第五章 龍と鯉



登場人物・配役表


桐生一馬:

伊達真:


スーツの男






桐生と伊達はセレナを飛び出した遥を追いかけたが途中で見失ってしまう。

しばらく捜していると、黒いスーツの男が現れた。


スーツの男「桐生さんに伊達刑事ですね。

お迎えする準備が整ったところです。

ご案内いたします。」



黒いスーツの男についていくとスターダストに連れていかれた。


伊達「ここは・・スターダストじゃないか。

どういう事だ?」



スーツの男「お入りになれば分かりますよ。」


中に入ると遥を連れた黒いスーツの男達が現れた。


桐生「一輝たちはどうした?」



スーツの男「別室です。縛るくらいはしていますが、無事ですよ。

それよりお嬢さんが持っていたはずのペンダントは?」


手に持っているペンダントを見せる桐生。


桐生「渡せば遥を返すんだな?」


スーツの男「ペンダントをこちらに投げて下さい。」


伊達「遥!すまない!」


桐生がペンダントを投げたと同時に伊達が遥を救出する。

しかし黒いスーツの男が撃った銃弾が遥の腕をかすってしまう。


桐生「伊達さん!無事か?」


伊達「いや、遥が・・クソ!浅いが腕を撃たれた。」


ペンダントは奪われ、遥は右腕を怪我してしまった。


それを見て怒った桐生は力ずくでペンダントを取り返した。

黒いスーツの男達は逃げていった。


桐生「遥・・大丈夫か?」


伊達「出血のわりには傷は浅い。大丈夫だ。心配ないだろう。」


遥「おじさん、助けに来てくれたんだね。

ごめんね。私が勝手なことばかりするから。」


伊達「遥、俺もお前に謝らなきゃいけないことがあるんだ。ちゃんと聞いてくれるか?」


遥「うん。」


伊達「美月・・お前のお母さんなぁ、もう・・死んでいたんだ。

すまない。俺は・・助ける事が出来なかった。ごめん・・ごめんなぁ、遥。」


一輝達を助け出した伊達がフロアに落ちていたバッジを拾う。


伊達「黒いスーツの男の胸についていたバッジだ。俺はこの線から少し探ってみることにする。」



桐生と伊達は遥を連れて賽の河原にやってきた。


伊達「なあ、この子をしばらくかくまって欲しいんだが。」



サイの花屋「おう、このお嬢ちゃんが噂の子か。

分かったよ。でもアンタに頼まれ事するのも妙な気分だな。」


古臭い小部屋に案内された。


サイの花屋「ここを好きに使うといい。

ま、外見はちょいとアレだが。」


桐生「花屋、恩に着る。ありがとう。」


サイの花屋「まあいいって。

ここならヤクザも警察も攻めてはこねえ。

安心していいぜ。」


伊達「桐生、俺は一度署に戻る。

明日は錦山と会うんだ。今日はもう休め。」



次の日、伊達が世良の殺害現場にいると警視庁刑事部捜査第一課長の須藤がやってきた。


須藤「伊達さん、ここは世良の殺害現場です。

四課の伊達さんが何か?」


須藤「10年前のあなたは私にとって目標だった。

的確な捜査、周到な計画、そして事件への執着心。

どれをとっても刑事として一流だった。

それが今、あなたの行動が理解できません。

私はあなたとあなたの協力者を監視しています。

これは忠告ですよ、先輩。」



伊達「須藤、お前に真実は捕まえられやしない。」


伊達はそう言い残し現場を去った。



その日の夜、桐生がセレナに入ると麗奈がいた。


桐生「麗奈、お前なんでここに?

これから錦が来るんだぞ。」



麗「だからよ。

あなた達、殺し合いでもするんじゃないかと思って。」


しばらくすると錦山がやってきた。


錦山「久しぶりだな、兄弟。」

「麗奈、酒を。」

「10年ぶりだ。お前とこうして飲むのも。」

「面会にも行かなくて悪かった。」

「俺も色々忙しくてな。」

「俺は・・どうしても100億を手に入れたい。」

「お前が連れているガキとペンダントを渡せ。」



桐生「その前に答えろ。なぜ美月を殺した?」



錦山「殺す気は無かったんだ。」

「由美の妹を殺すつもりなんてな。」

「俺の部下が殺しちまった・・」

「10年間、俺は由美の行方を追い続けた。」

「由美の妹がセレナで働いていると知り、俺はずっと彼女をマークしてたんだよ。」

「いつかそこに由美が現れるんじゃないかってな。」

「巡り合わせだよなあ。」

「あの娘はヒマワリにいたんだ。」

「俺達が育ったあの孤児院にな。」

「美月はその後アレスを持ち、そして姿を消した。」

「ヒマワリにいた娘も。」

「そして東城会の100億が抜かれる。」

「だがな・・」

由美の指輪を取り出す錦山。

「そうだ。由美の指輪だよ。」

「こいつが現場で見つかったんだ。」

「由美はいる。」

「近くに、必ずな。」

「桐生、これは東城会の戦争だ。」

「お前一人でどうなるもんでもない。」

「悪いようにはしねえ。」

「ペンダントを渡してくれ。」



桐生「あれは遥かにとって唯一残された母親との繋がりだ。

お前らの戦争なんて関係ねえ。」


錦山「変わらねえな・・

だから由美もお前に魅かれたんだろう。

みんなお前の味方をする。昔っからな。」


桐生「お前、俺の事を憎んでいるのか?」


錦山「分からねえ。

だが結局俺はお前を裏切った。

風間の親父もな。

もう後戻りは出来ねえ。」



桐生「まさか・・風間の親っさんを撃ったのは・・」



錦山「ああ。

さすがにあん時ゃ手が震えた。」


錦山を殴り飛ばす桐生。


桐生「なんでだ?

親っさんに世話になった恩はねえのか!」



錦山「まだくたばっちゃねえだろ!

