込もうとしたが久しぶりに真面目に聞く授業は何か呪文を唱えられてるように感じ何も頭に入ってこない。
昨日も見た漫画雑誌を手に取る。パラパラとページを捲る。夏休みに入ってからも勉強は進まない。昼くらいに目を覚まし朝食か昼食かわからないものを食べたら机に座る。しかし集中は続かず昼寝をして気がついたら晩御飯を食べる時間になっている。そのあともう一度机に向かうも結局ふらっと外に出て意味もなくコンビニに入る。夏休みも半分を過ぎたが1日の勉強のノルマが達成されたことはまだない。手に取った漫画雑誌を元の位置に戻す。
雑誌コーナーを越え飲み物コーナーへ向かう。特別勉強が好きなわけではないし大学でどうしてもやりたいことがあるわけでもない。それならなぜ勉強しているのだろうか。それなりの進学校にいるせいで大学に行くことが当たり前になってしまっているのだろうか。もしくは親の期待に応えるためだろうか。そんなことを考え出すと勉強に集中できなくなってしまう。たいして飲みたいわけではないがペットボトルに入ったサイダーを手に取る。次にお菓子コーナーへと向かい勉強中につまめる物を手に取る。
レジへ向かうとやる気を感じない店員が対応してくれる。先輩は何をモチベーションにして頑張ったのだろうか。大学ではあれだけ頑張っていた野球をやめたそうだ。勉強が好きだったのだろうか、それとも他にやりたいことがあったのだろうか。店員が商品袋に入れている。その隙に財布から千円札を出しトレーに置いておく。ふと店員の名札が目にはいり、名前の上にトレーニング中と書いてあることに気がついた。見た目は同じくらいに見えるが夜中に働いている所を見ると大学生くらいだろうか。自分も大学に入ったらこんなつまらなそうなバイトをすると思うと更に勉強へのやる気が削がれて行く。お釣りと商品を受け取り外へ出ると生ぬるい風が頬を撫でた。溜め息をしながら自転車に跨がる。結局は色々と言い訳しながら嫌なことから逃げているだけなのだ。まだ社会に出て働く覚悟はない。それなら勉強を頑張るしかないと自分に言い聞かせる。そんな昨日や一昨日と同じ事を思いながら自転車をゆっくりとこぎ出した。
とある日常 かめ @turai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます