011 ハヤト

「危ない!!」


 立ち尽くすことしかできなかったバールの背後から聞いたことのない声がした。


 その直後に鳴り響く轟音。

 バールが恐る恐る目を開けると、そこには氷漬けになってしまった敵兵士の姿があった。


(何が…起こったんだ? )


 状況が全く理解できないバールをよそに、1人の少年が声をかける。


「大丈夫??怪我してない? 」


 バールの前に突如現れた少年。この少年、実は六槍師のサンダースの弟子で、アカツキ義勇団の一員なのである。


 バールよりも少し小柄で、とても落ち着いた雰囲気の少年。優しい顔をしているが、おそらく先程も使ったのだろう、腰には冷気に覆われた刀を差している。


「あぁ、大丈夫だ」

(俺と同い年くらいか? )


 ふわふわとした白っぽい髪に薄い茶色の瞳をした少年がバールに手を差し伸べている。


 しかしバールにはこの少年が敵なのか、味方なのか分からなかった。


「お前がやったのか…?これ」


「うん。君、殺されそうだったよ」


 こんな状況でも落ち着いている彼を見て、バールは少し不気味さを感じた。


「な、なあなあ、お前、歳いくつだ? 」


「この前14になったばっかりだよ。」


 やはりバールと同い年だった。


「そんなこと聞くってことは、君も14歳??じゃあさ、もしかしてー」


 ハヤトが質問しようとした、その時。



 ??「死ねえええぇ!」


 潜んでいた敵兵が2人に襲い掛かろうとする。


「うわっ!!」


 バールは急いでハヤトと逃げようとするが、



「大丈夫」


 ハヤトがゆったりと動き出したと思ったら辺り一面霜に覆われ、またもや轟音が鳴り響く。

 凍て付く空気に覆われた辺りが晴れていく。

 いつのまにか敵兵士はまた氷漬けになっていた。しかしバールはまた目の前の状況が理解できなかった。

 バールの目にはハヤトの動きは追えなかったのだ。


「にしても敵多いな〜」


 当たり前のように敵兵を倒していくハヤト。バールは聞かずにはいられなかった。


「なぁ、どうやってんだよそれ」


「どうって? 」


「どこから氷とか出してんだよって」


「あぁ、これ自分のパワーを氷に変えてるんだ。ボク雪国で育ったから、氷操るの得意でさ。」


「俺もディープって人のところで修行させてもらってるんだ。さっきも自分で倒すつもりだったのにパワーが出せなかった。」


(やっぱり!この人も兵士を目指してるんだ!でも、ディープってまさか…… )


 ハヤトには聞き覚えのある名前だった。


「自在に操れるようになるまでは1年近くかかると思うよ。ボクは8ヶ月くらいでできたけど。」


 完全な嫌味を言われたが触れなかった。バールには触れる余裕などなかった。


「君も修行してるならまたどこかで会えるかもね!それじゃ、また今度」


 気がつくとハヤトは目の前から消えていた。


「なんだよ…あいつ…… 」


 今のバールには運命的で衝撃的過ぎる出会いだった。

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