それに今はシンジも一緒だしな。」


盗聴器を桐生に投げつける錦山。



桐生「お前、シンジを盗聴して・・」



錦山「10年前のあの日から俺は誰も信じちゃいない。

俺は俺のやり方で東城会の頂点に立つ。

どうしても美月の娘をよこさねえなら、お前でも容赦はしない。」



桐生「好きにしろ。だが遥は渡さねえ。

お前の道具になんかさせやしねえ。」



錦山「今さらだが、お前とはもう一度一緒にやりたかった。

だが、もう今日限り兄弟じゃねえ。」


錦山はセレナを出ていった。



麗奈「何でこんなことになっちゃったの?」

ねえ・・なんで?」


そこに錦山組の組員達が殴り込んできた。

桐生は30人以上いる組員達を全員倒した。



桐生はセレナを出て賽の河原に向かう。

すると賽の河原で爆発事故が起きていた。

花屋に話を聞く。


サイの花屋「桐生・・すまん・・

奴等、まさかここまで派手にやってくるとはな。」



伊達は「ほんの1時間くらい前だ。

大きな爆発音とともに大勢の男が武器を持って乱入してきて・・

遥を奪われてしまった・・

すまねえ、桐生。」



サイの花屋「奴等ギャングの連中だ。

遥をさらっていきやがった。

「この街の愚連隊だ。」

「ヤクザのやばい仕事なんかを引き受けてる。」

「赤・白・青の3つに分かれてるんだが、まとめて襲ってきやがった。」

「河原のシステムがダウンしちまってる。」

「遥をさらっていったのが何色なのか分からねえんだ。」



「ならシラミつぶしにするしかねえな。」

桐生は遥を捜しに出た。



ギャングのアジトに殴り込み、リーダーの男を問い詰める。

「どこだ?遥はどこだ!」



「俺等は・・金で雇われただけなんです。」

「ラウ・・劉家龍・・」

「蛇華のラウ・カーロンです・・」

「子供は中華街のラウさんの所に・・」



嶋野組の事務所で嶋野とラウ・カーロンが話をしている。

「そうかぁ、ガキを奪ったか!」



ラウが言う。

「ええ。今中華街の本部に監禁してます。」

「これで例のお約束、守っていただけるんですよね?」



嶋野が言う。

「おう。おたくの蛇華には30で文句ないやろ?」



「30?じゃあ嶋野さんは70って事ですか?」



嶋野が言う。

「いや・・ウチは50や。」



「なら残りの20億は?」



そこに五代目・近江連合の寺田がやってくる。

「おお、来たか。」

「なあラウ、紹介するわ。」

「これが五代目・近江連合の寺田ゆう男や。」

「錦山のアホからガキの情報持ってきたんがこの寺田や。」

「残りの20はコイツんところや。」



「そうでしたか。それはそれは・・」



嶋野が言う。

「錦山のガキ、まだまだ極道の怖さ知らんで。」

「歳が20も下のガキに出し抜かれるかっちゅうんじゃ!」



桐生は一度伊達と合流して一緒に横浜に向かう。

「劉家龍か・・蛇華まで絡んでくるとはな。」

「大丈夫だ、桐生。」

「ペンダントはともかく、連中が遥をどうこうする理由はねえはずだ。」



「伊達さん、遥は見たこともねえ母親捜しにたった一人であの街に乗り込んできた。」

「9歳の女の子がだ。」

「ただ母親に会いたい、その一心でな。」

「俺は10年前の事を思い出したんだ。」

「何より大事なものを守りたい一心で自分のしたことを信じてた時の気持ちを。」

「今思えば俺は・・逃げたのかもしれないとも思う。」

「その人間が背負うべき運命を見てられなくて・・」

「それを見届ける勇気がなくて・・」

「俺は奴の人生を無理矢理曲げちまったんだと。」

「だが心のどこかではこうも思うんだ。」

「運命に逆らった自分は正しかったはずだ。」

「大事なもん守るために必死になった人間はどんな壁だって乗り越えられるはずなん


「今思えば俺は・・逃げたのかもしれないとも思う。」

「その人間が背負うべき運命を見てられなくて・・」

「それを見届ける勇気がなくて・・」

「俺は奴の人生を無理矢理曲げちまったんだと。」

「だが心のどこかではこうも思うんだ。」

「運命に逆らった自分は正しかったはずだ。」

「大事なもん守るために必死になった人間はどんな壁だって乗り越えられるはずなんだってな。」

「美月が死んで、遥はあの小さい体で必死に歯を食いしばってる。」

「あいつが運命と闘うなら、俺はあいつの為に命張ってやろうと思うんだ。」



横浜中華街の蛇華のアジトに着いた。

「こいつがあの蛇華のアジト。」

「伊達さんは例の遥の捜査を探ってみてくれないか。」

「悪いが今の伊達さんじゃ足手まといになる。」

「すまない。」



「死ぬなよ、桐生。」

桐生は一人で蛇華のアジトに乗り込んだ。

次々と襲いかかってくる刺客を倒しながら奥の部屋に進んでいくと、そこにラウ・カーロンがいた。

遥は体を縛られ、口にガムテープを貼られている。

「そろそろ来ると思ってたよ、キリュウカズマ。」



「劉家龍・・なんでお前まで。」



ラウが言う。

「嶋野さんに頼まれてね。」

「なかなかでかいビジネスだ。」

「俺はそう言うのに鼻が利くんだよ。」

「お前等はこの娘の本当の価値を分かっちゃいない。」

「嶋野にしてもそうだ。」

「日本の極道ってのは本当に頭が悪い。」

「ペンダントは売りさばいたよ。」

「錦山にね。」

「ドケチな嶋野には売れんよ。」

「俺達にはこの娘さえいれば十分。」

「お喋りはここまでにしよう。」

「俺は力で蛇華をのし上がった男だ。」

「来な!マフィアの怖さを思い知らせてやる!」



桐生は劉家龍を倒し、遥を救出した。

「おじさん!」

「ごめんね・・ごめんね!」



そこに警官を引き連れた須藤がやってきた。

「桐生一馬!」

「誘拐の現行犯として逮捕する!」

桐生は須藤に逮捕され、遥は警察に保護された。



警察署で伊達が須藤に詰め寄る。

「何で誘拐になるんだ?須藤。」

「お前だって見たろ。あの子はあいつに誘拐されたんじゃねえ。」



「何度言われても同じですよ、伊達さん。」

「何があろうと桐生の釈放はありません。」

「伊達さん、だから言ったじゃないですか。」

「手を引けって。」

「では。」

須藤は去っていった。



伊達は遥を連れて桐生が留置されている拘置所にやってきた。

「おじさん!」

「ごめんね、おじさん。」

「こんなことになっちゃって。」

「私、本当はおじさんと一緒にいたかった。」

「だけどこれ以上おじさんに迷惑かけちゃいけないと思って。」



伊達が拘置部屋の鍵を開ける。

「遅くなって悪かったな。」

「こんなことしたらヤバイだろうなぁ。」

「だがもう遅せぇ。」

「逃げるぞ、桐生!」



拘置所から逃げ出し、伊達の車に乗り込む桐生と遥。

「やっちまったか・・」

「ま、どちらにしてもクビだったんだ。」

「遅かれ早かれな。」

「それよりこの事件、思っていたよりも根が深そうだぜ。」

伊達が運転しながらバッジを取り出す。

「これ覚えてるか?」

「遥をスターダストに連れ込んだ連中のバッジだ。」

「花屋によると、こいつは政府の地下組織のものじゃないかってことでな。」

「その線で調べてたら出てきたんだ。」

「内閣府の地下組織MIAってのがな。」

「ミニストリー・インテリジェンス・エージェンシー。」

「内閣が直接指揮を執る部隊だ。」

「政治の裏工作から要人の護衛。」

「責任者は、警察庁出身の代議士で神宮って男だ。」

「こいつが100億や遥とどう絡んでくるかは分からんがな。」

桐生が言う。

「政治家か・・」

「劉家龍が気になることを言っていた。」

「遥には100億以外の価値があると。」



伊達が言う。

「100億以外の?」

「どういうことか分からんが、もう一つとっておきの情報がある。」

「東京湾の死体だが、ありゃ美月じゃない。」

「鑑識で身元が判明したんだ。」

「全くの別人だったよ。」

「はっきりした証拠もある。歯型だ。」



「じゃあお母さんはまだ・・」



桐生が言う。

「そうだ。まだどこかで生きてるってことだ。」

「なあ遥、俺は由美を、お前は美月を捜している。」

「だがどんな危険があっても俺がお前を守る。」

「必ず母さんに会わせてやるからな。」




〜第五章 完〜

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