024 同じ

 〜アメーメー大陸〜


「ヤマト王国……こいつらが噂の…… 」


 白地に赤い模様の描かれた国旗と、ヤマト王国という名前にサンダースは聞き覚えがあった。

 その昔、中央大海に接する港で大暴れしていた伝説の海賊がいる国。しかしそれは迷信だと思っていた。


「師匠、奴らとまともにやりあえば海に沈められると聞いたことがあります。ここは一旦引くべきでは……? 」


 バンズという弟子が提案するが


「いや、俺たちが目指してるのはこの先だ。」


 そう言ってサンダースは応戦を選択する。


 ヤマト王国の船に近づき


「頼む、ロザオーン帝国に行きたいんだ。ここを通してくれ」


「戦えば君たちから怪我人が出ることになる。それは避けたいだろ? 」


 説得しようと試みた。しかしあることに気がつく。




「俺たちの言葉が通じない……? 」


 戦場ではヤマト王国の人間が独自の言語で会話している。もはや世界の共通語となった言葉でさえ通じなかったのだ。


「まいったな…… 」


 そんなやりとりを、メロルは近くの小さい島で眺めていた。


「ふぅん。なかなか面白いことになってんじゃん♪」


 メロルはヤマトとサンダース達の戦いを見守ることに。


「ま、最後はみんな私の餌食だけどね。」




 〜セラドンマー大陸・ニラドン国〜


 セラドンマー大陸の東に位置するこの国にはテツが派遣された。広い草原に転がる大きな岩の上であぐらをかいているテツ。その周りには沢山のロスクルド帝国の兵士達が倒れていた。


「やはりここはワシ1人で他の大陸に戦力を費やすので正解だったかのぅ」


 テツの眉毛が動く。何かの気配を感じ取ったようだ。


「お主、ロスクルド帝国の人間じゃな? 」


 姿も見ずに、テツはその気配の正体を暴いて見せた。

 しかし何やら様子がおかしい。


「なんじゃこいつは… 」


 2メートルは超えてるであろう身長と、鍛え抜かれた肉体。並みの人間なら軽く殴られただけで致命傷を負うだろう。


 その兵士の名前はバーグラー。ハーロン博士によって改造された人間だ。改造される前は強盗やら殺人やら極悪犯罪を繰り返し、国際指名手配されていたそうだ。


「まったく、とんでもないことをやりおるわい」





 〜フメイ大陸〜



「嘘、だろ…… 」


 ハヤトは呆然とした。


 南デネグ共和国に入った一行はそこで恐ろしい光景を目の当たりにする。


 閑散とした住宅街。泣き叫ぶ人々。


 すでに手遅れだった。街は壊滅し、ロスクルド帝国の兵士が人間を襲っている。


 兵士を操っているのはヒトミとメグミだ。ペノー市を襲った時と同じやり方で街を破壊し続けている。


 ヒトミの視線がこちらを向いた。


「メグミ」


 ヒトミがそう言うと、

 メグミが恐ろしい速さでこちらへ向かってくる。


「すぐばらけて応戦するんだ!!」


 トゲゾウの指示を受けクモの子の様に広がる兵士たち。その兵士達をカバーするかのようにトゲゾウがメグミの方へ向かっていった。


「なんだよこいつ、まるで機械みたいな動きするじゃねえか」


 バールの視線の先には、高速で走っているメグミの姿があった。


 周りに散らばったバール、ハヤト、ビュウ達は街を襲っている敵兵の相手をする。


「たすけてー!!」

「いだいよ〜〜!!!」


 住民の酷く、悲しい叫びを聞きながら、次々と敵兵を倒していく。


 フメイ大陸のグループに入った救護係が、逃げ残った人の手当てにまわる。


「ハルカ!そっちは任せたよ!」


「オッケー!まだ2人逃げ残ってるわ!」




 あれ??


 ハルカの見ている世界が急に変わった。




(私、飛んでる………?? )


 住民を誘導していたはずのハルカは、自分の頭と離れ離れになった身体が遠のいていくのが見えた。


「ハルカ?? 」


「おいおい…… 」


 ハルカの首が飛んでいる。

 バールの目の前で仲間の首が飛ばされたのだ。


 恐る恐る視線をずらすと、ヒトミがいつのまにか飛ばされたハルカの頭部を持っている。


 バールはヒトミに立ち向かおうとした。しかし、身体が固まってしまい動かない。


(あぁ、あの時と同じだ。ハヤトに助けられたあのときと。)


 トゲゾウは向こうでメグミの相手をしている。こちらに構ってる余裕なんてないだろう。

 ここは俺がなんとかするしかない。それなのに……


 バールが立ち尽くしていると


「シャキッとしろ!」


 バールの後ろから放たれた矢がヒトミめがけて飛んでいく。

 避けられてしまったがなんとかバールからヒトミを離すことができた。


「ビュウ? 」


 助けたのはビュウだった。


「ボサッとしてねえで、早く戦え!俺があいつの動きを止めるから!」


 ヒトミの足元に矢を撃ち続けるビュウ。しかしまたもや躱されてしまう。


 ヒトミの様子がおかしい。ビュウの反対方向へ歩き出した。


「なんだ…?おいおい、まさか」


 ヒトミは近くにあった大きな岩を持ち上げた。そしてそのままビュウめがけて放り投げた。


「ビュウ!!」


 ヒトミが投げた岩はどんどん加速してビュウに当たってしまう。


「うぁぁっ!」


 ビュウに駆け寄るバールだが、もう遅かった。

 ビュウはうずくまって動けなくなってしまっている。


 ヒトミがこちらへ狙いを定める。


 ヒトミがさらに大きな岩をこちらめがけて投げてくる。当たればバールも負傷するだろう。

 と思ったのだが



 どこかで聞いたことのある声がした。聞き取ることはできなかったが多分仲間の誰かの声だ。


 同じだ。あの時と同じだ。

 ビバ帝国襲撃事件の時、ハヤトに助けられた時と同じ轟音が鳴り響く。


 今度は見えた。ハヤトの刀から飛ばされた斬撃が、まるで吹雪のようなオーラを纏っている。


 その斬撃はヒトミが投げた岩を切り裂き、そのままヒトミの方へ飛んでいく。


 視界が開けた頃、バールが見たのは、真っ二つになったヒトミの身体だった。

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