第16話

「不動君! 不動君!」

博悠さんに起こされた。

「疲れて寝てしまったのか、大丈夫か? 朝食の準備ができているよ。家に食べに行こう」

横たわっていた姿を見て博悠さんが肩に手をまわして支えようとしてくれたが手を制して立ち上がった。

「博悠さん、ちょっと見てください」

僕は口の前で右手人差し指と中指を合わせて少し人差し指を弓状に曲げて息を吹きかけた。

「天清浄 地清浄 内外清浄 六根清浄 祓い給え 清め給え」

すると目の前の木々が大きく揺れ始め、葉っぱで敷き詰められた絨毯ができた。

「この道を歩けば母なる木々の力で身体の穢れが抜けていきます」

博悠さんは目が点になっていたが、我に返ると驚いて叫んだ。

「不動君やったのか! たったの一晩で自然と友達に!」

博悠さんはくしゃくしゃに僕の頭をなでてくれた。

「はい、博悠さん。この山だけでなくすべての木々は『友達』ではなく『母』です。僕は母の元に帰ってきたのです。母から修蓮法師を止める力を授かりました」

 僕も博悠さんの顔を見てほっとした気持ちになった。


「ほう、その力、拝見させていただこう」

絨毯の先に男が立っていた。

「修蓮法師!」

懐から直径三十センチほどの丸い光るものを取り出した。八咫鏡だ。

僕は草薙剣を抜いた。

「それが草薙剣か」

森の木々が揺れ僕は金色のオーラで包まれた。

「ノウマクサンマンダザバラダンカン!」

修蓮法師が叫ぶと同時に赤黒いオーラを発して鏡から轟音とともに火柱が立ち僕らに向かってきた。しかし、綺麗に炎は僕らを避けていった。

「ふん、にわか仕込みの結界か」

よく見ると昨夜囲まれた五芒星が炎を跳ね返しているが、僕らは炎で包囲された。そして高く燃え上がると周りの風景が変わった。

「時空の狭間に移動してしまったようだな」

博悠さんはそう分析した。

時空の狭間はまわりの景色や木々・石仏が同じだが、全て灰色で色彩感が全くないものだった。

「御仏の力すれば神ごときの力は取るに足らぬ! 虫けら同然だ!」

炎の色まで灰色だ。僕らは動けなかった。

「清濁相見!」

勢いよく赤黒い炎が結界を越えて向かってきた。僕は草薙剣で払いのけようとしたが炎にぶつかり吹っ飛ばされた。


 母さん、ごめん……

 せっかく力をもらったのに

 僕、止めれなかった……

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