019 デメリット
「最後の特訓」はいつもの山で行われた。
「いい?私に一度でも攻撃を当てたらあんたの勝ち。あんたが降参するまで私は攻撃し続けるわ。」
(まさかディープさんと戦うなんて……どう戦えば)
その瞬間、バールは弾き飛ばされる。
「は、速い!」
ハヤトが見物に来ていたようだ。
ハヤトでもギリギリ目で追えるか追えないかの速度で攻撃するディープ。
「あんなの躱せるわけないよ…… 」
右、左と続け様に攻撃を続けるバール。
(まずは速さに慣れないと何もできないわ。あんたが慣れるまでこの速度で攻撃し続けるからね)
手も足も出ないバール。どんどん身体が痛み出してくる。
「ディープのやつ、なるべくダメージを与えないようにしてやがるな」
「師匠? 」
サンダースがハヤトの隣で呟く。彼もまた見物に来ていた。
「この特訓の目的は、速さに目と身体を慣らすこと。ダメージを与える必要はない。相手の動きをしっかりと目で捉えることで、自分がどの攻撃をしたらいいかわかるってことだ。」
「そろそろ攻撃したら?あんた、倒れちゃうわよ。」
ディープは少し速度を落とした。
(手は出せてないけど、構えは維持できている。下半身に力を入れている証拠ね)
ディープの見立て通り、速度に慣れてきたバールは手にパワーを込める。
「あれがバールの…… 」
バールの手に込められたパワーは刀のような形のものに変化した。
「ほぅ、ディープのやつ、なかなか難しいことさせるじゃねえか」
ニヤリとするサンダースにハヤトが尋ねる。
「難しい? 」
「ハヤト、お前は本物の刀に冷気にかえたパワーを纏わせて攻撃するだろ?でもバールは違う。パワー自体を刀にしちまうのさ。」
サンダースの解説は続く。
「お前のパワーの使い方のメリットは、とにかく扱いやすい所だ。適当にパワー出しゃぁいい話だからな。ただデメリットもある。それは刀のほうがダメになっちまった時、他の戦い方が無いと何もできねぇって事だ。」
「なるほど…パワー自体を武器にしてしまえば、武器が傷つくこともない!」
「ただ、そいつにもデメリットはある。わかるか?」
「パワーを溜めるのに時間がかかる!」
「正解だ。その隙に攻撃されちゃおしまいよ。だから難しいって事だ。ディープの奴、ヴィンテールの息子だからって高く評価してやがるな。」
いつの間にか暗い水色になった空を、バールの刀が切り裂く。
そのままディープに攻撃するかと思われたが、甘くはなかった。
ディープが軽く動き出したと思った瞬間、バールは地面に叩きつけられてしまった。
「バール!」
ハヤトが駆け寄ったが、バールは地面に倒れたままだった。
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