一人暮らしの自由時間、

@lm121594

連休最終日の明け方、ハイボール

 最近のマイブーム。

 コンビニで買ってきた数百円の小さな瓶のウイスキーと強炭酸で作る、自分で濃さを決められるハイボールを飲みながら、YouTubeを観ること。


 今日は何を観ようかな。


 最近ハマっているアーティストの曲をまずは聴き始め、連続再生のまま何曲か垂れ流したあと、ふとおすすめに目をやると、そのアーティストのカバーを出している男子高校生がいるらしい。

 サムネイルは、制服をきた男子高校生二人が家にいる普遍的なものだ。

 ふと、その動画を開くと予想だにしていなかったクオリティーに酔いも覚める。


 なんなんだ、この子は。


 二人映っているが、奏者は一人。その子はギターをかき鳴らして歌って、もう一人は画角内にはいるものの、ただその演奏を聞き入っている。だが、それがとても良い。

 友達が聴いている環境だからこそ、彼の歌が鳴り響いているのだと思うと知らぬ間に胸が高鳴った。

 デュエットかと思ってがっかりした、などという感想は僅かばかりもなく、ひたすらに耳がその音をひっとらえて離さない。

 男子高校生という一種のブランドにすがっている様子はまるでなく、一人の表現者として、人間として、その曲を魂を込めてかき鳴らしていた。


 私は昔に8年間ピアノを、3年間チューバを、演奏していた時期があった。

 そんな過去に少しでも音楽をかじった端くれだが、彼の演奏や歌声が単純に上手いという評価に収まらないことはすぐにわかった。

 細かい演奏テクニックと歌唱テクニックだけでなく、それを覆うだけの表現力、演出力。


 こんなに夢中になれることが10代で見つけられて、発信できて、多くの人が観ている。 

 そんな彼らが非常に眩しくて、自分の現実に視界が引き戻されると、何ともいえない気持ちになった。


 でも、いいのだ。こうやって心が揺さぶられる瞬間が少しでもここに在ったのだから。


 青年たちにより眩しく創作された空間を、今度はしっかりと味わうべき対象として捉え、ハイボール片手に過去の動画を見漁った。


 -外はすっかり明るくなっていた。

 まだ今日は休みだ。スケジュール帳を念の為に確認する。仕事は明日からだ。

 安堵の息を吐くと、また私は機械が誘う運命の出会いに期待しながら波に揺られるのだった。

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