012 弟子

 バールがハヤトと出会った頃、街の中心にはディープが駆けつけていた。


「酷すぎる……一体どんな力を…… 」


 辺りに兵士の姿はもう無かったが、住民の姿も消えてしまい、かつて活気付いていた街は変わり果てていた。


「ディープ!」


 ディープの姿を見つけたサンダースが彼女のもとに駆け寄る。


「サンダース… 」


「酷すぎるな。一体何が…… 」


 山に1人で出かけた弟子のことを思い浮かべ、サンダースに話しかける。


「実は、この前話に出た私の弟子が今1人でコパタ町の方にいるの…… 」


「ヴィンテールの息子、か。コパタ町ならちょうど俺の一番弟子も向かってる。きっと無事さ。」


 サンダースは六槍師の中で最も多くの弟子を持つ人間だ。彼が誰よりも弟子のことを大切にしているのも納得だ。


「俺の弟子、すげえ強いんだぜ。見た目はまだガキンチョなのに何度も俺に勝負を挑んで来るんだ。まぁ負けねえけどな。」


 そう言ってサンダースは笑う。


 そうは言っても、サンダースの弟子とバールが合流した確証はない。ディープは自分を酷く責めた。


「私がもっと早く一人前にしてあげてたら…… 」


「そんなこと言ったってしょうがないさ、これからみっちりしごいてやればいい。」


 サンダースが慰める。

 そんなサンダースも、自分の弟子のことを心配していないはずがなかった。


 ようやく警察と消防隊が駆けつけるも、あまりにも遅すぎる到着だった。

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