009 始まり

「キャァァァァ!」


 悲鳴と共に建物が崩れ落ちる音が鳴り響く。


「お、おいっ人が潰されたぞ!」


 人々の恐怖に震えた声が聞こえて来る。


 家でくつろいでいたディープは、突然の出来事に血相を変える。


「まさか、もう? 」



 崩壊してゆく街の真ん中に、2人の小柄な女が立っていた。


 ヒトミとメグミだ。彼女らはメロルの指示のもと部下を連れてペノー市にやってきていたのだ。


 ヒトミが住宅が密集しているところを狙い、攻撃する。


「ビバ帝国の住人どもよ、死にたくなかったら我々ロスクルド帝国に今すぐ従え」


 部下の兵士達にメグミが指示を出す。


「なるべく広い範囲で攻撃して」



 指示と共に散らばっていく兵士たち。目の前の現実に泣き叫ぶ人々。


 ディープは急いで街に出る準備を始める。


「思ってたより早く来るじゃない!バールは…… 」


 ディープの弟子、バールは騒ぎが起こる前に山の方へ修行に出ていた。


「しまった、もしかしてバールは今1人……? 」



 山に向かう途中、バールは何やらあたりが騒がしくなっていることに気がつく。

 泣き叫ぶ子供、大声で避難指示を出す大人。そしてそれを無視してのんびりと歩く老人。

 ペノー市は大パニックだ。


「なんだなんだ、この騒ぎは」


 逃げ回る人々とすれ違うバール。


「騒ぎの中心は街の方か」


 急いで街の方角へと歩き出す。

 そして現実を目の当たりにしたバールは唖然とした


「なんだよ、これ… 」


 バールの目の前では、ロスクルド帝国の兵士が手当たり次第に人々を殺していた。

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