023 大陸遠征

 〜ピス大陸・ビバ帝国〜


 ピス大陸は三つの国に分かれている。


 バール達が住むビバ帝国、未だに拷問などの文化が残る東ペビア国、豊かな自然が広がり、遊牧民がのんびりと暮らしているテワ国。


 世界的に見るとまだまだ発展途上なこの大陸だが、それでもロスクルド帝国の標的になってしまうのであった。


「お前ら!さっさと俺についてこい!」


 全体の指揮をとるのはクロガネだ。

 彼はテツの息子というだけあってかなりの実力者なのだが、5年前の争いで大きな傷を負ってしまう。もう戦線に復帰する事は難しいと言われていたが、救護係の治療により奇跡的に復活することとなる。


「あちらはクロガネに任せとけば間違いない。私はここら辺ね。」


 ナツノは忍者の子孫だそうだ。先祖代々伝わる忍術で相手の動きを探ることが得意である。今回の遠征でもナツノが裏で情報を集め、それを聞いたクロガネが全体へ指示をだす。というやり方を取るらしい。


 ナツノは地図を広げた。これまでのロスクルド帝国の行動パターンから、次に襲われる危険性が高い地域をリストアップしている。


「これでいくと……ここね。ザルカ市。」


 ザルカ市。ビバ帝国の最北端に位置し、人口は5000人にも満たないこの街が襲撃される危険性が高いとされた。


「クロガネ。あなたの班はザルカ市。ゲラビホの班は念のためペノー市に残って頂戴。」




 〜クベック大陸・ウメ王国〜


 ウメ王国のバハ港に上陸したディープらは、そこで信じられない光景を目にする。


「嘘でしょ……?まだ来てから1時間も経ってないのに…… 」


 モエの視線の先には、ロスクルド帝国の腕章を身につけた兵士達がずらりと並んでいた。


 その中で明らかに他とは違うオーラを放つ人間が2人いた。


「よう、聞いたぜ。俺たちの邪魔をするんだってな。でもお前達がモタモタしてるうちに隣のアーグラパー王国は壊滅。全く、六槍師?聞いて呆れるぜ。俺はアラン。お前達をぶっ潰す。」


「あまり傷口をえぐるな。アラン。こいつらは所詮、名前だけの能無しさ。俺はレイ。俺たちの国から近いから来てやったけど、こいつらじゃ退屈しそうだな。」


「言ってくれるじゃない。どこからの情報か分からないけど、やるしか無さそうね」


 ディープ班、エド班、そして救護係。クベック大陸では一体どんな戦いが繰り広げられるのだろうか。




 〜フメイ大陸・ラスズ国〜


「着いたよバール。ここがラスズ国だ。」


 ハヤトに起こされバールは目を開ける。


「フメイ大陸行き?まだフメイ大陸じゃないってことか? 」


「そうだよ。ここから船に乗っていよいよフメイ大陸に上陸するんだ。」


「へー。じゃまだ寝ててもいいな……ん? 」


 バールは見慣れない顔の少年に声をかけられた。


「だから、お前は対して強くもねえのにのんびり寝てていいのかって聞いてんだよ。」


 ビュウという18歳の少年にきつい言葉をかけられ、バールもついカッとなる。


「はぁ?そういうお前はどうなんだよ? 」


「まあまあ2人とも落ち着いて!」


 ハヤトが間に入ろうとするも、2人は睨み合っている。


「じゃあ勝負しようぜ」


 先に仕掛けたのはビュウだ。


「フメイ大陸行きの船はまだ時間がある。ここからあそこの山まで行って先に帰ってきた方の勝ちだ」


 なめるなよ。とバールは言い返そうとしたがぐっと堪えた。


「あぁいいよ。ただし負けたらどうするんだ? 」


「二度と俺と顔合わせるな。」


 あちゃ〜という顔をするハヤトと微笑ましそうに見守るトゲゾウ。


「いいね。若いって。」


「おいお前、スタートの合図頼む。」


「えっ、わ、わかったよ」


 ハヤトは言われた通りにスタートの合図をした。


「よーい、スタート!」


 いいスタートを切ったバール。じわじわと加速して調子を上げていく。


「ディープとの修行で俺のスピードも上がってんだ。負けねえぞ」


 ビュウもなかなかのスピードだが、バールの方が一枚上手。


(なんだ、大したことねえじゃねえか。)


 余裕と思ったバールはぐんぐんスピードを上げていく



 次の瞬間


「うおぁっっ!」


 バールが転んだ。いや、転ばされたのだ


 バールの足にはパワーが弓矢の形に変化したような者が突き刺さっていた。


「ずるいぞお前!能力使うのアリかよ!」


「無しなんてルール決めてないぜ?にしても、こんな攻撃も交わせないようじゃ戦闘では大した活躍できないね」


 ビュウに挑発されたバールは矢を抜き、また走りだす。


「ほらほら!避けなきゃまた転ぶぜ? 」


 やはり矢はビュウのものだった。ビュウはパワーで弓矢を作り、バールに攻撃していたのだった。


 ゴールまであと少し。バールも意地を見せ差を縮めていくが……


「ゴール!はい、俺の勝ちね。あんなんに引っかかるようじゃお前、死ぬかもな。」


 そう言って笑うビュウにバールは何も言い返せなかった。


「ドンマイドンマイ」


 ハヤトは励ましてくれたが少し煽られているような気がしてしまう程、バールに余裕はなかった。


「さぁ、出航の時間だ」


 トゲゾウの言葉で皆が動きだす。




 〜アメーメー大陸〜


「おいおい、なんだぁ?あの船は」


 サンダース達は、中央大海の真ん中で謎の船に行手を阻まれていた。


「おいバンズ!ヤング!こいつらここを通す気は無いらしい。戦うぞ。」


 バンズとヤングという部下に指示を出し、サンダースは遠くを見つめる。



 そこには、白地に赤の模様で描かれた国旗をはためかせ、こちらの様子を伺っている海賊の姿があった。

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